ホラーかな。
軽い気持ちで書いてたら、こんなの。時代を感じるなあ。でも、こんな出オチも文章をダラダラ書き続けるのも鬱憤が溜まる。さっさと吐き出しましょう。
嫌ことは何も見たくないし、何も聞きたくない。それだけを思って生きるようになったのは、たぶん子供の時、何の落ち度もないのに嫌われて生きてきたからなのだろう。自分のしたいことをしようとすれば、必ずそれを否定された。
「私、そんなの嫌よ。」
「僕はそんなのよりはこっちが良い。」
みんなは言葉が強いから、見る間に僕の言葉を奪っていく。だから僕は自分を表現する暇もなく、仕方なくでそいつらの言葉を追認するしかなかったんだ。逆らえばすぐ、仲間外れにされたり無視されたり。思い切って殴りかかって、意見を通せばよかったのだろうかと思わないでもない。でもそれじゃ、野良犬と一緒じゃないか。今にして思えば、人間なんて皆野良犬のようなものだ。今こうしてどうにか社会に出て、一人暮らしをするようになっても、あまり状況は変わらない。押入れ付きの古い安アパート、ここの二階が僕の居場所だ。誰か来るでもない、でも、この静かな木造の集合住宅が、僕の最後の砦なのだ。ここにいれば、周囲の雑音が聞こえない。誰も来ないから静かな生活を邪魔されることも無い。どんなに居留守を決め込もうともやってくる訪問販売員と、放送料金の集金人、を除けば、大家だって部屋をきれいにし、家賃を口座振替にしておけば、五月蠅く言ってくることは無い。日々の金を稼ぐためにアルバイトに勤しまなければならないが、それとても今まで漠然と一般人の皮をかぶってやってきたスキルで、なんとかやってきたのだ。ただ、こうも湿気が酷くて暑いと、参ってしまうというものだ。愚痴の一つも出そうになるが、特に伝える相手もいない。鬱屈だけがたまっていくのが自分でも判る。周りの雑音も聞こえなくなるほどに。邪魔なものは押入れにでも放り込んで、僕は気ままな独り暮らしを続けることを優先していた。そんなある日。
僕は寝苦しさに耐えかねて、水を飲むために台所に立っていた。真夜中。辺りは暗い。壁のスイッチを押して照明をつけようとしたけど、電気がつかない。「しけってんのかな?」
漏電でもしていればそういう事もあるだろうが、それだと焦げ臭い臭いとかしそうなものだ。朝になったら面倒だけど業者にでも連絡して・・・いや、大家に言う方が先かな?どういう契約だったっけ。あんまり人に会いたくないんだよな。部屋の中は何だかじめっとして、それに何か、軋んだような。地震か?でもすぐにそれもおさまって、夜のとばりの中、僕は諦めて、窓からのぼうっとした街灯の明かりを頼りに、台所に行き、コップに注いだ水を飲み干してまた眠りについた。エアコンつけるのもなあ。乾燥すると喉がガラガラになるし、電気代ももったいない。
翌日も朝から暑く、午前中からのバイトも失敗続きで少々めげかけていた。客から浴びせられた、思いやりの欠片もない乾いた言葉。僕の心をその分削っていく。ひたすらに頭を下げて、相手の顔を窺う日々。容赦なくぶつけられる冷たい言葉。確かに僕には愛想の一つも振り撒けない。でもそんな事、関係ないじゃないか。鬱憤だけが溜まっていく。心が重くなる。家に帰りついて、その鬱憤を押入れに押し込む日々。なんか、押入れが締まりにくくなったような。気のせいだろうか。どんどん落ち込んでいくのがわかる。昔の、子供の頃の不安な心持が、今にもなって押し寄せてくる。
「キシッ」
また、何かがきしむ音。そういえばまだ電気屋さんにも大家さんにも相談してないな。電気は・・・あれ、また点かない。それになんだか息苦しいような。何だろう、何かに押しつぶされそうな変なプレッシャー。
「カタカタカタ。」建物がたてる、音。何か重いものがあって、そのせいで辺りが軋んでいるかのような。怖くなって、僕は押入れの中に逃げ込もうとして、あれ、戸が開かない。それどころか、何か押入れ全体が軋んでいるような。ともかく無理やりに戸を開けると、そこには・・・視覚化で来るほどに膨れ上がった乾いた言葉が、水分を含んで膨張し、それがぎっしり詰め込まれていた。それが崩壊の時を迎えようとしていたのだ。いつからだろう。観て見ぬふりをしていたのは。軋む自分の心を守るためにこんな他所から見えないところにその不満を押し込んでいたのは。乾いた心は折からの湿気を吸ってさらに膨張し重くなって、とうとう限界を超え、支えきれなくなっていたのだ。そして・・・和田住み慣れた部屋は、その日、崩壊したんだ。
うん、ギャートルズの世界だ。他人を出せるほど人の事を見てないので、狂言回しがいない。被害は大きそうだなあ。まあ、他人事だ。でもこんな事あったら、そりゃ乾いた文句も言いたくなるもんだ。でも、水分吸うのか?音って。




