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2度目の転生に関する報告書  作者: トール
第三章 領主編

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第81話 ああ、イスタン北山脈峠

私の名前はミネア。ソンダルク子爵領寒村の娘だ。


私は同じ村の少女トーキとユキーと共にイスタンに出稼ぎに行く。

出稼ぎといっても実際は口減らしだ。2年前に同村のねえやが出稼ぎにいった。ねえやは戻っていない。

ねえやがどこに行ったのかわからない。大人たちが、「良くて商家の下働き、悪ければ苦界に身を沈めることになる」と話していたのを聞いてしまった。


冬の旅はつらかった。慣れない馬車に揺られ、宿は村の納屋に泊まれればいいほうで大体が野宿だった。

トーキとユキーはいつも泣いていた。トーキは私の一歳下の12歳。ユキーはまだ10歳。

親と離された挙げ句、この過酷な旅を強いられている。私だって泣きたい。

私たちを運んでくれている馬車のおじさんは、イスタンに着くまでの辛抱だ、イスタンは天国のようなところだ、と言って慰めてくれた。私はその言葉を信じなかった。

信じなかったが、トーキとユキーには同じことを言って慰めた。私はこの娘たちのおねえちゃんとして振る舞わねば。私がこの娘たちを守らなければと思った。


イスファ領に入ると雪をかぶった大きな山脈が見えた。

イスファ北山脈というらしい。馬車のおじさんは、イスタンはあの山脈の向こう側にあると言った。

私は気が遠くなりそうだった。この冬の時期に山脈を、峠を越えることができるのか。


ああ、イスファ北山脈峠。


峠は越えなかった。

国境の長いトンネルを抜けると、雪国---ではなく、イスタンであった。なお、駅長さんはいない。

馬車は大きな建物の前で私たちを降ろすと去って行った。ありがとう、おじさん。

建物の前には20歳くらいの女の人と私と同じくらいの年の女の子が立っていた。

「ミネアちゃん、トーキちゃん、ユキーちゃんだね~。ようこそイスタンへ~。私はミリアム。ここの寮母さんをしているんだよ~」

「ユメ」

「ユメちゃん、ちゃんと自己紹介してよ~」

「や、恥ずかしい」

「しょうがないな~。このお方は、イスファ男爵第三夫人予定者、『氷の聖女』ユメ様にあらせられるぞ~」


はは~、と私は地面に膝をつき、平伏した。トーキとユキーも一緒に平伏。吟遊詩人の人が歌っていた『ドラゴンバスターと三聖女の物語』。その三聖女うちの一人、ユメ様とお会いできるなんて---。

「あら、あら、あら。立って、立って」とミリアムさん、いや、ミリアム様に抱き起こされた。

「ちょっと予想外の反応だったね~。じゃ、ユメちゃん、お願い」

「ん。(クリア)。それじゃ、診察室まで来て」

私たちはユメ様とミリアム様に建物の中に案内される。

「そこに座って」

とある部屋に入ると、ユメ様が椅子に座るように言う。3人で着席。

「(ヒール)ん、3人ともヒールの流れに問題ない。大きな病気はない」

「そう、よかった~」

「あと、ユキーちゃん」

「そうね~。ユキーちゃん、いくつなのかな~」

「12歳です」

「あれ~、本当のことを言わないと、メッだぞ~」

「---10歳」

「よし、よく本当のことを言った。えらいぞ~。お姉さん、褒めてつかわす」

「孤児院?」とユメ様。

「ん~、おねえちゃんたちと離れるのはちょっとかわいそうかな~。しばらくはこっちで暮らすことにしようか~。あのね、ユキーちゃん。12歳にならないと工房で働くことはできないの。だから昼間はミネアちゃん、トーキちゃんとは別行動。孤児院でお勉強とお手伝いをしてね~」

「じゃあ、仕送りはできないの?」

「家族のことを考えているのはえらいぞ~。大丈夫、奨学金を出すようにするから。じゃあ、次はお風呂、その後晩ご飯ね。ユメちゃん、ありがとうね~」

「ん。あ、ちょっと待って。私から3人に言っておきたいことがある」とユメ様。

「トールお兄様---領主様から誘惑される。絶対に誘惑にのってはいけない。不幸になる」

そんなことはあるはずがない、ドラゴンバスタ-の英雄である領主様が私たちなんかを誘惑するわけがない。

「必ず誘惑する。妻になる私が言うのだから間違いない。あの人は女癖が悪い」

「あはは、否定できないかな~。みんな、気をつけてね~」


お風呂に入った。暖かいお湯で体を洗った。湯船に入った。毎日お風呂に入れるなんて、夢のようだ。

服が支給された。ふわふわの毛織物だ。この服があれば寒くない。

というか、この建物、すごく暖かい。オンドルって一体何?

食堂で晩ご飯を食べた。今日の献立はコカトリス肉のハンバーグ。今まで食べたものの中で、一番おいしい。

肉が余っているからいくらでも食べていいよってミリアム様が言っていた。肉が余るってどういうこと?

だけど、一番驚いたのはトイレだ。トイレが臭くないってどういうこと?シャワートイレって一体何なの!?


馬車のおじさん、本当にイスタンは天国みたいだよ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


イスタンに来てから半年がたった。


・4:30 

起床、着替え・洗顔の後、みんなで「らじお体操」とランニング。

体を動かすことが大切なんだって。

・5:30 

朝食

朝からがっつりと食べる。仕事が始まるまでは自由時間。

・6:30

仕事開始

お仕事は羊の毛を糸にすることだ。

私はカード係を卒業して紡績見習いとして、ドラフト作業のお手伝いをしている。

なかなか難しくて上手くいかない。先輩からはゆっくりでいいから丁寧にやって、と言われている。

9:30から15分間の休憩。その後、再び作業に戻る。

・12:00

昼食

イスタンでは、1日三食だ。とてもうれしい。

・12:45

作業再開

・15:45

作業終了

・16:00

授業開始

工房で働く人全員が読み・書き・計算の授業を受けている。

授業の成績が優秀な人は、もっと難しい勉強をして、領主様や聖女様のお仕事のお手伝いをするらしい。みんな真剣に授業を受けている。

あと、魔力をたくさん持った人は、特別に魔術の勉強をしている。

私は少ししか魔力がないので魔術の勉強はしていない。残念。

・18:00

夕食

夕食後は自由時間。大半の人は食堂に残り勉強の自習をしている。

みんな領主様や聖女様のお手伝いをしたいのだ。

それに「トイレの神様」のお話もあるし。

・21:00

消灯

ふかふかの布団だ。掛け布団はコカトリスの羽毛布団。お貴族様でも使っている人はそうはいないんだぞ~、とミリアムお姉様がが言っていた(ミリアム様、と言ったらばお姉様とおよびなさい~、と言われたのだ)。


おやすみなさい。


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