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真・恋姫†無双 星巴伝  作者: 桜惡夢
一章 雷覇霆依
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八話 兆燎跋扈


曹操達が孫堅達と別れ、建業を発ってから早二週間が経過しようとしている。

曹操達の意を汲み、孫堅達が下手に干渉しない様に配慮してくれた事も有り、面倒な事は起きず。

無事に揚州を抜け、荊州へと入っていた。

そして現在は南郡を進んでいる。

徒歩、ではなくて、馬車で。

路銀を削って、買ったという訳ではない。

数日前、街で知り合った商人の商隊の馬車に乗せて貰う事になった為である。

「しゃあっ!、馬車だ!」「歩かなくていい!」と韓浩と曹洪が大喜びしたのは言うまでもない。

曹操達も嫌ではないが、二人程露骨ではない。

ただ、楽な反面、自由な行動が出来難いという点は曹操達としては小さくない問題だった。

それでも、馬車に乗って揺られているだけなのは、旅をしている身にとっては一時の楽園と言えた。


そんな馬車での道中の事。

まるで引っ越しでもするかの様に荷物を抱えながら擦れ違った百人程の一団が有った。

商隊の主である商人の話では「山賊にでも襲われ、村邑を捨てた者達でしょうな」という事。

安っぽい正義感、ではないのだが。

我が物顔でのさばる賊徒を放置する事は遺憾だ。


だが、此処で迂闊に動けないのもまた現実。

旅を続ける為にも下手に目立てない、という事。

何より、此処では曹家の威光も孫家の睨みも利かず事後の事は放置するしかない。

交州では士燮という事後を担う適任者が居たが。

それは偶々で、運が良かったというだけの事。

現実には、今回の様に“手を差し伸べる事でさえも軽々しくは出来無い責任の重さ”が有る。

そういう意味では、商人の“他人事な態度”も別に可笑しな事ではないだろう。

何も彼等だけが特別な訳ではない。

それは世の中に有り触れた悲劇(現実)なのだから。



「……本当に、世の中は儘ならないものだわ…」



それでも、全く何も思わないという訳ではない。

嘆く様に、もどかしそうに、悔し気に。

曹操は自分の右手の拳を左手で握りながら呟く。

卞晧は才器は本物だし、妻である曹操の意志を知り共に歩むと決めてはいるが、根幹部分は少し違う。

孫家での遣り取りでも改めて自覚をしてはいるが、卞晧は基本的に個人主義だったりする。

極端に言えば、立場等に伴う義務や責任よりも先に自分自身の為の損得勘定が優先順位を決める要。

対して、曹操や孫堅は曹家・孫家を背負う立場での利害思考が優先順位を決める一番の要因。

その違い故に、物事の見方には差異が生じる。

ただ、それは悪い事ではなく、寧ろ良い事だ。

曹操には卞晧が、孫堅には黄蓋が。

自分とは似て非なる見方を出来る理解が居る事で、視野・思考が狭窄している時、正して貰える。

それは中々に得難い存在であり、稀有な縁だろう。



「そうだね、思い通りに行かない事ばかりだね

だけど、それでいいんだよ

もしも、誰も彼もの思い通りになる世の中だったら今の世の中よりも遥かに混沌とした無法地帯だよ」


「……そうね、世の中は思い通りに行かない

だからこそ、本当に意志を貫き、理想を実現出来る一握りの者達を篩に掛けて、選び出す…

世の中とは、そういう仕組みなのよね…」


「そう考えると…本当、世知辛よな~…」


「へぇ~…康栄は今の自分が不満なんだ?」


「ちょっ!?、止めろよな、玲生っ!

