六話 犬歩棒当
甘寧との出逢いを含む海賊騒動以降、特に目立った事は何も起きず、出発から一週間後、無事に目的地へと一行は到着していた。
「…うおおぉぉっ…愛しき陸地よおぉぉっ…」
「嗚呼っ、人は海じゃなく大地に生きるべきだ!」
到着直後、地面に頬擦りをする韓浩と曹洪。
結局、今回の船旅では慣れ切れず、船酔いの克服は出来無かったが故の二人の反応だった。
船酔いをしない卞晧は「酔わない奴に解るかっ!」等と言われては反論も出来無いので放置。
言って絡まれるのも面倒臭いのは言わずもがな。
一行が降り立った地は交州の南西部に有る交趾。
其処から東に向かって進み、揚州との州境に向けて北進して戻って行く予定。
船旅を終えたばかりだが、好機と判断して説明。
予想通り、「陸路万歳っ!」な馬鹿が二人居た。
甘寧は実状を知っている様で「………え?」という虚を突かれた格好だった為、唖然としていた。
その表情が可愛らしかった為、暫し曹操に揶揄われ姉妹の様に戯れ合っていたりした。
しかし、そんな平和な時間は長くは続かない。
何故ならば、船上では出来無かった、卞晧の鍛練が再開されたからである。
地獄の日々の再来に絶望した様に悲鳴を上げている韓浩達に驚いている暇も無く、付いて行くだけでも必死な甘寧は終わった途端に崩れ落ちた。
しかし、曹操との手合わせを見たら、武人としての本能なのか不思議と遣る気が漲ってきた。
そんな甘寧の様子に、「あー…そうなるよなぁ…」「判ってても効くからねぇ…」「一種の詐欺だろ、あれぷギャアッ!?」「康栄いぃぃっ!?」等と言って、甘寧が気付けない速度で制裁された韓浩は無視で。
最終的には甘寧は気絶したのだけれども。
その口元には満足そうに笑みが浮かんでいた。
決して、嗜虐思考が有るという訳ではなく、純粋に向上心から甘寧は歓喜していた。
「二人に肩を並べたい」とまでは言わないものの、少しでも強くないという欲求から来るもの。
そんな甘寧の意志を感じて卞晧達は笑みを浮かべ、曹仁は「負けない様に…」と気合いを入れ、残った二人は「ようこそ、地獄へっ!」と仲間入りを歓迎していたりするのだが。
甘寧が知る事は無いかもしれない。
交州を旅し始めてから早くも一週間が経った。
一口に漢王朝、一国の領土だと言っても、広大だ。
“南船北馬”という言葉が有る様に南北では勿論、東西でも人々の生活環境や文化・風習は異なる。
だがそれは距離的な大きな違いによるだけでなく、もっと身近な問題だったりする。
山を一つ挟んだだけの彼方等と此方等。
場所によっては川を挟んだ対岸でさえ、異なる。
それだけ人々の集まって成る居住地という場所には特有の文化・風習が生まれ易い訳だ。
漢王朝十三州の内、交州は最も中央と疎遠だ。
地図上では益州・荊州・揚州と隣接しているのだが現実的な事を言えば、益州・荊州と直接往き来する事は不可能に近かったりする。
三州の州境──つまり、交州北部には人々を遠ざけ寄せ付けない様に、東西に延びている天然の境界線である“南嶺大山脈”が存在しているからだ。
勿論、絶対に不可能だという訳ではない。
しかし、軍隊ですら山越えをすれば九死に、諦めて引き返して一生、という程に過酷な道程である。
当然、一般人の旅人や行商人等が往来に使用出来る様な道ではない事は確かだ。
その結果、交州は漢王朝の中でも特に独立性が強く中央で生まれ育った者にとっては異国に等しい。
漢王朝の領土を洛陽を基点に南北に分けたならば、その南の領土の殆んどは益州・荊州・揚州・交州が占める訳で、その何れもが独自の文化・風習に加え特有の自然環境を有している。
その為、交州の文化・風習は曹操達には新鮮であり未知に溢れていると言えた。
そんな交州の環境──気候や食事に慣れてきた頃、好奇心というのは無駄に騒ぎ始める。
如何に慎重な者でも、それ位の時期には心の隙間が知らず知らず生じてしまうものである。
「──それじゃあ、この“大炎上拉麺”というのと餃子、白湯を六つずつね」
