敵襲
俺は放置してあった武器を固く抱きしめて、震えながら外へ出た。
恐怖?いや、決意から来る震えである事を願う。
慎重に、音を立てずに、臆病かもしれない、手には汗がびっしょりとなっていた。
視界には緑や青のネオンカラーでデジタルな数字がいくつか並んでいて、持っている銃の名前、残弾数や、マップ、生命力、今の生存者の数を知らせてくれた。
既に70人を切っていた。
「もう、そんなに死んだのか?」
愕然とした。まだ、始まって体感で数分だろう。
マップのコマンドを指差すと現在地が表示される。俺はかなり中心よりも離れているらしい。
周囲には何かの規制範囲が迫りつつあることをアラートが示している。
規制範囲に入ると一体どうなるんだ?
恐らくは中心に向かい収束している円形の範囲が狭まることによりプレーヤーが必ず出会う仕組みになっているんだろう。
そうこうしているうちに範囲が肉眼で確認できるくらいに近づいてきた。青いバリヤーのようなものが迫り、中では電流のようなパルスが輝いていた。
「こりゃあ触れたらタダでは済まなそうだな…。」
常識とは違う光景。
日常的な山野の風景に輝く異空間が広がり迫るのを見て息を飲んだ。
その光景は現実より少し美しく思えた。
そうだこれはゲームなんだ。
しかし体験している自分の感覚がリアルである以上、その思考を全て邪魔してくる。
俺はその場から離れることにした。
歩いて数分が経つ頃だった。山に入り密林の中を進んでいると前から賑やかな声が聞こえた。
どうやら、他のプレイヤーだ。
談笑しながら前方を進んでいる、男が2人女が1人。まるで緊張感のないパーティーだ。
俺は見つからないように後ろをゆっくり進んだ。
一応向こうも警戒はしているようだが、この話し声じゃすぐに居場所がわかる。奇襲を仕掛けることもできるが多勢に無勢。(そもそも俺がやっても返り討ちか)しかも奴ら完全装備と見える。この態度余程自信があるか、場慣れしているんだろう。
ズドン!
唐突な火薬の爆発音に鳥たちが翔び立ち、木々が騒めいた。
敵襲だった。やられた!と、俺は思った。
が狙いは俺ではなかった。
そう、前方を進むパーティーだ。
見事に先を進む彼らは散開して物陰に潜んだ。
俺はその様子を息を止めて固まり、凝視していた。一瞬のことだった。
どうやら先を進んでいた女が撃たれているのが見えた。うずくまり物陰に隠れていた。狙撃というほど遠くの音では無かったことから、恐らく近くに敵は潜んでいる。もちろん姿は確認できない。
男二人は小屋と岩に隠れて女を助けたいが動けないでいた。
俺は傍観者となるしか無かった。