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I'll  作者: ままはる
第二章
22/46

洞窟

ウィルたちがオーガを倒した場所からもう暫く獣道を進んで行くと、山肌にポッカリと空いた洞窟を発見した。


「真っ暗ですね」


中を覗いたウィルの声が反響している。まだまだ奥へ広がっていそうである。


「お宝とか眠ってそうじゃね?」


「宝ならいいけど、魔物がうじゃうじゃいるかもね」


背負っていたナップサックから、ランタンを取り出すリズ。

明かりを点けて中を照らしてみる。

横幅は大人が五人横に並んで歩ける程広いが、天井は二メートル程度と、それほど高くない。


「私とラリィで見てくるから、ウィルはここで待機しておいて」


万が一魔物がいた場合、ウィルの守護剣では戦えない。


「了解でーす」


ラリィを連れて洞窟の中へと入って行くリズを見送ると、ウィルは手近にあった岩に腰掛けた。

木々の隙間から覗く空は青く、気候も穏やかで気持ちが良い。

ほとんど寝ていないウィルに、一気に睡魔が襲ってきた。


(ちょっと目を閉じるだけ……)


落ちてくる瞼の重さに耐えきれず、ウィルは少しだけ目を閉じた。


ーーそれが十秒だったのか、十分だったのか、ウィルにはわからない。


「見つけた」


「っ!?」


突然すぐ耳の横で聞こえた声に、ウィルは咄嗟に目を開いた。


「誰……あっ!」


ウィルの目の前に立っていたのは、知らない男だった。

黒い服に黒い髪、異様に印象に残る金色の目ーー

その男の手に、見慣れたネックレスが握られている。

ウィルは慌てて自分の首元を探した。


「それ、俺のだろ! 返せよ!」


ウィルがいつも身に付けている、銀の指輪を鎖に通したネックレスだ。

男は口元に薄く笑みを浮かべた。


「違うよ、僕のだ」


「はぁ? 意味わかんねぇ!」


ウィルは男の手からネックレスを奪い返す。

男は笑みを浮かべたまま、微動だにしない。


「なんなんだよ、気色悪ぃ奴だな。この辺り、今は立ち入り禁止だ。魔物が出るぞ」


「魔物……」


男は洞窟に視線を向けた。


「魔物じゃないよ。ただの失敗作だ」


「あ?」


意味がわからないーー問いただそうとした時、洞窟の奥の方でラリィの声が聞こえた気がした。


「おい、お前! この洞窟が何なのか知って……」


「目が母親によく似ているね」


「!?」


反射的にウィルは男と距離を取り、手の中に守護剣を出現させた。

男はチラリと守護剣を見る。


「それ、君が持ってるんだ?」


「……俺の母親を知ってるのか……?」


「どうしようか。面白くなってきちゃった」


「答えろよ! 俺の親を知ってるのか!?」


ウィルの中で、何かが叫んでいる。

全身が、本能がーーこの男は危険だと報せるように、嫌な汗が噴き出す。

守護剣を、男に向けて構えた。


「ははっ。そうやってると、父親にそっくりだ」


男は嗤う。


「ーーすぐに死んだけどね」


「てめぇっ!!」


一瞬も躊躇することなく、ウィルは剣を振り下ろした。

だが、何の手応えもない。


「ほら、早くあっちの援護をしてあげないと。仲間も死んじゃうよ?」


「っ!」


ウィルの背後から声がした。

いつの間に後ろに回ったのか、全く見えなかった。

洞窟の中のラリィの悲鳴が、こちらに近付いてくる。


「その指輪、大切にしてね。もう少し君に預けてあげる」


「お前……お前が殺したのか!? 俺の親……っ! お前が……!」


「ウィル!! 避けて!」


リズの声と同時に、洞窟の奥からリズとラリィが転がるように出て来た。続いて燃え盛る炎が二人を追って現れる。


「っ!?」


「熱っ! あっっつー!!」


「魔物! すぐに出てくるから斬って!」


「え、あ、でも……」


ウィルは男の姿を探した。

だが。


(いない……逃げやがった!)


「くそっ! なんなんだよ!」


ウィルは剣を構え、洞窟の方に意識を移す。

まるで火炎放射器を最大火力で噴射しているような、凄まじい炎。その炎の出所はーー鬼火。

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