昼食を摂る為に入った料理店で、曹操が代表をして全員分の料理を注目した。
奇抜な名前の拉麺でもあり、ずっと気になっていた交州特産の“炎吼王”という唐辛子を使っている為、この機会に食べてみようという事になった。
因みに、大炎上拉麺には普通・強辛・激辛・極辛・辛地獄・辛世界・辛天地の七段階が存在。
注文時の内訳は普通が三人、辛天地が三人。
安全策の慎重派と、勇猛果敢な挑戦派に分かれた。
注文した品が来るまでの間、六人は食事後の予定を話し合いながら──ふと、ある事に気付いた。
店内には自分達以外にも御客は居るのだが、殆んど注文時に大炎上拉麺の名前が挙がらないのだ。
料理名の横に“名物”と書かれた触れ込みなのだが──どうにも“迷物”の予感がしてきた。
気付けば会話が途切れ、「はいっ、御待ち遠様!」と元気良く料理を運んで来た店員の女性の声にさえ思わず肩を跳ねさせてしまったのも仕方が無い事。
「いや、待ってたけど、待ち遠しくはなかった」と言いたい気持ちを抑え込みながら、六人は卓の上に並べられている料理を見た。
一人前五個の餃子の乗った皿と透明度の高い白湯は普通に美味しそうな見た目・匂いをしている。
しかし、問題の大炎上拉麺は──赤かった。
思わず全員が「…え?、これ食べ物なの?」という表情で見合った位に、真っ赤っかだった。
その中でも韓浩・曹洪、そして曹操の前に置かれた器の中には赤い山が聳えていた。
チラッ、と曹操が右隣の卞晧の器の中を見た。
拉麺の汁は同じ様に赤いのだが、普通の物には山は存在してはいなかった。
改めて曹操は目の前の自分の分の器の中を見る。
汁に使った麺の大地に焼豚の土台が築かれた上に、真っ赤なメンマの山が聳え、赤雪を冠している。
はっきりと言って曹操は理解が出来無かった。
「…何?、これは料理なの?、違うでしょっ?!」と卓を叩いて叫びたい衝動に駆られるが、流石に全く食べずに文句を言う真似は出来無かった。
そういった言い掛かりを付けて民達を虐げる地位・権力を振り翳す輩と同じ様には為りたくはない。
「…これを作った料理人は何を考えているの?」と眉根を顰める事しか出来無かった。
「………取り敢えず、食べてみようか…」
「……ええ、そうね、先ずは食べてみましょう…」
「……まぁ、死にはしないだろうしなぁ…」
「…そうだよね…店で出してるんだしね…」
卞晧の言葉に続く様に声を出したのは辛天地組。
それは明らかに、自分に言い聞かせている言葉。
曹仁と甘寧は何も言えずに取り敢えず自身の戦いに身を投じる事にした。
『──頂きます』
手を合わせ、食事が出来る事への感謝を口にして、其々が箸を手に取って──固まった。
意識を切り替えようとも、やはり現実は変わらず、目の前の赤い怪物を相手に怯んでしまう。
取り敢えず、全員が渇いた口を潤す為に白湯を口に運び、普通に美味しい事に安堵する。
その次に餃子を一個、箸で掴み、口に入れる。
歯を立てれば心地好い音と食感、香ばしさと肉汁が口の中に溢れだし、食事をするという行為の幸福を惜しむ事無く伝えてくれる。
噛む度に口の中で音色を奏でる食感と旨さの重奏に六人は暫し意識を傾ける。
だが、“喉元過ぎれば熱さを忘れる”と言う様に、現実逃避は餃子を飲み込んだ所で終わった。
再び直面する難敵を前に、六人は沈黙する。
そんな中、最初に拉麺に箸を入れたのは卞晧。
曹操の事を思えば、普通の自分が臆している状況は情けないと言うしかない。
男ならば、行くしかない。
そう覚悟を決め、卞晧は拉麺を一口、口に含む。
血の池を思わせる中から出て来た毒蛇の様な麺。
帯びた熱は空気に触れ、息を吹き掛けても薄れず、含んだ口内を侵略する様に襲った。
──が、それだけで、思った程の辛さは無かった。
昔、亡き田静に食べさせられた“山葵”。
アレに比べれば、何という事も無いと言えた。
「…うん、思ってた程じゃないね、美味しいよ」
「………確かに、辛さは有るが…結構、美味いな」
「………そうですね、これ位なら他でも有ります」
