非日常的な夜
愛を交わしあって四時間、時計は午後8時30分を指していた。
「……香澄…」
「…何?」
「俺、見た目と違って中身は真面目だぜ……」
「知ってる…実際左之が女と連んでるの見たことないし…」
「そうなのか…まあ実際は中学で連んだのはみんな遊びだった…話変わるけど香澄を見たときにこれじゃ駄目だなって…」
髪の毛もそんな時期に焦げ茶に染めたらしい。
だけど私は左之を信じて一緒に寄り添い合いたい。
もし裏切られちゃったとしてもいい、左之の傍にいられればそれでいい。
もう昔の左之じゃないって、私はそう信じていたい。
「実際左之がいなきゃ今の私はいない…強がりだけじゃ強くなれない…私はもっと、今の左之みたく強くなりたいよ」
「香澄…俺マジで、お前の優しさが欲しい…」
《支え合いたい。
ひとつになりたい。
温め合いたい。
温もりを感じ合いたい。》
私の思考回路は、これらの感情に支配されていた。
こんなのみんな、我侭な考えだと思う。
だけど私は、片岡香澄はあえてこの考えを大切にしていたいと思う。
たったひとつの《愛してる》とか《好き》とかの気持ちを失いたくないから。
今日は二人ぼっちの我が家で甘くて酔ってしまうかと思うくらいの夜を過ごした。
ー翌日。
「ちょっと左之支度遅いッ!!!!」
「うるせぇなぁ…母親みたいなこと言ってんじゃねえっつの…」
「怠そうですねぇ左之助君(笑)」
「そりゃ夜中の3時までやってたからねみぃだろ…!!」
眠そうな目を擦って欠伸をする左之、こうゆうマイペースなところは長所になるときもあるが短所になるときもある。
どっちかってーと今の私は無性にイライラしている。
「早くしろー!!!!」
「早くしねぇよー」
もうやだぁ…何なのこの呑気な男は…呆れかえって泣けてくるっての…。
ほんとに文人早く帰って来てぇ…(泣)
と、その時…。
ーピンポーンとインターホンが鳴った。
誰々?
………………。
奈々伽と蓮きゅんだぁ!!
よっ、救世主!
「れーんー、てめぇ何で来たんだよ!」
左之が少しだけ怒鳴る、何故か支度は完璧に終わっていた。
「だって気になるからに決まってんだろ(笑)」
「おいコラ鏡音レン!!!!」
「俺鏡音レンじゃねえからな!金森蓮だからな!解るか左之!」
確かに蓮は巷で今有名なVOCALOIDの鏡音レン君の名前に似ている。
そんな感じて、今日も一日が始まった。
私と奈々伽と左之と蓮きゅんで学校に行くのは初めて。
だけど美波がいないことがちょっと気になる。
大丈夫かな?
四人で少々騒がしく登校していった。
昇降口で美波を見かけた。
声をかけようと思うと逃げられた。
奈々伽にも同じような態度をとられたようだ。
美波、どうしちゃったんだろうか…。