表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

とんてんからりと、とん、とん、とん

作者: 生田英作



 草木も眠る真夜中の


 時計も眠る午前二時。


 耳をすませてご覧なさい。




 とん……


 てん……


 からり…………


 と……


 とん…………


 とん…………


 とん…………




 ほーら、聞こえて来たでしょう?




 どこからともなく囁くように、


 闇の向こうのどこからか、


 あなたの耳朶を打つ音が。

 



 とん…… 


 てん……


 からり……と……


 とん……


 とん……


 とん……




 あれは、何の音なのでしょう?




 甲高いようで低いよう、


 大きいようで小さいよう、


 近いようで遠いよう、


 それでも、はっきり分かります。


 そう。


 段々、音が早くなり、


 こちらへやって来ることが。




 とん……てん……


 からり、と……


 とん……


 とん……


 とん……



 

 どこから聞こえてくるのでしょう?




 ひとつ、確かめてみましょうか。


 窓を開けて御覧なさい。


 いいえ、誰もおりません。


 ドアを開けて御覧なさい。


 いいえ、誰もおりません。




 あれは、気のせいだったのでしょうか?




 ほっ、と一息ついて暫しの後、


 やっぱり、聞こえて参ります。




 とん……てん……


 からり、と……


 とん、


 とん、


 とん――




 一体どういうことなのでしょう?




 さっき、窓を開けた時、


 さっき、ドアを開けた時、


 確かに誰もいませんでした。




 一体どういうことなのでしょう?




 ならば、それなら、もう一度、


 確かめに行ってみましょうか。


 窓を開けて御覧なさい。


 やっぱり、誰もおりません。


 ドアを開けて御覧なさい。


 やっぱり、誰もおりません。


 それでは、納戸はどうでしょう?


 扉を開けて御覧なさい。


 いいえ、誰もおりません。


 それでは、トイレはどうでしょう?


 廊下に出てみて御覧なさい。


 いいえ、誰もおりません。


 それでは、ベッドは、タンスの影は?


 それでは、ベランダ、物干しは?


 いえいえ、誰もおりません。


 そうです、誰もいないのに、


 誰もそこには、いないのに、




 やっぱり聞こえて参ります。




 とん、てん、からり、と、


 とん、


 とん、


 とん――




 ほーら、徐々に、はっきりと、


 ほーら、段々、こちらへと、


 何かが、やって来る音が。




 ほーら、はっきり聞こえるでしょう?




 とん、てん、からり、と、


 とん、


 とん、


 とん、


 とんてん、からり、と、


 とん、とん、


 とん、


 とんてんからり、と、


 とん、とん、とん、


 とんてんからり、と、とんとんとん――


 ………………


 …………


 ……


 


 ………………………。




 そーっと、振り返って御覧なさい。


 そう。




 あなたの肩の少し上。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