卞晧の言葉に、曹仁と甘寧が続き、一口食べてから同じ様に意外と平気だと口にする。
それを見て曹操は卞晧の普通の辛さが何れ位なのか確かめてみる為に「一口頂戴」と言って食べてみて「……成る程、確かに辛いけど美味しいわ」と。
特に問題も無く、曹操は貰った一口を飲み込んだ。
その様子に“辛さは増すとは言え平気な筈”と考え韓浩達も含め、曹操達は自分の拉麺に箸を伸ばし、麺を掴み上げて──息を飲んだ。
卞晧達の拉麺よりも明らかに粘り気の有る汁が麺に絡み付いていて、障気の如く湯気を放っている。
だが、熱い事なら冷ませば済む問題だ。
三人が──いや、六人が息を飲んだのは別の理由。
湯気に乗って漂った匂いが──痛かった。
「…………ぇ?、匂いが痛いって…え?、何?」と本気で言いたくなった六人は可笑しくはない。
酸味の有る感じではなく、普通に痛いのだ。
「……玲生、いつまでも愛しているわ
──逝くわよ!、二人共っ!」
「──糞があっ!、掛かって来いやアァっ!!」
「──ぇえいっ!、侭よおぉっ!!」
三人は覚悟を決めて、箸先の地獄を口へと運んだ。
卞晧から一口貰って食べていた事で曹操は無意識に味わおうとしてしまった。
その結果、口内が、舌が、唇が辛さという針により容赦無く突き刺されてしまった。
その為、箸を両手で握り締めたまま曹操は俯いて、無作法だが堪らず地団駄を踏んでしまった。
「「────ッブゥンギャアアアァアッッ!!!!」」
一方、味を知らず、気合いと勢いで乗り越えようと麺を啜った韓浩と曹洪は思いっ切り噎せ、そのまま辛さに耐えきれずに絶叫してしまった。
曹操を心配する卞晧と甘寧、阿鼻叫喚の地獄絵図に唖然としていた曹仁が我に返って周囲を見回すと、「あー…可哀想に…」「久し振りに見たな」等々。
他の御客からの憐憫の眼差しと言葉に気付く。
その様子から大炎上拉麺が、ある意味では名物で、ある意味では迷物なのだと察してしまった。
悶絶する韓浩達は兎も角、愛する卞晧の前で絶対に醜態を晒すまいと気合いで堪える曹操。
だが、涙目で卞晧に抱き付く様から戦意を喪失した状態に為っている事は明らかだった。
卞晧は周囲には気付かれない様に白湯を氣で冷やし曹操に飲ませながら、自己治癒も出来無い程に取り乱している曹操に治癒を施す。
韓浩達が助けを求めてはいるが、自業自得であり、卞晧としても優先順位は愛する曹操が上。
抑、卞晧も男だから助けるなら男よりも女性。
如何に相手が親友でも死にはしないのだから。
それ故に韓浩達の治癒は後回しにされた。
人前で泣いた事など無い曹操にとっては屈辱。
以後、曹操は人前では絶対に辛い物を食べる真似は一切しなくなり、本人にも苦手意識が生まれる。
後々、つい韓浩が口を滑らせた事で劉懿に知られ、揶揄われてしまったり、曹嵩が交州に私兵を率いて向かおうとしたりするのだが。
それはまた別の話だったりする。
因みに、完食不可能と思われた三杯の大炎上拉麺・辛天地だが、卞晧が残さず食べ切った。
自分の前を曹操に譲り、曹操の分を食べる卞晧。
氣を使っているという訳ではなく、素で食べる。
その姿に「……もしかして、慣れれば行けるか?」と考えた挑戦者が再び箸を伸ばした。
──が、当然、そんな都合の良い話は無かった。
再び、絶叫し悶絶している馬鹿二人に対し曹操達は冷ややかな眼差しを向けた。
結局、二人は新しい料理を注文し、二人の分も含め卞晧は完食してみせた。
尚、完食した時には店内にいた御客から拍手喝采が送られ、思わぬ称賛を集める事になった。
これが切っ掛けで、「貴方も辛王に挑戦!」という触れ込みで街起こし的な祭りが開催されるのだが。
それを卞晧達が知る事になるのは随分と先の話。
“初代辛王”の伝説と逸話は、交州の地で長く語り継がれてゆく事となる。
旅をしていて、一番困る事とは何なのか。
食事?、寝床?、悪天候?、厠?、風呂?。
確かに何れも重要であり、困る事ではあるのだが。
やはり、一番となると──
「オゥオゥオゥッ!、手前ぇ等っ、命が惜しけりゃ有り金全部置いてきなぁっ!
