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I'll  作者: ままはる
第五章
46/114

46.首

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎


 首が2つ、置いてあった。


 血溜まりの中に、綺麗に切り取られた首から上の頭が2つ。一見して中年の男女だとわかるそれらは、剣士隊の男子寮の前に白昼堂々と置かれていた。


 誰かが通報に走っている間にも、否応無く人は集まってくる。

悲鳴を上げる者、気分不良を起こす者、興味深そうに見物する者――そんな人々の中に、ゼンもいた。

ゼンはその生首を、無表情に見つめている。


「うゎ……誰の首だよ、あれ……」


 誰かの呟き。

 ゼンはそれに、小さな声で応えた。


「俺の両親だ」


⭐︎


 ――1日前。

 ウィルは不機嫌を隠す様子も無く、寮の部屋へと帰って来た。

 乱暴にドアを閉め、悪態をつきながらソファに倒れ込むように座る。


「おかえりー」


 出迎えるラリィの声と、ウィルの足元に擦り寄るネコ。

 以前ウィルが拾ってきたこのネコ。寮はペット禁止であったが、ウィルが『両親と離れて寂しい……』と泣き落としたことで、管理人はあっさりと陥落した。長期間部屋を空ける時は、管理人室で面倒を見てもらっている。ちなみにウィルが名付けた名前は『ネコ』である。


「どうだった? なんか進展あったか?」


「全っ然! リズ先輩の件から3ヶ月も経ってるのに、まだ何も進んで無いって! エンマとかゆー白ずくめも、誰かわかんないってさ」


 ネコを抱き上げながら、憮然として言い放つウィル。

 弥月の件で部隊長のライトの所へ行っていたのだが、依然弥月の調査は進んでいないという話だった。


 当初はウィルの両親を殺害した容疑で警察の管轄であったが、ディアス侯爵邸での1件で魔物が絡んできた為、警察が捜査に難色を示し出したのである。


 魔物は剣士隊の領域。しかし剣士隊は魔物を狩ることが仕事であり、魔物を操る人間を探し出すなど、前例が無い。


 しかもディアス侯爵邸は第1部隊の管轄地域。ロックウェル・バレーや樹海は第3部隊の管轄地域。どちらが主導して捜査をするのか、それもなかなか決まらない。


「役に立たねぇ大人ばっか!」


「けど実際、どう調べたらいいかもわかんねーよなぁ。急に現れて消えちゃうんだもん、捕まえようがなくね?」


「そうですけど!」


 捕まえて、何故両親が殺されなければならなかったのか、この指輪は何なのか、どうしてこれが欲しいのか、ちゃんと理由が知りたい。全部知った上で、殺してやりたいと思う。殺してやりたいが、司法で公正に裁くのならば、それに従うつもりだ。それなのに何も進まないことに、苛立ちは募る一方である。


「……で、ラリィ先輩は何をやってるんですか?」


「何って、荷造りだよ」


 大きなリュックに、トランプ、大量のナイフ、玩具の銃、シルクハット、ステッキ……等々詰めていくラリィを、ウィルは訝しげに見た。


「休みの日にそんなもの持ってどこ行くんですか」


「手品しよーかな、って」


「はぁ?」


 ラリィは私物は玩具のような物が多い。

 何に使うのかわからない物ばかりだが、手品の道具も多く持っている。ウィルも手品を見せて貰ったことがあるが、ラリィは手先が器用でプロ並みに上手い。


「マジシャンの副業でも始めたんですか?」


 ウィルは足元に転がっていた玩具のナイフを手に取って、ネコに刺してみた。刃先が柄の中に引っ込むタイプの玩具であるが、本物と見間違うほどよく出来ている。


「遊びに行くの。ウィルも行くか?」


「どこ行くんですか?」


「それは行ってからのお楽しみ。今日はリズも一緒に行くってさ」


「行きます」


 即答するウィル。


「お前……ほんと、リズの事好きだな」


「美人が嫌いな男なんていますか?」


「そりゃそうだけど」


 ラリィはリュックを背負い、最後に棚に置いてあったぬいぐるみを手に取った。

 頭に赤いリボン、ピンクのドレスを着た少女のぬいぐるみだが、ひどく汚れている。


「それも持って行くんですか?」


「オレの宝物、リディアちゃん。今日は連れてってやる日なの」


 気持ちの悪い趣味だと思ったが、口にするのはやめておいた。以前、汚いからせめて洗えばどうかと言ったら、ラリィは不機嫌になった。それ以来、このぬいぐるみには極力近付かないようにしている。


 ――寮を出て道なりに進んで行くと、リズが待っていた。


「あれ? ウィルも一緒に行くの?」


 意外そうに目を瞬かせたリズは、珍しく髪をアレンジして結えている。


「リズ先輩、なんか今日可愛いですね」


「そう……かな……?」


 社交界以来、女剣士たちとの関係に変化がみられた。休みの日に一緒に服を買いに行ったり、髪をアレンジさせて欲しいと部屋を訪ねて来たり。今まで友達付き合いなどしたことがないリズは、戸惑いながらもされるがまま流され、今日のヘアスタイルもアルマが仕上げたのである。


「……まさかとは思いますけど、今日ってラリィ先輩とデートとかじゃないですよね?」


「馬鹿言わないで。冗談じゃないわ」


 呆れた顔で、リズは馬車の乗り場を目指して歩き出す。


「あんた、ウィルに行き先言ってないの?」


「暇そうだったし、取り敢えず連れて行こうかなって。ガキ共も喜ぶだろうしさ」


「喜ぶでしょうけど……」

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