ホテルのロビーで見つかりました~麻倉美空嬢の後悔
ホテルのロビーで・・・第三弾です。短編ですが、初めての方は、シリーズリンクを開けて先に投稿した短編を読んだ方がよくわかりやすいです。
「美空、お前の将来の旦那様を連れてきたよ」
お父様に言われて、振り返って見ると、とても美しい方がお父様の隣に立っていた。キッチリとスーツを着こなされた方は、所謂、王子様のようだった。王子様の名前は、伊藤隆史さん。二十五歳で、将来家業である会社を継がれる前に、関連会社でお勤めされているらしい。私より十一歳年上だ。
ステキなステキな隆史さん。二人で話して私が成人するまでは正式に婚約はしないことになった。私は一目惚れをしていたので、婚約してもよかったのにな。見とれてボウッとしていたので、話し掛けられるまで何を話して居たのか覚えていなかった。
「それでいいのかい美空?」
「ええ、隆史さんのよろしいようにしてください」
わがままを言って嫌われたらっと思って、ニコッと微笑んで見せた。
「美空さんはまだ中学生なのだから、決めてしまっては学生生活が楽しめませんよ」
「はい、いっぱい友達と楽しみます」
気付いた時にはもう決まっていた。それでも、月に一度は隆文さんはデートに誘ってくれる。海外出張に行ってきた時にはお土産も頂いた。
手を繋ぎたい、キスもしてみたい、抱きしめて欲しい!
私の思いははしたなく、一度男性とお付き合いをしている友達に相談したら恋人なら当たり前だって言うから、そうなのかなって、次ぎに会えたときにちょっとだけ期待しながら、よろけたふりして手を繋いでもらったの。ドキドキしたわ。
それから、何度か隆史さんとお会いしても触れ合うことは中々無くて、また友達と友達の彼氏に相談したら、別の人で練習をしたらいいと言われたの。友達にパーティーを開いてもらったり、グループで出かけたり、隆文さんは大人の男性だから、ビックリしすぎたり嫌がったりするとダメだって言うの。だから、急に肩を組まれたり腰に手を置かれたりしても何でも無い振りをしていたの。
しばらく、同じ人と練習をし、すこし慣れてきた頃違う人を紹介してもらった。だんだん触れて来る場所が増えてきて、その人に聞いてみたわ。
「男の人って女の人にこういうことしたくなるの?」
「好きな人にならもっと触りたいって思うのが普通だね。俺は美空ちゃんが好きだからもっと触りたいって思うよ、練習でいいからさ、こういうの、してみようよ、ね、」
私の頬を両手で挟み、そっと唇を寄せ軽く重なった。チュッとリップ音をさせて離れていく。呆然とする私に気にすることもなく、更に深く唇を合わせてきた。舌を差し込み唾液を絡ませる。息が苦しくなって、その人の手首を握ると、もう片方の手が私の頬から胸に移動してゆっくりと触りだした。くすぐったくて体をよじらせると
「逃げちゃダメだって、練習なんだから。大人の男はこういうキスをするし、胸だって大きい方が好きなんだよ。でも、美空ちゃんは小さめだからマッサージして大きくしないと触ってもらえないよ」
私の胸を触りながら言ってきた。片手から両手になり、ソファーの角に私を押し付けて手を動かした。ゾクゾクと背筋がふるえて、
「あ、あん、・・・いやぁん」
「気持ちいいでしょう、俺練習いっぱいしてあげるからね」
練習をしてくださる方達は、私が成人するまで何人もいてくださり、時には一泊して練習をしてくださる方もいて、練習すればするほど結婚してから旦那様が私に飽きないようになるそうで、時には、今までの練習相手が複数で教えてくださいました。
どこまで練習をすればいいのかわからなくなってきたので、最近できた外部制の友達に相談したら、今までと正反対の事を言われました。私は、私は、もう隆史さんのお嫁さんになれません。
「美空って男好きだからあんな事やってるんだと思ってた。私だったら好きな人に全部してもらうよ。キスもSexも。でも美空って、全部別の人としてるよね~」
「・・・・・・あ、あのSexはどういう行為をするんでしょう、私、相手がしてくださる事を受けとめていたので、よくわからないのです」
「ええ~なんでわかんないの?ん~じゃあ、どこまでされたの?」
無知な私に根気よく教えて下さって、余りにも無知な為、アダルトDVDを見ながらの授業になった。結局、私は、まだ処女であることはわかったのだけど、私は隆史さんには嫌われてはいないだろうが、愛されてはいないのだとわかったの。
短大卒業一ヶ月前の2月にお爺様に言われて隆史さんと結納をすることになった。無しにしてほしいとお父様に話したけれど、聞いてはもらえなかった。会社としての利益が大きいそうだ。でも、愛してくれる人と結婚したいと思うのは間違いなのかしら。