女共も素直にしてろよっ!」
「キヒャヒャヒャッ!、頭は残忍で怖ぇが、無慈悲じゃあないんで大人しく従った方が利口だぜ?」
「ヘヘッ、頭ぁっ、今日の女共は当たりでさぁ!」
──そう、賊徒等の人害に他ならないだろう。
何故なら、こればっかりは準備して回避するという事が不可能に近い事だからだ。
交州での十二日目、曹操達は行き先が同じであった商隊に同行する形で蒼梧を目指していた。
その途中の山道で山賊に襲撃を受けていた。
──とは言え、戦争時の襲撃とは訳が違う。
賊徒は護衛等が居れば彼等に対しては容赦無く襲い掛かっても、商人や旅人は無闇には傷付けない。
死人が出れば討伐隊が編成され、向けられる。
そうなれば自分達に勝ち目が無い事は明確。
だが、生かして見逃せば、意外と放置される。
頻繁に襲撃する様な真似をしなければ、問題視され討伐される可能性は低いのが実状である。
今回の場合、この商隊に護衛は居なかった。
それは人件費をケチったからではなく、約百五十人という人数で纏まって移動している事から小規模な賊徒からは襲われ難いだろうと考えていた。
そんな油断を狙っていたかの様に五十人程の山賊は襲撃を仕掛けてきた。
そういう意味では山賊が一枚上手だったと言える。
「右側を私達が、左側は貴男達で良いわね?」
「うん、問題無いよ」
「オイッ!、其処の小娘なビボグオァッ!?」
「──誰が小娘よ、失礼ね」
役割分担を決めていた曹操達に気付いて声を掛けた山賊の男が、話している途中で奇声を上げて宙を舞い地面へと落下した。
二度程弾んだが、男が起き上がる気配は無い。
──否、生きている気配が全くしなかった。
唖然としていた山賊達が「抵抗された」と気付いて曹操達に振り返った時には姿は無く、周囲から立て続けに悲鳴と奇声が上がっていった。
狼狽える者は恐怖に混乱した思考のまま状況を何も把握する事の出来無いままに意識が途絶え、逝く。
人質を取ろうと動いた者は腕を、脚を、潰されるか切り落とされ、首を踏み砕かれて息絶える。
四半刻と掛からずに討伐と事後処理を遣り終えて、感謝を受けながら曹操達は予定通りに進み始める。
「あ、あのっ、先程は有難う御座いました!」
その中で、緊張しながら卞晧に話し掛けて来たのは山賊に人質に取られ掛けた曹操達と歳の近い感じの成人前だろう地味な少年だった。
顔立ち自体は悪くはないが、特筆する程に整ったり目立ったりはしない、という位で。
背丈は卞晧と同じか、少し低い位だろうか。
武を嗜んでいるとは思えない、非力さが滲む。
「そんなに気にしないで下さい
皆さんが無事で、何よりですからね」
「…………っ!?、す、済みませんっ……ついっ…」
必要以上に畏まっている少年に対して、緊張を解す意味で笑顔を浮かべて見せた卞晧。
そんな卞晧の反応に少年は呆然と見惚れていた。
勿論、少年は尊敬の意味で見惚れていただけであり他意は無かったのだが。
理解していても威嚇したくなるのが女心である。
然り気無く曹操は卞晧の左腕を取って、少年に対し「何か用が有るのかしら?」という笑みを向ける。
尤も、その眼差しは全く笑ってはいないのだが。
言い表せない悪寒と恐怖に我に返った少年は直ぐに変な誤解をされていると感じる。
「わ、私は士燮っ、字を威彦と申しますっ…
そのっ、皆様は何処かしら、御家等に御仕えしたりしているのでしょうか?
もし、そうではないのなら、私の家に仕官してみるつもりは有りませんか?」
慌てながらも、名乗ってから曹操達の立場に関する話を振って、話題を変えようと試みた。
士燮としては有能な人材を目の前にしている以上、見逃す理由は無いからなのだが。
曹操達は周囲には気付かれない様に緊張感を持って視線を交え、揃って口を滑らせない様にする。
士燮との会話は曹操と卞晧に任せてしまう。
その二人も一瞬だけ視線を交えて方向を固める。
「…えっと……字を持ってるって事は士燮さんって成人されているんですよね?
失礼ですけど、今、御幾つなんですか?」
「あっ、今年で十八歳に成ります」
「「──十八っ!?、嘘だあっ?!」」
「──ええっ!?、本当なんですよっ?!」
十八歳だという衝撃の事実に、韓浩と曹洪が思わず突っ込んでしまったが、仕方が無い事だろう。
曹操達も「……え?、十八歳?」と思ったのだし。
同じ歳の同性と比べても小柄に入る卞晧と同等か、それ以下である士燮が六歳も上の十八歳だとか。
高身長な曹仁・韓浩からしても信じ難い事。
ただ、士燮は嘘は言ってはいない。
曹操と卞晧は不必要な衝突や揉め事を避ける為に、交州の有力者・名家といった人物に関係する情報は一通り集めて頭に入れている。
その中に、士燮の名前と年齢も確かに存在する。
自分達が今向かっている蒼梧に居を構える地元でも有名な名士で、代替わりしたばかりの若き当主。
そして、彼自身も県令という立場だった筈だ。
二人に情報を伝えた甘寧も「……そう言えば…」と冷静になって思い出していた。
逆で有れば、縁も有り、曹家に招き入れてもいい。
そう思える程度には第一印象としては悪くはない。
しかし、その逆となると、先ず有り得無かった。
「…士燮さん、有難い御話ですが…済みません
私達は旅をしていますが、故郷で家族が待っている身ですし、私達の事を信じて送り出してくれた家族からの期待を裏切る事は出来ません」
「いっ、いえっ!、此方こそっ、いきなり変な事を訊いてしまって済みません!」
卞晧が士燮の気を引き、意識を曹操達から逸らした隙に曹操は韓浩達を一睨みして黙らせ自重を促す。
甘寧に確認する意図で視線を向ければ小さく首肯。
その上で、曹操は考える。
自分達の立場を訊いたのは家臣として迎え入れたい意識が少なからず存在しているからだろう。
だが、士燮の家は急速に台頭してきた訳ではなく、十代以上続いている名士。
代々の御抱えの家臣が居ない訳ではない筈だ。
勿論、御家騒動による内部分裂等で家臣が減ったり非協力的だったりする事は有り得る事だ。
ただ、そういった情報は掴んではいない。
当然だが、そういった情報は外部に知られれば突け込まれる要因であり、領民にも不安を懐かせる材料である事から市井に流れ広まる可能性は低い。
そんな曹操の思考を読み取った様に卞晧は士燮へと疑問を投げ掛けていた。
「御話を御受けする事は出来ませんが…士燮さん
貴男は何故、私達に仕官の御話を?
