終焉者
俺は確かにアスカを守る為に最上階から下に降りてきた。
しかし、紛れも無い、アスカの声は下から聞こえた。
脳の混乱が、眼前の死まで飲み込んだ。
下の階から悲鳴と怒号が銃声に入り混じり、悲惨なオーケストラを奏でている。
インジケータの生き残りの人数が〝3〟に減少した。
俺の目の前に現れた敵は、突然怖気付き、全力で窓から逃げ出したーーーーー。
ギシッ、ギシッ、木製の階段をゆっくりと登りアスカが姿を表す。
全身、血だらけだった。
「!」
「ヤマト、生きていたのね!」
「へへ・・・なんとか・・」
「ボロボロじゃないw」
「お互い様だろ?」
アスカも至る所撃たれていて瀕死に見えた。足も引きずっている。
「敵は?」
「今草原の方へ走って行ったよ」
「そう…」
「一緒に上まで行きましょう」
俺とアスカは今にも倒れそうな体を引きずりながら、教会の塔を登った。
夕日に煌めく神聖な金色の、ススキの海原
その中を男が必死に逃げているのが見えた。
「アンタ、この銃持てる?半分でいいわ」
指差したのは床に転がっていたデカイAWMだ。
そしてアスカは腕を負傷していた
「支えて」
俺はアスカを後ろから抱きかかえる様に銃を支えた。
「ありがと」
いい香りだ。火薬の匂いに混じってアスカの匂いもした。
「そう、もう少し上、違うわよ!そこじゃない!どこ触ってんの!下手くそ!バカ!童貞!スケベ!ちゃんと狙って!もう少し下!」
アスカの柔らかさが布越しに伝わってドキドキした。また間違えて色々触ってしまった。わざとだぞ、いや!そんな場合じゃない・・・。
「いいわ」
「うん、そこよ!止まって!」
一瞬の静寂の後。
アスカが深呼吸した。
抱きしめた体が呼吸の後、ピタリと息を止めた。
照準の細かな震えがなくなる。
ーーーライフルは私、私はライフル、一心同体。前に立ちはだかる敵を撃ち抜かんーーー
心の声が聞こえた気がした。
ズウウウウン!
轟音が周囲に響き渡った。
と、同時に、とてつもない反動で二人はひっくり返った。
「ハハハハハハハ!」
倒れた先でお互いの笑顔が向かい合った。
眼前の表示は、アスカが敵をキルしたことを表示していた。
「そういえばさっきの、下から来るなんて思いもしなかったよ。」
「アンタがバカやったから、その隙に清水から飛び降りたのよwマジで死ぬかと思ったわよ、敵も下から来るなんて思わないでしょ?大怪我だわw」
「マジで!?バカだなー!!!w」
「アンタに言われたく無いわ!お互い様よ!」
アスカの不機嫌な笑顔がとてつもなく可愛く思えた。
敵はこの世界からいなくなった、俺たち二人だけの、仮想世界。
今の一瞬だけ、邪魔者は何処にも存在しない。
手当てをして血を拭った。
夕焼けが眩しい、規制範囲がキラキラと輝き、この世界の終わりを告げていた。
「今日は楽しかったわ」
「俺も」
「良かったらフレンドになりましょう?」
「いいの?うん」
「あと隠してたことが一つあるの」
「え?」
「始まりの輸送機で背中蹴ったの、私w」
「えぇー!」
「ごめんね、じゃあ、またね!」
「え」
アスカはハンドガンを頭に突きつけた
夕焼け越しにアスカは、視界から倒れてフェードアウトした。
眼前の表示は
winner ヤマト!今夜はドン勝ちだ!
と表示されて、ブラックアウトした。
気付けば試合前のギルドに立っていた。