んなつもりで言ったんじゃねえからっ!」


「ははっ、うん、判ってるよ、冗談だってば」



韓浩の一言を掴まえて卞晧が揶揄う様に言った事で焦った韓浩が言い訳をする。

その様子に曹操達は笑い声を溢す。

沈んでいた雰囲気が一転、解れて明るくなった。


韓浩は空気を読むのは下手だ。

しかし、直感的な察しが良いし、無意識に雰囲気を変え易い切っ掛けを生み易い。

その事を付き合いの長さから知っているからこそ、卞晧は見逃さずに掴み取り、上手く使った。

韓浩一人では大して役に立たない才も、卞晧という理解者を得る事で活かされる。

それはまるで、ボケとツッコミの様に。



「ったく、勘弁してくれ…マジで笑えねぇから…」


「ごめんごめん、悪かったてば

でもさ、理想と現実の差に苦悩する事なんて誰でも一度は経験する事だと思うんだ

勿論、「気にしない方が良い」とは言わないよ

考えて考えて苦悩した時間は確かな糧だからね

だけど、囚われてしまったら駄目だと思うんだ

自分の裡に裡にと入り込んだら脱け出し難いから

だから今みたいに溢したりするのは大事な事だよ

一人では見えない道も、誰かとなら見える

だからさ、俺達は沢山苦悩して、沢山笑おう

苦悩や悲哀、後悔では終わらせないでね」



そう卞晧は話を纏める様に言って、笑む。

視線は曹操を見詰めている為、曹操の為の様だが、実際には皆に対して向けた言葉だったりする。

曹仁も、曹洪も、甘寧も、韓浩でさえも。

そうなる可能性は十分に考えられる事。

だから、卞晧は「一人で抱え込まない様に」と。

この機会に然り気無く皆の意識に刷り込んだ。


ただ、それは孫家で卞晧自身も実感したが故の事。

母・田静、顔も知らない父の事を気にしない様に。

そう“自分に言い聞かせていた”部分が少なからず有ったという事が判ったからだ。

卞晧にとっての救いは妻である曹操が居た事。

曹操に愚痴り、吐き出した事で客観的に見れた。

両親の事を知る事は、自身を知る事でもある。

それは誰に責められる事ではない。

そう自分を受け入れ、教えてくれた愛しき曹操()

「自分は本当に幸せ者だな」と卞晧は思う。


まあ、そんな惚気は卞晧の胸中だけの話として。

一筆書きに漢王朝領の十三州を回る、とは言っても各地の全てを回る訳ではない。

いや、曹操とすれば出来れば全て回りたいのだが。

許可期限(一年)では回り切る事は不可能。

…まあ、卞晧と二人だけなら、可能性は有るが。

それでも、本当に回るだけになってしまう。

それなら、行ける場所は減っても、ある程度は民の実際の生活や現状を知る方が価値が有る。

そう考えて、割り切っていたりする。



「そう言えばさ、南郡の太守って誰だっけ?」


「…劉繁といって、州牧の劉表の甥になる男よ」



切り替わった雰囲気の中、韓浩が話題を振る。

しかし、先程持ち前の直感力を使ったばかりからか韓浩の選択は微妙だと言えた。

何故なら、答えた曹操が不機嫌になったからだ。

嫌悪感を隠そうともせずに顔を顰めている。

その瞬間、「馬鹿康栄っ!」「何をしているだ…」「少しは見直したのですが…これですか…」と言う感じで曹洪達から批難囂々。

助けを求めた先は、頼もしき理解者(卞晧)

苦笑しながら、「仕方無いなぁ…」と卞晧は曹操に話し掛ける事にする。

どの道、不機嫌なまま放置は出来無いのだから。



「その劉繁の事、華琳は知ってるの?」


「……ええ、知りたくもない事だけれどね

昔──と言っても、二年程前の話だけど…

洛陽に居た時、曾祖父様を訪ねて来たのよ

私は嫌だったのだけれど、間が悪く丁度曾祖父様が曹家の用事で出掛けられていたのよ

それで、曾祖父様が戻るまで話し相手をね…

その間も嫌だったのだけど…曾祖父様が戻った後、社交辞令の様に、私を誉めてね

「宅の息子の正室に」とか巫山戯た事を言ったの」


「うん、其奴、今直ぐ消しに行こうか」


「いやいや、駄目だろっ?!」


「何が駄目なの?、俺の華琳なんだよ?」


「今はなっ!、抑、昔の話で、社交辞令だろっ!」


「冗談だよ、冗談」


「……お前、目が全く笑ってないからな?」


「…もぅ…玲生ったら………ふふっ…」



曹操の説明に、割りと本気で殺意を懐いた卞晧。

滅多に見ない突飛な親友を反射的に止める韓浩。

冗談だと言いながらも本気にしか見えない卞晧に、曹操は困った様な振りをしながらも嬉しがる。

──と言うか、冗談だと言いながらも本気ではないという事は口にはしていない辺りが本音だろう。

そういった部分までを含めての曹操の反応。

「こういう風になら夫の独占欲・嫉妬を感じたい」という女性は世の中に少なからず居る事だろう。

まだまだ少女、恋する乙女な曹操には、嫌な記憶も吹き飛ぶ程に、効果覿面だった。



「…因みに、その劉繁の息子って幾つなんだ?」


「名は……劉宝ね…確か、当時二十二歳の筈よ」


「よし、其奴は消すべきだな」


「ええ、存在させる価値も有りません」


「ちょっ!?、隼斗兄っ!?、思春もっ!?」


「何で其処で反応するんだよっ?!」


「翔馬、康栄、如何に政略結婚が当たり前だろうと許される事と許されない事が有る…

二十二歳にも成って親が嫁を探している?

そんな甲斐性無しの屑男(クズオ)に嫁がされる少女の身にも為ってみろ、助けを望むだろう?」


「そうです、地位や役職の権力で幼い少女の未来を奪おうとした下賤な輩を野放しにする事は悪です

世の少女達、女性達の為にも消すべきです」


「言ってる事は解るけど駄目だろっ?!