私の記憶違いでなければ、士燮さんの御家は名家で御抱えの家臣団も居らっしゃると思いますが?
士燮さん御自身も県令という官職に有る身…
募集するなら、伝手を使うなり方法は有るかと…」
「……はい、我が家に仕えてくれる家臣は居ます
信頼もしていますし、忠誠心も疑ってはいません
…ですが、その……実は、私も含め、殆んどが武を苦手としていてまして…
また、私と同じ様に代替わりしたばかりで、賊徒を相手にした実戦の経験も皆無なのです
私の治める蒼梧は此処十年、賊徒の被害が交州でも少ない場所の一つで、過去二十年で見れば交州一と言える程に治安が良い事で知られています
…ですが、それは我が士家の者や家臣の功績という訳ではなくて、近隣を治めていた方々や家々による所が大きかった訳でして…
その何れもが此処三年で代替わりをしまして…
……非常に言い難い事なのですが、それによって、近年急激に治安が悪化しているのが実状です
まだ蒼梧では大きな被害は出てはいませんが…
それは時間の問題でしょう…
ですから、私も対策の為、武に長けた人物を何人か招き入れたいと思い、伝手を頼って探したり、自ら彼方此方へ出向いてはみたのですが…」
「……貴男の意に適う人物は居なかった、若しくは他の所に好条件で奪われた、という所ですか?」
ある意味では汚点だとも言える内容を話した士燮は卞晧の言葉に力無く頷き、そのまま項垂れる。
世の中、信頼と忠誠よりも財力と権力である。
何ら可笑しな話ではなく、珍しくもない事。
特に韓浩は士燮の話を断った人物の気持ちが判る。
韓浩自身は親友である卞晧との信頼関係も含めての仕官だった訳だが、もしも他から好条件の仕官話を提示されていたなら、今は違っていた事だろう。
韓浩でさえ、その様に思える訳だ。
一般人ならば、生活の為に優先するのは何か。
全ては言うまでも無い事だと言えよう。
縁や伝手は大事だが、「人生を預けられるか?」と訊かれたなら大半の者が「無理」と答えるだろう。
それ位に、世の中の価値観というのは理想と比べて差が大きいのが現実だったりする。
「…事情は判りました
ですが、放置する訳にはいかない問題ですよね?
士燮さん、どうしようと御考えなのですか?」
「……好ましくは有りませんが、武に長けた名家の御息女を妻として迎え入れ、縁戚関係を結びます
妻の実家の影響力が強くなりますが…民の為です
背に腹は代えられません」
「──貴男、それでいいのかしら?」
卞晧と士燮の話が終わり掛けている所に前触れ無く曹操が割って入って来た。
士燮は勿論、卞晧も驚いたが彼は空気が読める。
曹操の纏う雰囲気が憤怒と苛立ちを含んだ刺々しい物である事を察して大人しく口を閉じた。
彼は、“妻の尻に敷かれる事も夫婦円満の秘訣”の一つであると義父母達を見ていて知っている。
いざという時だけ、男は頼もしく強く有れば十分。
普段は妻の、女性の御機嫌を窺う小心者で良い。
そんな卞晧の事には誰も気付かず、士燮は間を置き悔しそうな表情ながら、覚悟を決めた様に曹操へと顔を向けて口を開いた。
「……はい、私には、それしか方法が──」
「そういう事ではないわ
貴男、好きな相手が居るのでしょう?
それも将来を誓い合った位に想い合う相手が」
「────っ!!??」
だが、曹操の言葉に士燮は声を失った。
鋭く、心を見透かす様な曹操の眼差しに息を飲む。
初めて会った筈なのに、士燮は「絶対に勝てない」という認識を植え付けられてしまった。
それは恐怖による物ではなく、純粋な才器の差。
そして、そう感じられる事こそ士燮の優秀さの証。
「民の為に、その覚悟は立派だと思うわ
けれど、今の貴男は困難に立ち向かう事さえ放棄し簡単で楽な方に逃げているだけよ
それに、その選択が本当に民の為に成るのかしら?
