出会い
ブーーーーーーーーーーーーーー。
あぁ。これを逃せば終電が行ってしまう、、、。そう思いながら俺は無我夢中でホームへ続く階段を上っていく。しかしホームにたどり着いた俺が見たのは発車しかけた電車でも、閉まりかけたドアでもない。出発しそうな電車を乗るわけでもなくただ眺めているだけの一人の女性だった。ふと俺は我に返った。そうだ電車に乗らなくては。しかし視線を電車に戻すと電車はもう夜の暗闇へと消えていた。気づけば俺はその女に怒鳴っていた。
「お前一体何がしたかったんだ!終電に乗らなかったことに何か理由はあるのか。俺まで終電を逃したじゃないか。」
そんな俺をその女はきょとんとした顔で見ている。無理もない。今思えばこの時の俺はどうかしていたと思う。自分で言うのもなんだが俺はいろんな人から優しいと言われる。なのに俺はこの時なんて理不尽な理由でキレてしまったのだろう。女もこちらの事情なんて知らないからまったく悪くないのに、ましてやいきなり怒鳴られたらそりゃあ驚きもするだろう。俺は自分のしていることに気づきすぐに謝った。だが女は口を開かず、遠くを見ている。もう一度謝るとやっと俺の顔を見た。白くて妖精のような美しい顔立ちだった。たぶん俺と同じくらいの年だろう。その女にどうやって家に帰るのか尋ねると歩いて帰ると言う。俺と同じくらいの年だとすれば高校生だ。どう考えても一人で帰るのは危ない 。今日は近くのホテルに泊まっていったほうがいいと言ったがお金がないと言う。その女には家までは歩いて三十分だから大丈夫だと言われたが距離の問題ではないと思う。俺はどうせ家まで歩けば二時間はかかるし、今日は家には帰れない。だから女に家まで送ろうかと言った。女はいらないと言ったがなんだかだんだん引くに引けなくなり、半ば無理やり送ることにした。