第2話
家の前はさっきからは考えられないほどの静寂に包まれた。ここに残っているのは魔物らしき少女と俺だけ。
少女はきょとんとした目でこちらを真っ直ぐに見ている。
「大丈夫か?ところどころケガをしてるみたいだが」
「だ、大丈夫っ!!」
少女は俺の声に少し遅れて反応し、飛び跳ねたように答えた。さっきまで何が起きていたのかわからなかったのだろうか、ぼーっとしていたようだった。
「あまり動かない方がいい。今日はうちに泊まっていけ」
「‥‥‥え?私、人間から殺される生き物だよ?なんで助けてくれるの?」
「あまり種族の因縁とかは興味ないからな。」
「じゃ、行くぞ。」
俺は少女を抱き抱える。驚いたのかキャッと小さな声を出す。そのまま散らかってるリビングを通り過ぎ、 2階の階段を登り始める。
「すまないが、リビングが散らかってしまっている。俺の部屋で我慢してほしい。」
リビングは便利屋の仕事道具や依頼報酬の領収書やらが机から落ちている。仕事柄、紙をよく使うから仕方ない部分もあるのだが掃除すべきとは思っている。
そんなこんなで部屋につき、少女をベッドに静かに座らす。ベッドの下にある薬箱を取り出し、包帯を細い足にまきつける。
「キツくないか?」
「うん‥‥‥」
少女の途切れるような声を耳に流しながら俺は無言で手を動かす。少女の目はキョロキョロと動いていて、まだ現状をよく理解していないようだ。
「別に緊張しなくてもいい。君を売りつけるとかあうゆうこともしない。」
「あ‥‥あうゆうことって‥‥!」
薄い紫の肌がルビーのように真っ赤に染まり、少女は両手で両頬を挟み込む。これで緊張がほぐれたらいいんだがな。