日常
暗い始まり方をしてしまった。大概のラノベならここで通り魔かトラックが暴走してきて俺を殺して異世界に転生させてくれる。
何故か美女に囲まれて、強くなった俺は異世界の勇者にーーーー。
もう何回も読んだ、そんで悟った。
「あるわけねー」
ということに。
大体にして魔法とか俺TUEEEとか都合が良すぎる、感情移入して見たくても、運が良すぎるにも程があるわと思う。
でも見ちゃうんだよなあ・・・。
人間本当に絶望すると現実から逃避したくなる。あの世界にはそんな俺たちにとって麻薬的な魅力があるのは確かだ。
特にあの剣だけで戦うゲームの長編や、何回も死ぬやつとか面白い。
他にもいろいろ読んだ。
ただ、現実は、異世界に行ったら数日しないうちに死ぬ。俺はもし転生できても衣食住に快適で大好きなコンビニもある現実をもう一度選ぶ。
「夢もへったくれもないが、現代に魔法はない、あるのはお金という魔法だな」
無意識で白目を剥きながら会社に着いた。
いつも通り出勤のカードを通して。
嫌々だが冴えないゴミ達に挨拶。
お互いクズ。
迷惑かけないように頑張ろうな。傷の舐め合い、絶望の共感。エリートや安定した仕事じゃない俺たちには毎日生きているだけで悲壮感が漂う。
仕事中の話は特に語ることもないつまらなさだ。要領の悪い同僚や我儘な新人、超偉そうなバイト。揃いも揃って生きる価値がない。そう俺も含めて。
昼休憩には俺の大好きな78コンビニで買った惣菜パン、ここのコンビニは量が少ないけど味はいい。
最近の日本の衰退ぶりは食品の量を減らしたくせに値段はそのままという小狡いところからも顕著に感じる。
財布にはポイントカードが札より多い。
ここまでいろいろ書いてて俺がトラックで誰かを轢き殺したく(転生)なってきたな。。。
普段のストレスを発散したい。
俺の精神が異常事態だ。
くだらない事を考えながらお魚とタルタルソースの相性がいいパンを口に詰め込んだ。
なんの魚かは知らない。きっと自由に水の中を泳いでたのに、俺に食われるなんてついてないなお前。
もぐもぐ。うまい。
午後の仕事もいつ終わるかわからない恐怖が俺を襲っていた。残業が毎日どうなるかわからない。残業代はほんの少しだけ出るだけマシ、そのくらいなら帰りたい。
だいたい朝から夜10時ごろまで働いて終わり。もっと遅くなれば拘束時間的にも法律的にも最悪だ。
俺は苦悩している。
このクソみたいな繰り返しの人生はもう充分だ。
人生の苦悩を感じたいなら、人間って大昔からずーっと悩んでるから文学でもいい。悩むだけじゃなんの解決にもならない。
知ってるさ。
今の現状から脱したいなら勉強をするのが近道だ、資格でも教養でも、なんでもいい。自分が高まる。
そう
個人的には資格はオススメだ。
俺みたいな奴隷にならなくて済む。
なんでやらなかったんだろう。
帰りの電車は行きよりも多少は空いている、1日の中で一番落ち着くが、座席には座れない。
朝ほど殺伐としていない、帰ったら何時かわからないからもう既に手に握った缶チューハイはストロング。
あれ、、、酔いが早いな。。。
「あー転生してーなー」