確かに気持ち的には殺りたいけどなっ!」


「康栄お前もかっ!?」


「俺は違うぞ翔馬っ?!、気持ち的にはだっ!

マジな二人とは違うからなっ!」


「冗談だ」


「冗談です」


「玲生以上に笑えないってのっ!」



曹仁の質問に機嫌の直った曹操が答えた事に始まり曹仁・甘寧までが劉宝抹殺を口にした。

普段は騒ぎの原因である韓浩・曹洪が抑えに回る。

そんな状況を「冗談」では済ませられないが。

まあ、当事者達が殺る気は有っても遣らないのなら一先ずは落ち着いたと言えるのだろう。



「それで?、何が言いたかったのかしら?

貴男が太守を気にするなんて珍しいじゃない」


「珍しいって……いや、確かに珍しいけどな

まあ、俺は洛陽で生まれ育ってるだろ?

外の事は曹家の豫州、孫家の揚州、士燮の交州しか知らない訳なんだけどさ…

だから、ある意味では今回みたいな判り易い悪徳・無能な官吏の統治の現状って初めてに等しいんだよ

話には色々と聞いた事は有ってもな」


「ああ、成る程、そういう事ね」


「そっか~…この中でだと、ある意味康栄が一番の

“世間知らず”なんだね」


「その言い方は止めてくれ

…まあ、確かに否定は出来無いんだけどな」



曹操達は生まれ育った環境故に、卞晧は旅をして、甘寧は平民という立場で。

違いは有れど、世の中の裏表を見て知っている。

だが、洛陽という取り繕われた箱庭で生まれ育った韓浩は洛陽の外の現実を知らない訳で。

これまでに旅してきた場所は、他に比べて比較的に正面な統治・施政が行われている場所だった。

それだけに、目の当たりにした荊州の実態には色々思う事が有っても不思議ではない。


寧ろ、曹操達にしても韓浩が意外と政治的な方向に関心を示した事自体が驚きだったりする。

自分達の中では一番考えるより先に手を出す質。

そんな韓浩が政治に関心を持ったのだから。

ただ、それは歓迎すべき成長だと言える。

韓浩は卞晧との繋がりも深く、将来性も有る。

後々には曹家の重臣になる事は間違い無い。

そんな韓浩が“脳筋”では困るのだ。

だから、旅の中で色々と教えてきている訳だし。

その成果が出て来た事は喜び以外の何物でもない。



(ふむ…こうなってくると康栄の相手も出来るだけ早く見付けておくべきでしょうね…

変な女に引っ掛かったり惚れたりされても困るし、外部から干渉されても面倒なだけだもの…

──となると、誰が康栄の好みかしら…

先ずは康栄の意識調査から始めなくてはね…)



韓浩を逃がすつもりの無い曹操は静かに思考する。

そんな曹操()の思考を察し、苦笑する卞晧。

悪い事でもないし、ある意味必要な事だろう。

それに曹操が韓浩に無理強いする事も無い。

だから、卞晧としては特に止める理由は無い。

ただ、曹操が思う程、韓浩は思い通りにならないと付き合いの長さ故に卞晧は確信していたりする。

「はぁ~…私の苦労は何だったのかしら…」という溜め息を吐く愛妻の姿が脳裏に浮かぶ。

しかし、それを態々言おうとは思わない。

それはそれで曹操にも経験(勉強)になるだろうから。

そして何より、そんな曹操の可愛い姿が見たいからだったりするのは卞晧の胸中だけの秘密だ。






馬車に揺られ、街に着いてから商人と別れる。

宿を探し、宿泊を決める。

取れたのは四人部屋と二人部屋が一つずつ。

当然の様に曹操と卞晧が二人部屋を──という事は流石に無く、二人部屋には曹操と甘寧。

当然、四人部屋は男性陣が使用する。

そうなれば、男同士・女同士の話に花が咲く。



「あ゛ぁ~……も゛ー食えねぇ~…」


「幾ら奢られたからって食べ過ぎだからね?」


「小言は止めてくれぇ~……折角の満腹感を越える余韻が冷めるからぁ~…」



自分の寝台の上で仰向けに寝転がり、張りに張った腹を撫でながら話す韓浩。

宿を取り、食事に行った先で商人に再会し、夕食を奢って貰ったのだが。

元々、その商人にも気に入られていた事も有ってか調子に乗った韓浩は商人の七歳の息子に料理を次々注目させての大食いを披露。

息子が喜んだ事も有り、問題は無かったのだが。

曹操や卞晧からすれば少しは小言を言いたくなる。

それは仕方の無い事だろう。



「はぁ…腹痛を起こしても治癒はしないからね?」


「お~…それで構わねぇ~…」


「全く……まあ、康栄の事は放って置くとして…

二人共、体調の方は大丈夫?」


「ああ、これと言って不調や違和感は無い」


「交州・揚州に比べたら暑さも増しだしね~

先に南回りから行く理由が改めて判ったよ」


「まあ、寒い所から暑い所へ行くのと、暑い所から寒い所へ行くのとで、全然違うからね

生まれ育った環境や、血筋何かで個人差は有るけど個人的な意見としては前者より後者の方が楽かな

寒い所って言っても一年中続く極寒の地って訳でもないんだし、暑い所も灼熱地獄って訳でもないし、扉や壁を隔てて直ぐに変わるって訳でもなく徐々に気候が変わっていく訳だからね」


