籠城
夕やけが綺麗だね。そんな下らない日常を共有する彼女が欲しかった。価値観が似ていて、庶民的で、お互い控えめで。
その後は夕食を一緒にしていつか結婚は教会でしたいね、とか語り合いたかった。
今、教会にいることだけは叶った。
そして視線の先にエゲツないライフルを構えている彼女が見えた。
外は美しい夕焼けになっていた。
時間が経過するのが、この世界では早い。
現実でも、俺にとっては早いけど。
「ダメね。草原の方は全く人影はないわ、やはり考えられるのは建物内部。街の方みたい。」
アスカのスコープはかなり倍率が高い様だ。
「ということは、上から狙えないって事?」
「ま、そうね、接近戦になるから、ボルトアクションのライフルは使えない。使えなければ只のデカい筒ね。コレ。重いし。置いていくわ。」
アスカは元の銃(kar98k )を担ぎ直した。
「アンタ、その背中のUMP、使いなさい。私はM4使うわ」
「使った事ないですけど・・・」
ひとときの沈黙が流れた
「初心者って・・・アンタ何ゲーム目な訳?」
「本当に初めて、まだ銃を撃った事も無いですけど・・・」
「はぁー!?マジで言ってるの???初心者なのは知ってたけど、本当に未経験だとは思わなかった!頭痛くなってきたわ、、、。(クソでか溜息)まあ良いわ、、、、構えて照準が眼前に出ると思うから、迷わず引き金を引きなさい。難しくは無いわ。それとも私にしたみたいにパンチで戦う?」
「(そんなに言わなくても…)分かった、やってみる」
「多少距離が離れていたら、M416に切り替えなさい」
「了解」
視界の中に表示されているのはMAPと生き残りの数。方角、そして銃を構えると緑色の小さい十字型の照準が現れた。弾の残弾数まである。
「コレで撃てるのか・・・?」
引き金に指をかけた。
カチッ
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
「ウワアアアアアアアア」
「何やってんの!!!!」
俺はそこら中に銃を暴発させてしまった。
「最悪、、、。、、、怪我はない?」
アスカの顔は心配しながらも深刻な表情を浮かべていた。
「誤射というのよ、初心者はよくやるわ。それよりーーーー見て、MAPに足跡の表示が出ているでしょう?」
「聞こえる?足音。今ので完全に位置がバレたの」
アスカは小さい声で耳元で囁いた。
俺は始めて撃って驚いたのと失敗した事で声が出なかった。
申し訳ない・・・。
残り、5人
周囲には俺たちをとり囲むようにして足跡のアラートが表示されていた。