特攻
どうする?
助けるか、助けないか。
目の前で窮地に陥った奴を見殺しにするのは後味が悪いし、何より見捨てるなんて俺の主義じゃない。
俺は散々自分が見捨てられ、ぞんざいに扱われて来た過去を思い出した。
あんな思いを人にはさせたくない。
不自然なほどに静まり返った戦場には虫の声と風の音、木々のざわめき。
その時だったーーー
ガサガサと奥の茂みから物音がし、突如ニョキッと銃身が突き出た。
派手だ・・・!
全てが真紅に塗られたスナイパーライフルが見えた。あれは何かの映画で見た気がした。そして命を撃ち抜くカタチをしていた。
銃身は何かを捉え確実に狙いを定めている動きをしている。
俺は息を殺しながら、怯える連中、それを狙う敵と、第三者の視点で両方の姿を見ていた。
前の連中は
まだ
気づいていない
俺に・・・今・・何が、出来る?
ーーープツンーーー
「うおおおおおおおおおお!」
俺は絶叫して敵に向かい走り出した。
ーーーーーまるで時間が止まったようだった。
そのスナイパーは突然の出来事に虚を突かれた様で唖然として固まっていた。俺は草むらから飛び出て奇声を上げながら飛び出した!そのまま猛然と敵にタックルをかました。
直撃した!完全に入った!!
そこから無我夢中で馬乗りになった時点で既に敵は気を失っていた。小柄だった。(何かの)柔らかい罪悪感を手のひらに感じた。
顔は鬼の様なマスクで隠れていて見えない。
恐らくは中身も邪悪な形相に違いない。
一先ずはけが人と奴らの安全が先と考え、
俺は連中の方に向かった。
撃たれた連中はまだ状況が理解できていない様だ。まだ隠れたまま動かない。
俺は落ち着きを取り戻し、彼らの方へゆっくり歩いて行った。
「おーい、もう大丈夫だ!敵は片付けたぜー」
「誰だお前は!」
リーダー格と思わしき男が叫んだ。日焼けした短髪の男で、踊れる流行の歌手グループにでもいそうなチャラそうな男だ。
「いや、名乗るほどのモンじゃねーよ、通りすがりだ」
奴らは顔を見合わせてキョトンとしていた。