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5.不確定要素だらけの探索。







「アシュト、今日はよろしく頼むよ」

「こちらこそ!」

「しかし、残念だったね。昨日いた彼女は、体調不良かい?」

「あー……飲み過ぎたとか、なんとか?」



 ――翌日、ルキウスと合流してダンジョンへ向かう。

 だけど、そこにベルの姿はなかった。



 今朝のこと。

 少女はやけにスッキリした表情、真っすぐとした視線で言ったのだ。



『あー、頭痛いわー、飲み過ぎたわー』

『どう見ても普通だし、棒読みですが』

『頭痛いわー、割れてしまいそうだわー』

『………………』



 そんなわけで本日、ベルは欠席。

 アヴィロスは持ってきたけど、先ほどから一言も口にしない。ただルキウスとの合流前に、このような助言だけはしてくれた。



『あのルキウス、って魔法使いは何か隠してるぜ』――と。



 しかし『何か』と言われても、それだけではどうしようもない。

 そんな感じで、僕は改めてルキウスを観察したが――。



「どうしたんだい、アシュト?」

「あ、いや……なんでもないよ」



 彼はきょとんとした表情を浮かべて、こちらを見返すのだった。

 その口調やら何やらに、おかしなところはない。少なくとも僕にはそう映るのだが、彼女たちはいったいどのような違和感を抱いたのか。

 しばし考えるが、答えは結局のところ出てこなかった。



「それじゃあ、行こうか!」

「……うん、そうだね」



 とはいえ、ダンジョンに入れば命がけの戦いだ。

 こんな雑念は払っていかなければ、大惨事となってしまう。僕は一つ深呼吸をしてから、ルキウスに頷き返して一歩を踏み出したのだった。







「……あの魔法使い、嫌な匂いがした」



 一方その頃、宿に残ったベル。

 彼女はベッドに腰かけて、難しい表情を浮かべていた。

 考えているのは言わずもがな昨夜、唐突に姿を現した魔法使いの青年について。嫌な匂いと少女は表現したが、おそらくそれは悪魔としての勘、というものだろう。



「相手がアシュトだけなら、下手なことはしてこないはず。アヴィロスはさすがに、この状況で口を挟むほど馬鹿じゃない。だったら、あとは――」



 思考を巡らせて、それを口に出して確認する。

 そして一つ息をついてから、



「アシュトの身に危険があったら、すぐに行動できるようにしないとね」



 窓際に立って、静かに目を細めるのだった。




 彼女の抱いている『嫌な予感』というものが、いかように形になるのか。

 何一つとして、間違いないといえるものは存在していない。




 ベルという圧倒的戦力を欠いた中。

 不確定要素の多いダンジョン探索が、始まろうとしていた。




 


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