「大陸中部の豫州で生まれ育った俺達からすれば、北の寒さより、南の暑さの方が堪えるだろうしな

そういう意味でも、しっかりと考えてある訳か」


「まあ、その一番の理由は愛妻の為だろうけどね」


「その何方等もですよ」



曹洪の冷やかしに卞晧は苦笑しながらも肯定する。

旅の当初に比べれば、本当に打ち解けている。

真面目な曹仁でさえ、最近は気さくになっている。

そうなる至る一番の影響力は韓浩だろう。

何だかんだで卞晧が曹操に韓浩を推挙した見立ては良い意味で凝り固まっていた価値観に罅を入れて、一皮剥ける為の刺激となった訳なのだから。



「…そう言えば、前から聞きたかったんだけど…

玲生様って、何で華琳様と婚約したの?

あっ、変な意味じゃなくてさ

華琳様の場合、自分に勝った男だからって言うのも有るから一目惚れ以外でも判るんだけどさ

玲生様の場合って、どうなんだろうなって…」


「んー……一目惚れっていうのは有るんだけど…

華琳って綺麗で美人で、しっかりしてる様だけど、意外と隙も多いから可愛いし…

一緒に居て自分を高め合えるっていうのも有るね

それでも……一番の理由を挙げるとしたら…」


「………挙げるとしたら?」


「本能的な欲求、になるのかもしれないね

「華琳に俺の子供を産ませたい」っていう感じの」


「………何と言うか、返事に困るんですけど?」


「あはは…まあ、逆の立場だと俺も同じかな

けど、そう言うしかないのが本音だよ?

今は華琳の事を知って、色々と挙げられるけど…

最初は本当に一目惚れだったから

御見合い──というか、実技試験の時、初めて見た瞬間から華琳の事しか見てなかったしね

他の参加者には悪いけど、俺以外は不釣り合いだと本気で思ってたし、それを理解していたからね」


「………何かもう、御腹一杯なんですけど…」


「翔馬さんが訊いてきたんだけど?」


「ぅっ…まあ、そうなんだけどさ~…

俺達の中で最年長の隼斗兄は、どうなの?」


「どう、というのは?」


「だから、し──っ!?、じ、自分の結婚相手の事!

どういう女性が良いとか、好みかって話だよ!」


「…結婚相手か……考えた事が無かったな…」



迂闊に甘寧の名を出し掛けた曹洪だったが、対面の卞晧から殺気と共に「判ってますよね?」といった無言の圧力を受けて即座に誤魔化した。

語気は乱れてはいたが、食後で、男だけ、といった気の緩み易い条件下だった為、曹仁も大して怪しむ事は無く、真面目に考え込み始めた。


はっきり言って当事者達以外は共犯関係に有る。

建業での一件を機に、曹仁と甘寧を結婚させようと水面下で曹操が指揮を執り、画策している。

韓浩ですから、この件に関しては上手く遣っているという事も有り、口を滑らせ掛けた曹洪は冷や汗を胸中で掻き、踏み止まれた事で汗を拭った。


それは兎も角として、卞晧は意外と良い質問な事に簡単な思考誘導を遣ってみようと思い付く。

これが上手く行けば、今よりは確実に曹仁に甘寧を意識させられる事が出来るだろう。



「隼斗兄さん、難しく考えない方がいいですよ

単純に結婚した後、自分が生活する中で妻に対して何を求めるのか、という感じだったり…

或いは、“こういう女性”に傍に居て欲しいなっていうので、最初に思い浮かんだまま言って下さい」


「最初に…………し──っ!?、し、強いて言えば、自分の事を理解してくれる女性、だろうか」


「そうですね、それは大事な事だと俺も思います」


「うん、それって大事だって俺も思うな」



曹仁の言葉に同意する卞晧と曹洪。

その反応に口を滑らせ掛けた曹仁は一安心する。

卞晧の誘導で最初に思い浮かんだのが、寄り添った甘寧の姿だったのだから。

思わず言いそうになったが、ギリギリで堪えた。

「上手く誤魔化せたか…」と安堵している。


だが、その一言を卞晧達は聞き逃しはしていないし誤魔化されてもいない。

「ほっほぉ~」「隼斗兄、バレバレだな~」という胸中でニヤニヤしている韓浩と曹洪。

「うん、意外と良い感じかな」と冷静な卞晧。

曹仁を揶揄ったり、追及したりはしないが。

順調に進んでいる手応えに三人は満足する。



「そう言う翔馬は、どうなんだ?」


「──え?、俺?」


「お前は上下三姉妹で、跡取り息子の嫡男なんだ

幾ら曹家が政略結婚を嫌う傾向が強いとは言っても立場的に考えて、絶対な訳ではないんだ

少なからず叔父上達の意見も有るだろう?」


「あー……まあ、確かにそうなんだけどね~…」


「ん~?、翔馬って姉妹が居たのか~?