隆史さんはやっぱりステキな人。三十代になられたそうだけど、王子様のままだった。きっと私以外にも綺麗な女性がいるんだわ。家族で食事に行った時に、偶然見かけて声をかけようとしたら、お母様に止められた。だって女性の同伴者がいたから。お母様になぜって聞いたら「隆史さんは大人の男性だから、仕方ないのよ、婚約するまで何も言えないわ」っておっしゃるの。「それに、ステキな方だから女性の方がよって来るのよ」ですって。尚更、私は愛されず、形だけの妻になってしまう。だから、お断りしたかった。
結納の後、隆史さんの周囲にいた女性達がスッキリした。身辺整理をしたらしい。お母様は「やっぱり、きちんとされているのね」っと微笑んでいた。ますます、お断りできない状態になり、適切な指導をしてくれた友達に、再度相談をした。
「好きな人別で作って、お別れしてくださいって言うしかないよね。駆け落ちするのもありか」
「好きな人、見つかるかしら、私、ずっと隆史さんだけだったから・・・・・」
「見つけるのよ!」
お爺様が私にくれた会社で仕事をしながら色んな男性とお付き合いをした。最後の一線は本当に好きになった人のためにとってある。仕事に、恋愛に忙しくして、隆史さんとの約束を段々断るようにした。色んな仕事をするなかで、オンラインショッピング用のホームページ作成のために依頼をしたら、担当の男性がとても親切で、よくわからない私のために、何度も説明をしてくれた。時間外でも駆けつけてくれたり、ホームページに載せる商品の写真撮影にも来てくれたり、私もお礼に食事に誘ったりして、プライベートなこともたくさん話すようになった。
段々惹かれていくのが自分でもよくわかった。彼女がいるのは知っていたけど、思い切って告白をした。始めは断られたが、仕事を理由に呼び出し、週末はずっと一緒にいた。彼女との約束があるときは必ず仕事を入れてキャンセルさせた。嫌な女だと我ながら思う。私と会うときは必ずプライベート用のスマホは留守電にさせたり、今日なんて、待ち合わせ場所に向かう最中に呼び出し、どうでもいい契約確認書にサインを貰い、酔った振りをしていつものホテルに送ってもらった。二ヶ月前は1時間くらいしがみついて酔った振りを続けた。いくら胸を押し付けても、抱き着いても彼は「ゴメン、俺沙織ちゃんが好きなんだ」の一点張り。でも今日は絶対してほしかった。
部屋に入って冷蔵庫のお酒を出して、もう少し呑みましょっと誘う。彼はしょうがないなという顔で、じゃあ少しだけといってくれた。ずっとずっと好きだと彼に言い続けている。最近はいい感じになってきたので、暑いといって、着ている服を脱ぎ散らかして彼に抱き着いた。そしてそっと耳元で
「一度でいいから抱いて・・・・・」
嵐のようだった。気持ち良くてもっともっと彼のことが欲しくて、もっともっと触って欲しくて、うれしくて泣けた。
翌朝、彼はもういなくなっていた。お昼近くのチェックアウトまでゴロゴロしていると、お母様から連絡が入った。固い声で、すぐに帰って来るようにとお父様が言っておられます、と言われ慌てて準備をした。
家に帰って見れば、両親だけでなく、伊藤家のご両親と隆史さん。お爺様達もいた。どうやら、隆史さんから婚約不履行のため婚約破棄を訴えられている。
お父様はそんなことある分けないと伊藤家の方に言っていたけれど他人に言われて、私がしてきた事はそんなふうに見えていたのかと感心してしまった。挙げ句に、ここ半年の行状を写真に撮られたものも見せられた。昨日の写真まであった。
放心して写真を見ていると、隆史さんが写真を手に取り
「よく撮れているだろう、昨日すぐ近くに居たんだよ、君は彼にしがみついていたけどね」
彼は証拠の写真を撮るために昨日連絡してきたのだろう。
「お父様、婚約は解消してください。私、この写真の男性が好きなんです。この人じゃないと嫌なんです!」
「お前はこんなことしでかして何を考えているんだ!」
頬を叩かれ、よろけた。お母様が支えて下さったので転ばずにすんだ。叩かれた頬が痛いというよりは、やっぱり、隆史さんに何も思われていなかったのだと、頬に手を当てて涙をこぼしつづけた。
婚約解消の騒動があった後、彼が、彼女に振られたと言ってきた。隆史さんに見られたあの日、彼の元彼女もいたらしい。あの日の朝居なかったのは、メールを見て、慌てて彼女の所に行ったからだ。
けれど、マンションに行っても出てくれず、週明けに会社に行けば別の営業先で商談中に呼び出しを受けて帰社すれば、元彼女の勤める会社と交わした契約が解除されたらしく、上司からその理由を聞かされて、大変だったらしい。元はといえば、私が全ての原因で、私が彼を好きになってしまったのがそもそもの始まり。優しい貴方が欲しかった。
「ゴメンナサイ、でも、貴方が好き。側にいて。」
そっと彼は近付いて、私をギュッと抱きしめてくれた。
・・・・・fin?
たくさんの方々にホテルのロビーでを読んでいただいて、感激しています。今回、R18の表現になりそうなのをセーブして、削りましたが、ぎりぎりセーフですよね!お月様にはまだ行かないのです。