表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
I'll  作者: ままはる
第九章
97/114

97.ラーメン屋にて






「結局、オレとラグエルってどーなったんだ?」


「……」


 アレクシスとの謁見を終えた後、その足でラリィはゼンと昼食を摂りにラーメン屋へと入った。

 先週からフォトは学校へ通い始めた。学校では給食が出るので、ゼンは妹の昼食を心配する必要が無くなったのだ。

 ちなみにリズとウィルはラーメンの気分ではないからと、2人で寮の食堂へ行った。


「つまり……様子見、だな」


「オレがヤク中だから?」


「……もう手は出していないのだろう?」


「逮捕されてからは1回も。でもこーゆーのって、経歴とかが大事ってことだろ?」


 確かにアレクシスは、ラリィに前科があることに難色を示していた。ラリィはその経歴だけを聞くのと、実際に会って会話をした場合のギャップが大きい。もしもラリィを守護剣士として扱った場合、経歴だけが独り歩きすることだろう。


「ラグエルも、まだ完全には信用出来ない」


「何も考えてねーぞ、あいつ。ただの脳筋だし」


「……たった数ヶ月で、判断はできない。国宝にするなら、慎重に決めるべきだろう。……シュイたちも、恐らく守護剣として扱われるまでに、それなりの時間があったはずだ」


 届いたラーメンを啜るゼン。

「お前も、ラグエルも、問題を起こさず王の信頼を得られるまで……現状維持、だな」


「なんかややこしいな。別にオレ、守護剣士じゃなくていいんだけど。ーーここ、味噌ラーメンも美味いな」


「……塩も、美味い」


 暫しズルズルと、並んで麺を啜るふたり。


「フォト、学校どんな感じ?」


「楽しい、らしい」


「学校で友達出来たら、もうオレとも遊んでくれなくなるかな? 遊んでくれるうちに、今度一緒に猫カフェ行こって言っといて」


「気が向いたら、伝えておく」


「気が向いたらかよ」


「……そう言えば、やたらとお前の指の心配をしていたが……?」


「あー、手品……じゃないけど、親指が外れたように見せるアレな。この間フォトにやって見せたんだけど、本気で信じてくれて可愛かったぞ」


「すごく、痛そうだったと……引いていた」


「オレの演技力も捨てたもんじゃねーな」


 そんな他愛の無い会話を繰り返す。

 ラリィはゼンと話すのが楽しくて堪らない。

感情の抑揚もなく、無表情。そんなゼンが時折見せるようになった表情の変化を見つけると、なんだか無性に嬉しくなるのだ。


「……お前は、大丈夫なのか?」


「何が?」


「弥月」


「どーかな。そろそろ何か仕掛けてきそうだよな」


 スープを飲み干し、次は餃子を口に放り込むラリィ。


「うまっ。午後から仕事じゃなかったらビール頼むのに……!」


「……弥月は俺たちには敵意がない。だから怖くはない、か?」


「んー……いやぁ。多分だけど、オレ、死ぬんじゃないかと思ってる」


 ゼンは手を止めた。どういう意味かと尋ねるような目をラリィに向ける。


「ウィルの目の前で、オレを殺そうとするんじゃないかなって。あいつ、ウィルを虐めるのが楽しいらしいし、最終的にはオレたち全員殺すつもりかも」


「有り得なくはない……な」


「だから怖くないことは無いんだけど、ウィルと約束もしたし、簡単に死ぬつもりはねーよ」


「……ソレは、そう言う事か」


 ゼンは目線で、ラリィが帯剣している短剣を指した。魔物の討伐中でもないのに、ラリィが帯剣しているのは珍しい。グリーンヒルに帰ってきてから、休みの日でもこの剣をぶら下げている姿をよく見かけていた。


「まぁ……何があるかわかんねーからな。――おっちゃーん! 餃子1人前追加で!」


 カウンターの奥に声を張り上げながら、ラリィは短剣をゼンに渡した。

 受け取ったゼンは、不思議そうな顔をする。


「これ……?」


「もしもオレが思った通りに死んだらさ、後のことを頼みたいんだ」


「……馬鹿なことを……」


「オレも馬鹿なことだと思うけど、万が一って事もあるし。ウィルを悲しませる……いや、約束を破ったって怒るかもしれねーなぁ。でも、その時はウィルのこともよろしくな」


「……」


「こんな事、ゼンにしか頼めねぇんだよ。あ、セイルやリズには内緒な」


 ゼンは呆れた顔で短剣をラリィに返す。


「……死ぬなよ」


「オレだってまだ死にたくねーよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