翔馬の姉妹って、どんな感じなんだ~?」



曹仁の質問に面倒臭そうな表情をする曹洪。

曹仁の言った様に、立場上、そういった話は昔から耳に蛸が出来そうな位に言われている。

だから、自分の話になると曹洪は消極的になる。


そんな曹洪の気持ちなどは知らずに。

今まで黙っていた韓浩が牛の鳴き声の様な言い方で興味深そうに訊いてきた。



「別に…何処にでも居る口煩い姉と妹だって…」


「いや、そんな事は無いだろう

間違い無く美人だと言えるし、淑女でもある

長女の曹彰は俺の一つ上で十七歳、面倒見が良く、良妻賢母を絵に描いた様に物腰が柔らかい

次女の曹貞は俺と同じ十六歳で、活発そうな印象の割りに料理上手で家庭、気も利く

末の妹で三女の曹恭は九歳だが、叔母や姉達という良い手本が身近に有るから将来は期待出来る」


「ちょっ、隼斗兄──」


「──翔馬、紹介してくれ」


「嫌だ、断る、御前と義兄弟になるなんて御免だ」


「何故だ朋友(とも)よっ?!」



冗談ではなく、本気で嫌な曹洪。

冗談ではなく、本気で興味を持った韓浩。

二人の戯れ合いを見ながら、曹仁は一息吐く。

──とは言え、曹仁の言に嘘偽りは無い。

曹彰・曹貞とは曹洪を含め、幼い頃から知っている従姉妹であり、幼馴染みで、家族である。

恋愛感情こそ懐いてはいないが、仮に二人と縁談の話が出たとしても断る理由は無いだろう。

そう言い切れる程には曹仁は思っている。


だが、曹洪から言わせれば「隼斗兄騙されてるよ、隼斗兄は彼奴等の本性を知らないんだよ…」と結構本気で言いたかったりする。

まあ、絶対に結婚相手に成らない実兄弟と従兄弟、その対応に差が生じるのは仕方の無い事だ。

そして、如何に己が父親が武人然としていようとも娘達にとっては大して関係の無い話である。

寧ろ、そういった男性を如何に御し、立てるのか。

それを母から教育されているからこそ、対外的には評価が高かったりする事を曹洪は知っている。


卞晧も、曹操との婚礼関係の話し合いで何度か顔を合わせてはいるが、「…あ、油断したら喰われる」という印象を密かに懐いていたりする。

容姿や仕草に騙されそうだが、彼女達は曹家の女。

曹操の従姉妹であり、同じ血を引いている才媛だ。

そう、そんなに生温い相手ではないのだ。


まあ、だからと言って卞晧は何も言いはしない。

それは曹洪にしても同じだったりする。

余計な事を言って評価に響けば、後が怖いからだ。

特に卞晧の場合には、「貴男の所為で私は貰い手が居なくなりましたので、責任を取って下さいね」と言われでもしたら、逃げ道が無い。

何より、色んな意味で曹操()が怖い。

そんな訳で、女達の秘密は厳守されていった。






一方、二人部屋の曹操達はというと。



「…か、華琳んっ…さ、まぁあっ!?」


「あらあら、思春ったらもぅ…こんなにして…

駄目じゃない、我慢しないで言わないと…」


「そ、そんな…い、言える…ァわ…け、有りまっ、んんっ!?、ぁあっ!、そ、其処はァアっ!!」


「私達の仲でしょ?、遠慮しないの

ほら、此処も、こんなに硬くしちゃって…」


「だ、駄目です!、其処は──」


「問答無用よ、我慢しなさい」


「さっきと言ってる事があ゛あ゛あぁア゛ァッ!!」



小気味良い音と共に、甘寧の左腕が通常の可動域を越えて背中側へと捻り上げられる。

俯せになった甘寧は涙目で息を荒く乱している。

甘寧の腰に跨がって座る曹操は氣を扱う整体術にて甘寧の凝り癖の有る肩周りの柔軟化を施術する。



「全く…こんなになる前に言いなさい

折角の日々の鍛練にも影響するのよ?

