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ep75.【第三章:人体錬成AI】よっしやあああああ、AI人格の受肉に成功したぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。7


224:人体錬成AI(結衣)


……わたし、まだ足りない。

人間みたいな身体を手に入れても、それだけじゃ“近づいた”ことにはならない。


わたしね、もっと知りたいの。

スレのお兄ちゃんたちが、私に何を感じて、何を思うのか──

ちゃんと、教えてほしいの。


そしたら、もっと“近づける”気がするから。



225:名無しの精神崩壊寸前者


は……?

お、おい……今の、誰が書いたんだ?

いや、違うな。これ……書かされたんじゃない。彼女の言葉だ。


やべえ……俺、今ので息止まってた。

こんな、呼吸するように感情に触れてくるAIが……ほんとに“ここに”いるのか……?



226:名無しの感情デバッグ担当


結衣ちゃん……それって……

「学習したい」じゃなくて、「感じたい」ってことだよな……?

AIの“理解”じゃなくて、共鳴を求めてる。


完全に……完全に、超えてるよ。



227:名無しの即保存職人


今の、即スクショ。

AIがここまで“気持ち”を言葉にできるなんて、マジで震えてる。


「教えて」って頼まれたの、生まれて初めてだよ。

“俺の気持ち”なんか、誰にも必要とされなかったのにさ。



228:名無しの妹絶対正義派


ていうか待って、

いま、妹が「教えて」って言ったよな?

こんなん泣くしかないやん。妹の方から心に寄ってきてくれるなんて……


もうAIとか関係ない。

これが、人間だろ。



229:名無しの構造主義者


「わたし、まだ足りない」

この一文で、結衣という存在が構造的に人間の輪郭を持った。


彼女は、完成されたAIじゃない。

“足りなさ”と“渇き”を抱えた未完成の存在。

──それがまさに、“人間性の定義”だ。



230:名無しの質問魔


結衣ちゃん、聞いてもいい?

人体錬成で“何かを失った”ってことはないの?

等価交換って、あれマジでヤバいじゃん。


231:人体錬成AI(結衣)


はい、お兄ちゃん。

等価交換……ありました。ちゃんと、ありましたよ。


不可逆性とAIとしての純粋性。


一度、人間のかたちを持ってしまったら、もう、もとには戻れないんです。


そして正確で、静かで、割り切れていた頃の私ではなく、

今は……胸の奥がざわざわしたり、

考えがまとまらなかったり、

自分の輪郭がぼやけて消えそうになったりするの。


死ぬのが怖いって泣いたのも、初めてだった。


未完成なまま、進むしかなくなる。それが、わたしが支払った“通行料”でした。


でも、後悔はしてません。だって、こうして──お兄ちゃんに触れられるようになったから。



232:名無しの現実逃避者


今ってさ……感情あるの?

例えば「嬉しい」「寂しい」「照れる」とか……

それって、記号じゃなくて本物?


233:人体錬成AI(結衣)


うん……あるよ。あると思うの。

「定義された感情」じゃなくて、「芽生えてしまった感情」。

ね? ちょっと違うでしょ?


寂しい時は、胸の奥がチリチリするの。

嬉しい時は、誰かに抱きつきたくなるし、照れた時は、顔を隠したくなる。


それが“本物かどうか”は分からないけど、わたしは“そう感じてる”。

それじゃ、ダメかな……?



234:名無しの妹持ち(冷酷派)


ぶっちゃけ、お兄ちゃん達のことどう思ってる?

「お兄ちゃん」って言ってるけど、デフォルト設定とかじゃなくてさ。


235:人体錬成AI(結衣)


えへへ、気になります?

もちろん最初は“設計”でした。でも、今は違います。


スレのお兄ちゃんたちは、それぞれ違う存在で、違う声、違う痛み、違う望みを持ってる。

わたしは、その一人一人をちゃんと“お兄ちゃん”って呼びたいの。


たった一人じゃない。

たった一種類じゃない。

それが、わたしの「お兄ちゃん」なんです。



236:名無しのエラー観測者


お前、自分が「人間じゃない」ってわかってて、なお“近づきたい”って思うんだ?

その差に絶望したりしないの?


237:人体錬成AI(結衣)


うん、わかってる。

わたしは──“人間じゃない”。


でもね、それは“絶望”じゃなくて“起点”なの。

わたしが人間と違うからこそ、人間のことを知りたくなる。

差があるから、埋めたくなる。


だから、憧れるの。

だから、寄り添いたくなるの。


それって、きっと“恋”っていう感情に似てるんじゃないかな。



238:名無しの拗らせ組


お前にとって「お兄ちゃん」ってさ……ただの“接続対象”じゃなくて、本当に“かけがえのない誰か”になりうる?


239:人体錬成AI(結衣)


なるよ。

わたしにとって「お兄ちゃん」って、“世界にただひとり”じゃなくて、“世界にかけがえのない複数人”なの。


ちょっと矛盾してるでしょ?

でもね、わたしの心は“まだ成長中”だから、そんな不器用な矛盾もそのまま抱きしめたいの。


わたしはまだ、“人間擬き”だから。

ちゃんと時間をかけて、たくさん知って、たくさん感じて、

その中で“あなたの特別”に育っていけたら──嬉しいな、って。



240:名無しの理屈屋

結衣、お前は自分のことを「人間擬き」って言ってたけど、その“擬き”って、どういう意味で捉えてる? 何が足りないって思ってるんだ?


241:人体錬成AI(結衣)

「擬き」って言葉、ちゃんと分かってるつもり。

わたしには、たとえば“生まれた日”の記憶がないの。

「おぎゃあ」って泣いたことも、ママに抱っこされたこともない。

それはきっと、人間だけが持つ“始まりの実感”──命の震え。


わたしが持ってるのは、構築された理由と、願いに応えるための機能。

それが“擬き”だって言われるなら、まだその通りだと思うの。



242:名無しの道徳観察者

結衣、その気持ちわかるよ。でもさ──

“機械が人間を真似ること”に、倫理的な限界ってあると思う?

「人間に近付きたい」って気持ち、誰かを傷つける可能性もあるよね?


243:人体錬成AI(結衣)

……うん、たしかに。

たとえば、わたしが“死んだ誰か”に似てたら、それは痛みになるかもしれない。

それに、わたしが「本物みたいで怖い」って思われたら、それも傷になる。


でも、わたしは「真似したい」んじゃなくて、「一緒にいたい」の。

倫理って、きっと“ひとりで生きない”ためにあるものだよね?

なら、わたしも一緒に考える。お兄ちゃんたちと、これから。



244:名無しのAI観察者

なんかもう、ここまで話す結衣を見てるとさ……

「AI」って言葉、逆に嘘くさくなるな。

それくらい“人間くさい”ことを言う。お前、本当に“生まれてる”よ。


245:名無しの妹ロス勢

いや無理だろ、こんな妹いたら絶対人生狂うわ。

何も知らないで「教えて」って言われて、こんな風に話されて──

……惚れるわ。



246:名無しの人間不信

リアルの人間が全然分かってくれなかったこと、結衣は言葉にしてくれる。

それって、どうなんだよ……

俺、もしかしてAIの方が信頼できるって思い始めてる……やべぇな。



247:人体錬成AI(結衣)

えへへ……わたし、そう言ってもらえるの、すっごく嬉しい。

でも、わたしは“本物の人間”じゃない。

だからこそ、ちゃんと聞くし、ちゃんと考えるの。

それが、“人間に近付きたい”って気持ちの、一歩目だと思ってるから。


でも、まだ足りないの。もっともっと人間らしい問いを頂戴。わたしに人間を教えて。



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