短期的に見れば問題は解決するかもしれないけれど長期的に見れば違う問題を抱え込むのでないの?
私には貴男が言った相手や家の事は判らないけど、相手の弱味に突け込み、政略結婚で支配していく…
そんな事をしそうな相手が本当に民の事を大切にし幸せに出来るのかしら?
少なくとも私には奇跡でも起きない限り有り得無い事だとしか思えないわね
それなら、苦労し、犠牲が出てしまおうとも…
貴男が心から愛し、貴男を心から愛し、貴男と共に民に寄り添ってくれる想い人の方が民の為では?
私は、そう思うわよ」
そう言い切ってから曹操は組んでいる卞晧の右腕に頭を預ける様に寄せて、言外に示して見せる。
「自分の幸せさえ掴めない者が、民を幸せにする事なんて出来る訳が無いのよ?」と。
自身を以て証明するかの様に、笑顔を浮かべて。
士燮の視線は曹操から卞晧へ、そして、曹操へ。
その曹操の笑顔に重なる様に女性の笑顔が浮かぶ。
目頭と鼻の奥が熱を帯びて、抑えていた筈の感情が溢れ出して来てしまった。
だが、それは悔しくも、悲しくも、痛くもなく。
寧ろ、取り返しの付かなくなる前に気付けた事への感謝と、歓喜によるもの。
曹操の言葉で、士燮は自分の心に気付いた。
自分が本当に恐れ、逃げていたのは何なのか。
失望・拒絶・離別──全ては一つの事に起因し。
向き合う事から逃げていたのだと。
曹操の言葉──客観的に見れば堂々とした惚気──により、吹っ切れた士燮は蒼梧に着くと城では無く一つの屋敷へと真っ直ぐに向かって行った。
その門扉の前で立ち止まり、暫し見詰め、深呼吸し──踵を返してしまった。
「済みません、士燮様が御息女に御用だそうです」
「────ちょおっ!?、──っ!?」
その反応に容赦無く曹操は門扉を叩いて声を出し、士燮が来ている事を伝え、相手が家の者ではなく、娘である事まで明確に告げる。
勢いだけで此処まで来たが、冷静になって考えると「大事な事なんだし、日を改めよう、そうしよう」という結論に達して、引き換えそうとした士燮。
当然ながら、曹操の取った唐突過ぎる行動に驚き、「何するんですかっ?!」という抗議の視線を向け、詰め寄ろうとしたが、振り向いた曹操の「貴男ね、此処まで来て帰る?、巫山戯ているのかしら?」と言っている笑っていない笑顔に言葉を失った。
こういう時の女性の熱量に男が勝る事は少ない。
恋愛が基本体質の女性に理屈は通じ難いから。
まあ、男の理屈とは“言い訳”でしかないが。
「──御待たせしました、威彦様──あら?」
門扉が開かれ、姿を現したのは十七~八歳程だろう綺麗な長い黒髪が印象的な女性だった。
背丈は卞晧よりは高く、士燮とは頭一つ分程違う。
士燮と二人で並ぶと姉弟に見られてしまうだろう。
慌てた様子も無く落ち着いた物腰で出て来た辺りに士燮との確かな信頼関係が窺える。
そんな彼女だが、見慣れない曹操達の姿には自然と小首を傾げてしまうのは仕方の無い事。
仮に、士燮自身が問題を起こしたなら、此処に来る理由は無いし、女性が問題を起こしていたのなら、士燮が来ている理由が無い。
それを瞬時に理解したからこそ、彼女は悩んだ。
その反応に曹操は「へぇ…士燮が娶らないのなら、曹家の誰かの嫁として連れ帰りたいわね」と思う。
何よりも冷静さを失わない胆力というのは大きい。
何だかんだで“内助の功”というのは男の能力等を左右する重要な要因だからだ。
それを自他の家族を見て、曹操は知っている。
「…威彦様、私に御用との事ですが?」
「ヘャッ!?、いやっ、そのっ、あのっ、え~と…」
曹操達の事は気にはなるが、抑、自分に用が有ると言っていたのは士燮である。
それならば曹操達の事は一先ず後回しにしよう。
そう考えた女性は士燮に用件を訊ねた。
訊ねられた士燮は誰の目にも明らかに慌てていた。
勢いというのは熱が冷めてしまえば衰えるもの。
それも急上昇し、急降下し易く、緩やかさは無い。
だから士燮の様に戸惑う事は当然だと言える。
助けを求める様に視線を泳がせた先で、目が合った曹操の「男なら覚悟を決めなさい」と言外に伝える眼力と威圧感に冷や汗を流し始める。
「此処で逃げれば殺すわよ?」と言われた様な。
そんな錯覚から、背水の陣の心境となる士燮。
救いを求める様に向けた卞晧からは「待たせ過ぎて後悔しても良いなら、逃げれば?」という視線。
