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メッセージ  作者: K
1/30

1 いい面だな

約十メートル四方の小さな柔道場で、二人の男が、稽古をつけていた。

しかし、稽古にしては、激しく、そして、一方的だ。

「かかってこいよ。渉。」

投げる方は、時々、声をかけながら、それでも、そのスピードに容赦はない。

「岳…。」

投げられる方は、かろうじて受け身をとってはいるが、すぐに立ち上がることも困難なくらいのダメージは受けている。

投げる岳は、投げられる渉の身体を引きずり起こして、尚も投げ続ける。

「何で、やり返さないんだよ。」

岳は、渉に訴えるが、渉は反応を返さない。

すでに、返せるほどの体力が残っていない。

動かない渉を上から見下ろす岳。

「何で、そんなに腑抜けになっちまったんだ。」

無性に腹がたち、岳は、倒れたままの渉の襟首をつかみ、絞め技をかける。

「う…。」

短いうめき声をあげ、息ができない苦しさに顔を歪める渉を見て、岳は、何故か息をのんだ。

「…。」

苦しむ渉の顔を間近で見ながら、岳は、更に力を入れる。

「ぐ…。」

このまま締めたら死んでしまうかも…。

二人が同時に思った瞬間に、岳の手は緩められ、渉は解放された。

咳き込む渉を、岳はじっと見下ろしている。

ようやく咳がおさまり、渉が、岳を仰ぎ見ると、岳は、

「いい面だな。」

と、一言だけ、言った。

その唇は、笑っているようだった。



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