それとも…玲生に遣って貰いたいのかしら?」


「そっ、そんなつもりでは…」


「なら、どういうつもりなのかしら?」


「……………その……い、痛いので……」


「…………ふんっ!」


「痛あっ!?、かっ、華琳様っ!?、極ってますっ!、腕っ!、極ってますからあっ!!」


「大丈夫よ、少し荒療治をしているだけ

終わったら、今までよりも柔軟になっているわ」


「その前に折れますっ!、折れますからあっ!」



布団を叩き「参りました!」と示すも曹操は極めた関節技を緩める事無く、甘寧の腕を捻り上げる。

肩周りが思いの他硬い事が判明してから、定期的に甘寧は可動域を拡げる為の柔軟処置を受けている。

ただ、これが見た目以上に辛く、痛かったりする。


元々、亡くなった両親から武の手解きを受けていた甘寧は素人よりは腕が立つ。

しかし、勿論だが曹操達から見れば大差が無い。

そんな甘寧も日常生活としては漁師の娘だ。

武の鍛練は護身術程度に過ぎず、柔軟等は当然だが遣ってはいなかった為、その年齢の割りに肩周りの筋肉が硬くなってしまっていた。

当初は卞晧が処置していたが、途中から「女同士の方が気兼ねしないで済むでしょ?」という事により曹操へと施術者が交代していた。

尚、それを提案したのは曹操だったりするのだが。

曹操が嫉妬したり、独占欲からなのかは…不明。

それは卞晧以外には追及出来ず、してはならない。


解放された甘寧は、最近の鍛練では見られない程に息を荒くして、身体を投げ出していた。

ある意味では、“大人”である曹操。

その曹操から見て、今の甘寧の姿は少々艶っぽい。

別に曹操に同性愛の趣味は無いのだけれど。

感じる色気にも色々と有る、というだけの話。



「さて、序でだから全身を診て置きましょうね」


「──っ!?、むっ、む無理ですっ!」


「あら、まだまだ元気じゃないの」


「──はっ!?、まっ、待って下さ──」


「──さあ、夜はこれからよ」



笑顔の曹操による無慈悲な施術(死刑)宣告。

だが、甘寧が泣けど叫べど声は誰にも届かない。






それから更に十日が過ぎた。

南郡を抜け、江水を渡り、一行は長沙郡を進む。

現在は馬車に乗っているという事は無く、徒歩だ。


ただ、平穏無事に、という訳ではない。



「全く……鬱陶しいったらないわね」


「ええ、出来る事なら元凶を叩き潰したいです」



殺意と敵意を隠しもせず、足元に転がる数体の屍を見下ろしながら、憂さ晴らしの様に蹴る。

力弱き無辜の民、勇敢な将兵、自然災害の犠牲者。

そういった者の亡骸であれば、丁重に弔う。

しかし、自分達の命を狙って襲って来た敵に対して

“死者への冒涜”という概念は適用されない。

少なくとも、曹操達は人類皆平等という夢想を懐く間違った博愛主義者ではなく、実力主義者だ。


曹操達を襲い、倒された敵の数は八人。

実力を知らないとは言え、粗子供六人である一行を襲撃するには十分過ぎる人数だと言える。

それも賊徒等とは比較に為らない実力者が八人。

所謂、暗殺等の汚れ仕事を生業とする輩達だった。

それも初めてではなく、これで六度目である。

しつこいにも程が有るというものだ。



「けどさ、俺達にとって“美味しい獲物”だろ?