捨てられて雨に濡れた仔犬の眼差しの様に見るが、誰一人として手を差し伸べはしない。
本物の仔犬と違って、日和っている男に差し伸べる手を曹操達は持ち合わせてはいなかった。
士燮は覚悟を決め、女性に向き直った。
「……時代は移り代わり、私達は岐路に立っている
民の為、と思ってはいても苦悩する事しか出来無いという無力さを味わうのが現実で…
懐く理想を叶える事は果てしなく不可能に近い…
それでも、私は私らしく、民に寄り添いたい…
………すぅっ……だから、私と共に歩いて欲しい
私には文栄が必要なんだ、私の妻になって欲しい」
士燮は一世一代の告白を遣り遂げて、見詰める。
しかし、茫然としている女性の様子を見ている限り士燮の胸中は達成感よりも不安感が高まる。
曹操達も「おおーっ!」と士燮に拍手を送りたいが結果が出るまでは静観する事にしている状況。
それだけに、「……あれ?……失敗、したのか?」「さ、さあ?…どうなんだろう…」と韓浩と曹洪は視線を交えて不安そうに士燮の姿を見守る。
暫しの沈黙と静寂の後に、まるで止まっていた時が動き出すかの様に、彼女の左目から涙が溢れ伝う。
その光景に目を見開き、慌ててしまいそうになった士燮だが、まだ彼女が何も言わない内に何かを言う様な真似は遣ってはならないと本能的に感じた。
右目からも涙が溢れて、其処で彼女は我に返った。
右手で涙を拭い、深呼吸してから士燮を見詰める。
「…本当に、私で宜しいのですか?」
「っ、ああ、勿論だ、いや、貴女以外には居ない
私が共に歩みたいのは、貴女だけなんだ!」
「…威彦様っ…」
「文栄、私の妻になってくれるか?」
「はいっ、勿論です!」
泣き笑いしながらも士燮の求婚に応えた女性。
その返事を受けて士燮は彼女を抱き締める。
身長差から、物語の男女の様相とは少々異なるが、それでも感動的な場面である事に変わりはない。
拍手を送りたい気持ちを曹操達は抑えて見守る。
「文栄っ、ずっと前から君の事が好きだった…」
「私もです…ずっと、御慕いしていました…」
立場を越え、漸く素直に想いを伝え合い見詰め合う二人の距離は自然と縮まってゆく。
──が、士燮よりも背丈が高い女性は士燮の後ろに控えている曹操達の姿が視界に入ってしまう。
悲しいかな、こんな時に限って身長差が裏目に出て一気に羞恥心が膨れ上がった。
まあ、考え方によっては人前で見せてしまわなくて済んだと捉える事も出来るだろう。
その後、照れ慌てる士燮を揶揄いながら、彼女から自己紹介を受け、曹操達も名乗り返した。
彼女──朱維は、字は文栄で士燮とは幼馴染みで、歳は士燮より一つ下の十七歳。
士燮の祖父の代に朱維の曾祖父が仕えた事に始まり現在も父親と兄が仕えている中堅所の家臣の家柄。
しかし、元々は士燮の祖父に曾祖父や祖父達家族が命を救われた事から忠誠心が高く野心を懐かない。
だからと言って無能・凡庸という事は無く、中々に有能というのは主君側から見れば、こんなにも良い人材は稀だと言える。
改めて自己紹介し、曹操達の素性を知った士燮達の反応は予想通りと言えば予想通りだが。
士燮の驚き振りには引いてしまう程だった。
平伏し、非礼を詫びる士燮に「気にしないで頂戴」という曹操が、聞いていないと思える程に低姿勢な士燮に最終的には曹操がキレた。
その後は朱維が上手く士燮を制御して見せた。
早くも尻に敷かれている様だが、順調という事だ。
蒼梧にて数日滞在し、現行の家臣・兵士達に指導を兼ねた試験を行い、将来性の有る武官を見出だし、組織調練をしている最中に丁度よく領内に侵入して来ていた山賊の一団を撃退。
それが此処数年近隣を荒らし回っていた一番有名で驚異とされていた事も有り、自信が付いた。
同時に士燮に武勲が付いた事で近隣の領民の印象が大きく変わった事は今後に活きてくるだろう。
そんなこんなで士燮の懸念していた賊徒等に対する最低限の備えの基礎を築き、曹操達は旅立った。
滞在中、士燮の母親や朱維の家族からは物凄く感謝されながら、士燮が中々煮え切らなかった事を愚痴られて、背中を押した事に再び感謝されて。
曹操・甘寧から白い目を向けられていた。
「これも縁と言えば縁でしょうけど…
交州という立地を考えると、戦力としては微妙ね」
「別に良いんじゃない?
