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神証科学部門:監視対象079インタビュー記録 前半

 およそ10代前半と思しき、真っ白な長髪と青い瞳を持つ、どことなく神秘的かつ野生的で、また全体的に黒っぽい衣装を纏った少女、というか幼女。

 八森博士が変なやらかしをしたせいで、代わりにこの子のインタビューを担当する事になった人物、それがこの私、神楽坂 七見(かぐらざか ななみ)である。

 あれこれあって、私はこの秘匿機関に所属して、そして今、私は神証科学部門とかいうよくわからない部門の配属される事になってしまった。

 そして今、本来であれば2年以上はここで働いてきた人じゃないと出来ないような仕事を任されてしまった。

 ここの職場はなんて人手不足なんだ!

 そう思いながら目の前の幼女に向き直る。


「見るに、貴女はまだここでの経験や知識に乏しい新人職員といったところだね。てっきり八森博士が来ると思っていたのだが、何かやらかしたのか?」


 目の前は幼女は床に固定された合金製の椅子に何重にも縛られ、固定されているにも関わらず、全く同様する様子なく、淡々と話す。


「えっと、その八森博士とはお知り合いなんですか?」

「まあね、私を罠にかけて捕らえた張本人だからね、嫌でも忘れはしないよ。」


 目の前いるのは監視対象とはいえ、明らかに年下の幼女だというのに、私は思わず敬語を使ってしまった。

 というより、思わず敬語を使ってしまいたくなる圧のようなものがある。


「おそらく、君はまだここの事も、私たちの事も詳しく知らないだろう。

 折角だし、君に色々教えてあげよう」


 そう言って、彼女は秘匿機関が対峙する“それ”について語り始めた。


「貴女は、神様と聞いてどんな存在を思い浮かべる?」

「えっと… 八百万の神とか、世界とか人間を作った人とかですかね?」

「いい回答だね。まさにそれは全て神様という括りには入る。

 しかし、ひとえに神と言っても色々な種類がある。」

「種類… ですか?」

「そうだ。まず貴女がいう八百万の神の事だが、これらは全て“神霊”に区分される。

 神霊は人々の信仰によって成り立つ神だ。

 多くの人々に強く信じられればその分強くなるし、皆から忘れられれば、自然と姿を消す、それが神霊だ。

 そして人類を創造した神。

 私はまだ実際に会った事はないが、恐らくまだ、この世界で生き残っているであろう、古の時代に地球に飛来した宇宙人の事だ。」


 私は驚いた。

 なんと、神様について語り出したかと思えば唐突に宇宙人の話を持ち出したのだから。

 とはいえ、私は神証科学部門に所属しているにも関わらず、全く神様に関する知見がないせいで、この幼女の意見に何も口出し出来ない。


「古の時代に超常的な力を持った奴らは、どういう経緯かはわからないが、地球に降り立った。

 そして、現地にいた猿の遺伝子を書き換え、自分たちの部下としてこき使える人間という生物を生み出した。

 奴らは結局考えの違いなどで対立し、そのほとんどが争いの果てに死滅したが、おそらくまだ生き残りがいて、この世界の何処かに息を潜めている。

 その、奴らこそが真神(イニシャル)だ。」


 真神(イニシャル)、そういえば研究室にそんなような事について書かれた論文があったような気がすると私は思った。

 今度読んでみよう。


「そして、その両方に当てまらない神。

貴女が所属する部門とも関連深い、それどころかこの部門が作られた目的ともいうべき神がいる。」

「というと…?」


 目の前の幼女は少し不気味な笑みを浮かべて語り始める。


擬神(デウスエクスマキナ)、つまり人間が人間の手で、あらゆる科学の超常の推を結集して創り出した、この世界で最も信じるにたる、最強の神さ。

 そして、君たちが財団と手を組んで創った存在でもある。」

擬神(デウスエクスマキナ)? そんなの聞いた事ないです。それにどうして私にこんな事を?」

「おそらくだが、貴女たちの最重要目的は“影蒐め”を捕縛する事だ。そしてこの影蒐めと擬神(デウスエクスマキナ)は深い関係がある。」


 影蒐め、それはここに配属されたばかりの私でも知っている。

 神証科学部門に限らず、秘匿機関全体が躍起になって創作している異常実体の事だ。

 確かすでに幾つもの機動部隊が派遣されていて、その全てが悉く返り討ちにされているらしい。

 でも、今回の私の目的はそれじゃない。


「影蒐めもそうなんですけど、今回私が聞きたいのはそれじゃなくて、今、巷で流行ってる都市伝説、“自殺代理人”についてですよ!」


 私は肌にまとわりつく圧迫感を振り払うように声を振り絞った。


「ああ、それについてはちゃんと話すよ。

 それより今はちゃんと君の立場をわかってもらいたくてね。」

「それってどういう?」


 そう私が言った直後、地面におよそサッカーボールと同じくらいの大きさの何かが落ちた。

 それがこのインタビューに同席していた警備員の頭部だと気づいた時には地面の影から伸びる触手の先端に着いた刃物の先端が、自身の首筋を突き察している事に気づく。


「悲鳴をあげないのは、さすがここに配属されただけあるって感じだね、こういう時の対処法はとてもしっかりしているようだ。」

「あなたは、もしかして…」

「そうだ、私がその“影蒐め”だ。」

 

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