extra #3
「最近さぁ~、やけに多いんだよね~」
食後のコーヒーを飲みながら、ふと思い出したように言う。
「何がですか?」
「ん?パパラッチ。」
爆弾発言をしてくれている、目の前の人は「このコーヒーおいしいね~」などと呑気に感想を言ってくれた。
A deep beat night extra #3
事の発端は、2週間前の深夜に遡る。
「しゃ・・社長!!」
FAXとコピーが一緒になっている複合機の前で、同僚の山口さんが悲鳴を上げながら社長室に向った。
「何??」
深夜と言っても、この会社にはあまり時間軸というものがないためか、それとも控えているリリースのプロモーション日程の調整の為か、まだ人は結構残っていた。
フロアーには小さなどよめきが小波のように広がり、山口さんの悲鳴の元はなんだったのか、囁きあう声が広がっていた。
その答えとは―――――
1枚の画像がやけに荒いモノクロ写真が載った、FAX。
送信元の電話番号を引っ掛けてみたら、あまり評判のよくない、大衆紙のFAXナンバーだった。
社長室からその用紙を持って、めんどくさそうに出てきた彼―もとい、社長はというと・・・・
「へ~・・良く出来た合成写真だね~~。しっかし、画像荒いなぁ~~。もっと撮るならちゃんと撮ってほしいなぁ~」
その発言に、その場にいた全員ががっくり肩を落としたのは言うまでもなく。
内心物凄くドキドキしていたのは私だけなのを悟られなくてよかった、と言う意味合いのため息が上手く混じってくれてよかったと言うのもあるが。
「放っときゃいいでしょー。」
という呑気な答えは、そのまま流れ。
実際に騒がれたのはその大衆紙だけだった。
どのメディアにも相手にされていないというのが浮き彫りになった瞬間でもある。
しかし―――。
それからというものの、結構な数のモノクロ写真、言わば「スッパ抜き写真」が彼の元に届いていたのは知らなかった。
「パパラッチ・・・って。」
「ん~?みんな僕のこと大好きなんだね~~」
いや、それはちょっと違うと思いますけど・・・・。意味合いとか全部含めて・・・。
「でも、そろそろヤバイかもなぁ~~」
やっぱり呑気にコーヒーを飲んでいる。
「と。言いますと・・・?」
「ねぇ?奈緒??」
「はい?」
「そろそろ答え出してみない?」
「何のですか?」
「だーかーらー。」
「結婚・・・のですか?」
「わかってんじゃーん」
わかってはいるけども。
そんな、メディアに促されるかのように結婚を決める芸能人って、今の世の中いないと思うんだけどなぁ・・・
「そうしたらさ~、向こうに出される前にコッチから結婚しまーす宣言できんじゃーん」
「・・・・社長?」
「また社長って言った~」
敢てココは無視。
「それって、戦略として答え出せってことですか?」
「ほぇ?」
「私は嫌ですよ?そんな、取って付けたかのように結婚宣言なんて。」
非常に不愉快という顔をした私に、彼は焦ってる。
「ち、違うよぉ~~!!」
結果。
見事に新聞に載ったとか、載らなかったとか。
え?それはどういった報道かって?
ご想像にお任せしますわ。
コレにて一旦終了。もしかすると番外編としてまた追加して行くかもしれません。