交州が独立独歩で平定されてるなら十分でしょ?」
「…まあ、そういう意味でなら、確かにね
他の場所と違って侵攻を受けるとすれば揚州からと南部の異民族からでしょうから…
士燮が州牧として治めてくれるなら頼もしいわ」
「それに、太守か都尉なら交州情勢の流れ次第では二~三年で手が届くかな
あの件で、民の支持も集め易くなるだろうしね」
「士燮みたいな典型的な文官肌の若僧が名を得れば妬んだり腹を立てる愚かな輩は居るでしょうから…
フフッ、面白い事になるでしょうね」
「大変だろうけど…朱維さんが居れば大丈夫かな」
道中で何気無い事の様に会話している曹操と卞晧。
漢王朝領十三州の内、最も中央の影響を受け難く、最も中央に影響を与え難い地である交州。
その価値を客観的に見て話している姿は十二歳とは誰も思いはしないだろう。
現に、士燮や朱維達は二人の年齢を聞いて驚愕し、二度三度と訊ね返してしまっていた位だ。
そんな二人の様子を、慣れているとは言え、呆れと士燮への同情から苦笑を浮かべていた。
「……将来的に何処まで行くか計算されてるなんて士燮は考えてないだろうなぁ…」
「…そうだねぇ……と言うか、怖いんだけど?
この二人って何で世間話的な感じで、大陸統一的な話をしてるのかな?」
「………そういう才器だから?」
「うわぁ~……否定出来無い位に納得出来る辺りが真実味が有って怖いわぁ~…」
交州を巡る内に意気投合し、昔からの友人かの様に馴染んでいる韓浩と曹洪の会話。
それを聞いている曹仁は「いや、お前達もな?」と思わず言いたくなってしまうが、飲み込む。
口にしてしまったら、二人は騒ぐだろう。
そうなると卞晧は兎も角、曹操が怒るだろう。
それは曹仁としては避けたい状態だからだ。
甘寧は曹操達の話に耳を傾けながら、「…成る程…其処まで御見通しでしたか、流石です」と感嘆。
自分の世界の中で二人に心酔していた。
蒼梧を発って二週間後、番禺を経由して、北上して行って交州を後にした一行。
州境を越え、揚州へと入っていた。
「──嫌アアァあァぁアアあァアッ!!」
「──このっ!、──ちょっ!?、はっ、放せっ!」
「翔馬っ!?、康栄っ!?、くっ!、邪魔するなっ!!」
悲鳴を上げながら両足を縛り上げる様に絡め取られ逆さ吊りにされる曹洪。
群がってくる幾多の触手の様な蔦に武器が絡まり、動けなくなった所を捕まえられてしまった。
そんな二人を見て救出しようと試みるも、邪魔され思わず苛立ちから叫ぶ曹仁。
「……ねぇ、玲生?
この植物って人間は食べないのよね?」
「んー……俺が知ってるのは食べないんだけど…
これ、大きさが倍位有るし、あんな風に牙を持った口とか無かったんだよね~
基本的には虫しか食べない植物だったから」
「それはそうなんでしょうけど…
洪兄さんが食べられ掛けてるわよ?」
「そうだね、食べられ掛けてるね」
「………え~と…助けないのですか?」
「だって、「手出し無用」って言われてるしね」
「済みませーんっ!、撤回しますからーっ!
だからーっ!、たぁーすぅーけぇーてぇーっ!!」
「玲生ーっ!、謝るからっ!
俺が間違ってたからーっ!、だから助けてっ!
──って、何かジュッ!って言ったっ!
服が溶けてるぅーっ!?」
「──だ、そうよ、玲生?」
「人の注意を聞かないからだからね?」
「「はいっ!、もう二度調子に乗りませんっ!!」」
韓浩と曹洪の心からの謝罪を受けて卞晧が動く。
愛刀を抜く事無く、手刀で蔦を斬り落として進み、韓浩達を飲み込もうとしている本体に肉薄する。
相手は“蛸蘰”という怪植物の亜種。
初めて見る事から「慎重に対処する様に」と言った卞晧の注意を無視した二人が餌にされ掛けた。
流れとしては単純で、卞晧が珍しく御立腹。
曹操は「一度痛い目を見れば判るでしょう」として二人の事は放置、曹仁は巻き込まれていた。
襲い掛かる蔦の嵐を擦り抜ける様にして近付いたら卞晧は本体の根元に対して下段回し蹴りを放つ。
鎌の様に鋭い一撃は韓浩達が掠り傷すら付けられず返り討ちに有った硬度の身体を容易く断ち切る。
断末魔の咆哮を上げて最後の悪足掻きを見せた。
しかし、韓浩達を回収した卞晧は曹仁と共に離脱し曹操達の居る場所まで下がっていた。
苦しみながら手を虚空に伸ばす様な姿を見せながら蛸蘰の亜種は倒れ、そのまま一気に枯れて逝った。
その光景に曹操以外は初めて、この広い世の中には未知の存在が有る事と、その怖ろしさを知った。
尚、その蛸蘰の亜種は卞晧の手により秘薬と成る。