経験
This is my rifle.this is my soul.
My rifle, without me, is useless. Without my rifle, I am useless. I must fire my rifle true. I must shoot straighter than my enemy who is trying to kill me. I must shoot him before he shoots me. I will …
何か呪文のようなものを呟いた後、銃を降ろしてアスカが笑顔を見せてうなづいた。
「…やった…!アスカ!凄いよ!アスカ!!!!」
「何よw!照れるじゃない!犬みたいに喜んで!でも、まだよ、まだ〝終わって〟いない。」
周囲のMAP表示は規制区域拡大に伴ってかなり減少している。つまり、安全な地域が小さくなっている。
「この小さな円の中で私たちは派手にやりすぎたわ、数分しないうちに生き残った敵がくる」
「えっ!?」
「早く隠れましょう、あの教会にね。今度は私たちがスナイパーよ。」
二人は敵がいた教会までひた走った。
ハァッ、ハァッ、ハァッ
このゲームは息遣いまでリアルだ。
持っている銃の重みまでリアルに再現されていて、走るのがしんどかった。
軍隊とかはこれを背負って戦うのか、大変だ。
教会の中は荒れ果てており人気がない、このゲームは廃墟のような島を舞台にしているようだ。
その石造りの教会は見るものをゲームの中とはいえ圧倒する荘厳さを湛えていた。
その教会の塔に向かい朽ちた階段を、踏み外さぬように登っていった。
「見つけたわ!」
そこには頭を撃ち抜かれてもの言わなくなった死体が転がっていた。敢えて細かくは見なかった。
ゲームとは云え、気がすすまない。
「アスカ、そう言えばさっきは何で敵があそこにいるってわかったの?」
「勘よ!」
アスカのドヤ顔。
「へっ?」
俺はマヌケ顔。
「スモークの切れ目から少し見えたわ!向こうはスモーク全体を見なきゃいけないでしょ?私は教会の窓だけを見てればいいの」
「えっ!?」
彼女は音で方角を見定め、射撃位置の目星をつけていた。そしてそれは凄い精度だった。
それを〝勘〟とするなら、彼女に対して失礼に値するだろう。
「多分何秒か遅ければ逆に撃たれていたわ!」
教会の見通しの良さは逆にこちらからも見える、こちらが見えなければ反対に有利にすることもできる。
彼女はそのためにリュックにスモーク手榴弾を沢山詰め込んでいた。
そう、〝勘〟なんかじゃない。
確かな〝経験〟の為せる技だ。
「それに、絶対に煙が消えたら撃つからあそこから動かないと思ったし、こっちが2人居るって向こうは気づいてないでしょ。総合的に見て私の方が有利だったの」
「そんなことよりーーーー見てこれ!」
アスカが手にしているのは、とてつもなく大きなスナイパーライフルだった。
「これが、あの・・・?」
まるで鉄の塊を切り抜いた様な無骨なフォルム。
それは異様な鈍い輝きを放っていた。