5
出れないっっっ!!!!
私はドアに体当たりすることを諦めた。
マズイ、非常にマズイぞこの状況。
どうなるんだろう?
ここでは魔女狩りが行われている。
けれど、このセカイにおいても、魔法なんて存在しない。
リアリストな私からすればくだらないことこのうえない。
異世界トリップを2度も経験した私がいうのもなんだが。
そんなもので殺された女性たちは本当に可哀想だ。
だけど、
私もそんな女性たちと同じ運命を辿ろうとしている。
ヤバイっ!ヤバイヤバイヤバイ....
1 ここごと燃やされて蒸し殺される
2 ここごと爆破されて木っ端微塵にされる
3 騎士たちに連行され拷問のすえ魔女裁判にかけられ て処刑
うわぁ....
どれも嫌だっ!!!!
ルークに会えないまま死にたくないっ!!!
あ、魔女裁判説なら会えるかもしれない。
ここでは魔女裁判もその処刑も行われる。
裁判は大々的に行われるし、処刑は公開される。
ルークなら私が魔女じゃないって証言してくれる!
そこでルークが助けてくれるわっ!
でもなぁ、
私、ルークと、その、ほら色々あったし....
最終的には許してくれたけど。
そうだ、ルークは許してくれた。
最後に見た彼の顔が浮かんだ。
あのとき彼は、泣きながら愛してるって言ってくれたっけ。
私は急に元いた世界に強制返還されて、ルークからすれば勝手にいなくなっちゃったようなものだ。
そのことは怒ってるだろうな。
謝りたい。ルークが許してくれるなら、なんだってする。
優しさのカタマリのような彼を傷つけてしまったことが何よりもくるしいけれど。
ルークに恨まれていても、側にいたいんだ。
元の世界にいた2年間、ルークに会うことしか考えていなかった。
いつこのセカイに戻ってもいいように、ここで役に立ちそうなものをいつもバッグにいれていたんだ。
このスタンガンもそのうちのひとつ。
いやー、こんな初っ端から使うとは思ってなかったけどさ。
そういえば、ここではあれから何年経ってるんだ?
時間の流れがちがうことはわかってる。
もしかしなくても、ルークが結婚している可能性だってある。
うそ、それは、嫌だ。
泣きそうになった。
私は自己中心的な人間だ。
そして諦めが究極に悪い。
たとえルークが結婚していても、彼のことを諦められない。
ルークが私をもう愛していなくても、彼のことを諦めきれない。
彼が結婚していたら、憎まれていたら、身を引くのが彼のためだとは思う。
だけど、だけど
むりだよ、ルーク。
私は今でもずっと愛してる。
どんな形でも、彼のそばにいたいんだ。
元の世界では、あんなに"いい子"を演じていたのに、
それもできなくなってしまった。
しばらくして、外が騒がしくなった。
「おいっ!慎重に行けよ!!!」
「相手は史上最悪の魔女なんだからな!!」
ものすごい音を立ててドアがぶち破られた。
突入してきたのは案の定、騎士たちだ。