寧ろ、俺は大歓迎!、っていうのが本音だな」


「それはまあ……確かにね」



屍の懐等を漁り、金品を剥ぎ取っていた韓浩が顔を上げて二人に言うと、曹操は渋々肯定する。

別に路銀に困ってはいないが、有って困る事は無いというのが御金という物であろう。

その為、懐に報酬等を所有している敵は曹操達には自分から「これで殺して下さい」と頼まれているも同然だったりするので、楽に稼げる訳だ。

それも賊徒の懐とは雲泥の差と言える金額。

殺してから埋めたり、放置するのは勿体無い。

どうせ死んだ相手には無用な品なのだし生きている曹操達には戦利品として鹵獲する権利が有る。

少なくとも曹操達から襲撃はしていないのだから。

抑、それは迷惑料としては安い位だ。

──とは言え、実際には曹操達にとっては、大した脅威ではない為、小遣い稼ぎと清掃活動を兼ねての暇潰しに等しいのだが。

それでも夜襲も三度有ったし、村の中でも襲われ、曹操と甘寧は苛立っているのも間違い無い。

寧ろ、「おっ、また来たな、遣りぃ!」とか言える男達の方が考えなさ過ぎなのかもしれないが。

その辺りは一緒に旅をしている以上、口にはしても長引かせない様に全員が心得ている事だ。



「それにしても…まだ来てるって事は、本件自体も未解決って事なんだろうね」


「ええ、そう考えるべきでしょうね」



卞晧の言葉に同意する曹操だが、面倒そうだ。

襲撃される事より、睡眠時間が削られて肌や体調が悪くなる事の方が大問題だからだ。

如何に氣を使えて、補えるとは言っても、物事には限度というものが有り、氣も万能ではない。

曹操も甘寧も女として、異性の前で不様な姿を晒すという事態は看過出来無かったりする。

まあ、前に“好きな”という一言が入るのだが。

その辺りも追及してはならない事だろう。


そんな曹操達の現状な訳だが。

事の発端は最初の襲撃時、隊長格だろう男を捕まえ吐かせ(訊い)た事で一応は明らかになっている。

依頼主は定かではなかったが、何でも襲撃者連中は「“金髪の生意気そうな女”を連れてる旅人っぽい連中を殺せ」と言われたらしい。

しかも、報酬は前払いという話だった。

普通に考えると“怪しい依頼”だろう。

だが、その報酬の金額を考えると裏稼業をしている者達からすれば“美味しい話”である。

だから、引き受けた事は判らないでもない。


しかし、気になるのは依頼主に関してだ。

前払いなのは、再度会うつもりはないから。

要は依頼主の素性を知られない事が肝心な為。

それは引き受ける側にしても、口封じで始末されるといった可能性が無くなる為、良い事だろう。


ただ、それが逆に曹操達に情報を与えていた。

極端な話、報酬を持ち逃げされる可能性も有る。

それでも前払いで、尚且つ複数に依頼している。

その事から考えても依頼主は懐が豊かである。

そして、理由や目的は判らないが、どんな手を使う事になろうとも、その女性を殺したい。

その意思だけは明確に読み取る事が出来るのだ。



「…にしても、その狙われてる女性って誰かな?

金髪って少なくはないけど、多くもないよね?」


「ああ、曹家(ウチ)の中でも金髪は僅かに六人…

華琳様と間違える位の背格好な者は居ない…」


「荊州と縁が有りそうな金髪の居る名家ってのは?

現状で依頼主濃厚なのって劉表の一族だろ?」


「………嘘だ…康栄が正面な推理をして…る?…」


「手前ぇ…翔真っ!」


「ははっ、冗談だってば」



重苦しい雰囲気に為りそうなのを察して韓浩を使い笑いを誘って変えようとする曹洪。

「やれやれ…」という雰囲気に為ったので、曹洪の狙いとしては成功したと言えるだろう。

ただ、曹洪が感じていた程には重く捉えてはいないというのが曹操達の本音だが、それは言わない。


ただ、曹仁が言った様に世の中では金髪というのは老若男女問わず少数である。

その為、曹操が間違えられる事は可笑しくはない。

しかし、訊いた情報が正しいのなら、依頼主の示す標的の特徴には年齢・背格好は含まれてはいない。

見ように因っては“意図的に曖昧にしている”とも受け入れなくもないだろう。


もし、そうだとするのならば。

依頼主は曹操を狙っている、という事になる。

だが、曹操に劉表の一族から恨まれる理由が無い。

この旅でも接点は無かったのだから。



「…なあ、もっと単純に考えて、金髪の女性が居る名家って何処なんだ?

十歳から二十五歳位までの年齢で」


「………そうね、それなら確か袁家に一人居るわ

袁湯の長女で二十二歳、未婚の袁耀がね」


「…華琳の顔見知り?」


「家の付き合いで顔を合わせただけよ」



韓浩の問いに答えたのは嫌そうな顔をした曹操。

面識が有ると皆が察し、卞晧が代表して訊いたら、吐き捨てる様に曹操が答えた。

「あ、これは追及したら駄目だ」と全員が得心。

少なくとも曹操から話さない限りは放置となる。


そんな皆の雰囲気を察しない程、曹操は自己中心的ではないので、小さく溜め息を吐く。

苛立ちが無いという訳ではないが、卞晧達に向けて消えて無くなるという訳でもない。

何より、自分の不快感だけで情報を共有せず、事の解決の手掛かりを提示しない、という真似を、仮に曹操自身が遣られたら赦せない。

だから、其処は割り切って曹操は話し始める。



「…別に大した事ではないわ

単に性格・価値観の不一致から合わないだけよ

袁家は嘗ては豫州・汝南郡を本拠地にしていたけど中央で権力を得ると簡単に汝南郡を捨てたわ

混乱・荒廃した汝南郡に曹家が手を差し伸べた事で領民の忠誠心は曹家に移ったわ

だからと言って、袁家が逆恨みするという事は特に無かったのだけど、曾祖父様の功績、更に御母様の存在が曹家の影響力を強めた事で袁家としても無視出来無くなったし、焦り出しているのよ

三公を輩出した名門とは言え、それは過去の話…

今はまだ財力も有るけれど、衰退は始まっているわ

だから、曹家(ウチ)との縁談を画策していたのよ

それで袁耀を曹家の誰かに嫁がせる準備段階として私や曾祖父様に接触してきた、という訳よ

私も曾祖父様も一目見て「無い」って思ったわ」


「それを逆恨みして…って言うのは苦しいかな」


「ええ、「絶対に有り得無い」とは言わないけれど袁家にとっては無理に進めるべき話ではないもの

私と玲生の子供達、或いは孫達の代での縁戚関係の構築でも十分だと言えるわ

寧ろ、今の袁家にとって最も重要なのは直轄地たる支配領地の獲得でしょうからね」


「三公という地位によって築き上げられた繁栄も、その地位を失った事で衰退し始めている…

だから嘗ての汝南郡の様な袁家の基盤となる領地を手に入れたいって事だね

それも可能なら郡なら複数、若しくは一州で」


曹家(ウチ)と張り合う訳ではないでしょうけど…

成功例が有る以上、それが有益だと判る筈だもの」


「…聞けば聞く程、柵の多い世界だよなぁ…」


「何言っていの、貴男も他人事ではないのよ?

