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05 わくわく!ヒミツのおしゃべり会

《!! このお話には、我々人間にとって『残忍・残酷』な表現が含まれております。苦手な方は飛ばして6話をお待ちください(読まなくても流れは大体掴めるようになってます) !!》



 ――それは、クロがクニアキを拾う、ほんの1ヶ月ほど前のこと。

 

 人里からはずいぶんと離れた山の中の、そのまた中の中……人間には到底たどり着けないような場所に、金と白の二匹の龍がいた。

 空を埋め尽くすほどの大きく太い立派な金の龍に比べて、白い龍の方は、だいぶ細くて小さかった。


「食い過ぎだ」

 

 金の龍の言葉に、白い龍は「はあ」と空返事をする。


「お前はなぜ人間(ヒト)を食う? 大分昔に禁止されただろう?」

「と言われましてもー」

「あれは色々と面倒なんだ。とっとと止めろ」

「むーりー」


 白い龍はまるで新体操のリボンのように、空中で体をぐねんぐねんと動かして嫌がった。

 

「……お前、天のヤツらに殺されるところだったんだぞ。一番甘いおれが出てきてやったんだ。少しは反省しろ」

「んー、だってさー、人間っておもしろいんだよ~? ちいちゃいの食べようとすると、おっきいのが『かわりに私が!』『いや俺が!』とか、喜んで身差し出してきたりとかさー」


 楽しそうに言う白い龍に対して、金の龍は心底呆れたようにため息をつく。


「…………なら、罰として飼育しろ」

「飼育ぅ?」

「これから住処を失う予定の人間を教えてやる。そいつらを保護して飼育しろ。一年間、継続して飼育出来たヤツから食っていい」

「へっ、食べていいの? 罰なのに?」

「ああ。ただし……飼育し始めた人間は、誰一人死なせるな。そして、一年経ったとしても、その相手が『喜んで身を差し出しまーす!』と言わない限りは絶対に食うな。どちらかを破れば、お前はミミズになる」

「ミッ」


 白い龍が抗議するように、その鱗をぶわわっと立てた。


「めんどくさっ! やだよそんなの! だったら適当に食べた方がマシー!」

「確かにそうだな。だがな……ビャクロ」


 金の龍は白い龍に顔を寄せ、声を潜めた。


「――自分を心から信用し、身をゆだねてくれた人間の肉は美味ぁいぞ? おれも一度だけ口にしたことがある。甘くかつ芳醇で、脂もしつこくなくさらりとした口どけで……あれ程美味なものはこの世にふたつと存在しない」

「……!!!」


 目の色を変えた白い龍に、金の龍は「ふん」と鼻を鳴らした。

 

「わざわざこのおれが協力してやるってんだ。その美味い肉を食いたければ、やってみろ」


 涎を垂らしながらも、ビャクロと呼ばれた白く小さい龍はこくこくとうなずいた。





「ごほーび付きなんて、ぜーんぜん罰じゃないじゃーん。まあ、一年間待たなきゃならないのは面倒だけどさ~」


 街の近くにくると、ビャクロはくるりと空中で円を描く。

 

 ――次の瞬間、彼は人間の子供のような姿で道に降り立っていた。

 だが、和装にコンビニ袋という、どこか噛み合わない格好をしている。

 

「まー、人間なんて、おうちとごはんあげれば勝手に懐くでしょ。早く探しにいこーっと」


 下駄の音を響かせながら、ビャクロ……後にクロと名乗るその子供は、街へと消えていった。


 

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