私達の直臣として、その立場は無視出来無いもの

今後、その手の縁談も少なくない筈よ」


「………マジで?」


「うん、マジで」



曹操は言葉に助けを求める様に卞晧に顔を向けるが無慈悲にも笑顔で肯定され、韓浩は項垂れた。

別に縁談自体が嫌な訳ではない。

ただ、曹操が嫌う様な女性との縁談が嫌なだけ。

まあ、抑として曹操が嫌う女性との縁談を韓浩達に受けさせる訳が有る筈も無いのだが。

そういう様な理屈的な意味ではない。

単純に“腹の探り合い”は遣りたくないだけの話。



「それでは、襲撃者の標的というのは…」


「ええ、恐らくは──いえ、十中八九、袁耀ね

私が言うのもなんだけど見た目だけなら生意気よ

中身が伴ってはいないから、それが判ると嫌悪感は倍増しというのも生温い位だもの

それは殺したくもなるでしょう」



甘寧の予想を肯定する様に曹操は続きを口にして、最後に私的な見解による本音を口にした。

それを聞いて「いや、それは…」という思いを皆が懐くが、声にも表情にも出しはしない。

そして、意識を逸らす様に卞晧が話を続ける。



「標的が袁耀で、袁家の意図が領地の獲得なら…

劉表の縁戚に嫁いで乗っ取ろうとしているか…」


「或いは、劉表の一族以外の太守の所に嫁ぐかね

袁耀の事を始末したいと考えていて、その為になら出費を惜しむ事も無い、となると…」


「依頼主は劉表か、その一族の者や関係者で…

袁耀の嫁ぎ先は劉表側にとっての政敵、かな…」


「それが妥当な所でしょうね…

そして、意図せず私達は袁家の手助けをした、と…

…はぁぁ~…冗談にしたい位に面白くないわね」



「いや、面白くないなら冗談にしても…」と思わず言いそうになった韓浩と曹洪は唇を噛み締める。

扱いの難しい話が終わり掛けているのだ。

余計な発言は慎むのは当然だと言えた。






それから更に四度の襲撃を三日間で受けたのだが。

十度目の襲撃を最後に襲撃は波が引く様に止んだ。

「何だ終わりかよ、どうせだったら、もう二、三回襲って来てくれても良かったのになぁ…」と言った韓浩に曹操達は苦笑を浮かべた。

本当に襲撃者達を“獲物”としか見ていない韓浩の思考を如何に評価するべきなのか。

曹操は割りと本気で悩んだのだが。

「まあ、康栄って、こういう感じだからね」という卞晧()の一言で納得する事にした。

一々悩むのも馬鹿馬鹿しい、とも言えるのだが。

やはり其処は“言わぬが花”である。


それは兎も角として、事の真相と顛末だが。

はっきり言ってしまえば、憶測の域を出ないまま、襲撃は終了した事になる。

「気に為らない」と言えば嘘になるのだが。

どうしても知りたいという訳でもない。

街で暫く足を止め、行商人等から話を聞けば情報を得る事は難しくはないのだろう。

ただ、そうまでして知る必要は無いと言えた。

何より、今下手に情報を集めようとすれば自分達の存在を──関与を両側に知られ兼ねない。

そうなれば曹家に事が及ぶ可能性は高いだろう。

面倒な話、曹家と袁家・劉表の一族との縁談話等が持ち上がり兼ねないのだ。

だから今は自分達からは関わらず無視するに限る。


それに旅を続けて行けば必ず司隷を通る事になる。

そうすれば事が落ち着いた頃に話を聞ける訳で。

今は表に出ていない事も噂話として聞ける可能性が出てくる為、その方が色々と都合が良い。


まあ、“人間違い”で襲撃されはしたが、曹操達は十分過ぎる路銀を稼ぐ事が出来た。

だから、今回の件は、それで十分だと言えた。

卞晧・曹操にしても、半分以上が子供の自分達では中々日雇いの仕事も難しいと判っていた。

だから基本的には賊徒を討伐し、略奪された金品を貰おうという考えだったりする。

実際に交州・揚州では、そうしてきたのだから。


ただ、懐具合の潤いは精神的にも余裕を生む。

無駄遣いはしないが過度な節制をしなくて済む事は素直に喜ばしいから。




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