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「便利屋」

みなさんこんにちは。今回が初めての投稿ということで少しドキドキしていますw

皆さん、ぜひ読んでくださったのなら感想をお願いします。

みなさんからたくさんのアイディアをもらっていい作品を作っていきたいです。

これからYバックスをよろしくお願いします。


 この世界には1つだけ『スーパーヒーロー』と呼ばれた仕事が存在している。


それは魔物から世界を救う勇者でもなく、国を命をかけて守る聖騎士でもなく、いつも野菜のお裾分けをしてくれる近所のおばあちゃんでもない。


依頼を受けたら全て遂行する職業。それは‥‥‥‥



          『便利屋』


異世界出身、異世界育ち、住所異世界の俺、セルージはこの世界に存在するただ1人の便利屋である。


そして今、俺は働いている。今日の仕事は‥‥‥


「おい、セルージ!ちゃんと聞いてるのかよぉ」


「当たり前だろ?俺は仕事としてお前の話を聞いてやってるんだ。聞いてなかったら大問題だろ。」


「ま、まあそれもそうか。ははは」


そういって依頼主の男は今にも泡が溢れ出しそうでキンキンなビールが入ったグラスを唇に近づけ、ゴクゴクとのどに流し込む。


そして男は呼吸をするようにまた話し始める。


「それでおとといだか昨日だか、なんか子供のヴァンパイアを見たってやつがいてよぉ。ヒックッ。それに、血を吸われたやつも居たらしいぜぇ。ヒックッ。ほんとの話だったら騎士団が来るかもなぁ。」


酔っ払いはじめた依頼主の男の世間話にすげえとかやべえとかリアクションをし、時間がただ過ぎていくのを待つ。


便利屋といっても壮大な仕事ばかりしているわけではない。なんなら迷子探しを手伝ってほしいとか、家に住み着いてるミミズーとかいう虫を退治してほしいとか、そういう小さな仕事の方が圧倒的に多い。


今日はこのギルドと併設されている食事スペースのカウンター席で依頼主の世間話に3時間付き合うこと。

これで金をもらえるのだから楽な仕事だ。


「そろそろ3時間だ。延長するか?わかってると思うが延長料金は1時間あたり30レボックだぞ」


「うぇ?!もうそんな時間かよぉ。あと10分だけ。サービス頼む!な?」


「だめだ。」


「そこをなんとか頼むよぉ。10分だけだってぇ。」


「俺が金と時間、依頼をなんでも受けることはきっちり守るで有名なの知ってるだろ?サービスはしない。延長するなら金をだせ。」


俺は圧をかけるように低く静かな声をだし、少し残った生暖かいハーブティーを飲み干す。


すると男はわかったと観念し、2杯のビールと3時間の金額、合計106レボックを机にバンッと強めに叩きつけ、またいつかお前の時間を奪ってやるからなと言い残して走り去っていった。


そしてハーブティー代とビール代の合計22レボックをギルドの受付嬢に渡す。


これで今日の仕事は終わりだ。現在時刻は午後5時過ぎ。会計所の横にある大きな窓からは外は日が沈んできていて、あたりには黒い靄がかかっていることがわかる。

そろそろ街灯が街を照らし、仕事終えた農父やらいろんな店の店主やらが食事を求めて街中に集まってくるだろう。


「ありがとうございましたー。」


明るい受付嬢の声を背に俺はカランカランと音がなる扉を開け、外に出た。

夕方にしか存在しないこの涼しい空気を体に取り入れる。夕方の空気は朝と比べて澄んでいて、昼よりも涼しい。

俺の理想の空気と言ってもいいだろう。


街の中は窓から見た時よりも賑やかさがよりいっそうましてきていて、特徴的な緑の帽子をつけた商人達が声を張り上げている。中には声だけでなく大きな鐘をもって鳴らして客寄せをしている者や、人形劇を用いて興味を惹きつけている者もいる。

そのような特徴的な商人には磁石に引きつけられるように人々が集まってくる。


少し街中を徘徊しながら家への道を進み、街灯のない真っ暗な小さな路地にはいると、地響きが鳴り響きそうなほどの歓声が聞こえた。俺は思わず両手で耳を塞ぐ。歓声はここから北西方面からだ。


「どうやら俺の家の方らしい。」


と、いうことで俺は路地をでて、家へ通ずるレンガが敷き詰められた大通りを早歩きで進んでいく。


5分くらい歩いただろうか、俺は歓声の出場所であろう集まりを見つけた。その集団は200人ほどが集まっていて、不定期に大きな歓声をあげている。

大きな歓声を聞きつけた人々が集まってどんどん巨大な塊になっていく。

それに、

「ここ、俺の家の前じゃねえか。」


俺の声に気づいたのか集団の後ろの数人の男がゆっくり振り向き、そのうちの1人が俺にニヤリとした顔で手招きしてくる。


「セルージ、セルージ。こっち来いよ。めちゃくちゃ面白いことやってるぜ。」


「面白いことってなんだよ。できれば俺の家の前でやらないでほしいんだが‥‥‥」


「見ればわかる!」


そう言って男は俺の手首をガシッと掴む。男の手は生暖かく、手汗でぐっしょり濡れていた。

そして男に集団の先頭に連れて行かれる。


「おいおい!それでも魔物か?俺ら人間を殺してきた魔物か?」


「や‥‥‥めて‥‥‥」


俺の目線の先で行われていたのは大柄の男が馬のリードで1人の少女を痛めつけている様子だ。少女は白い髪のショートヘアで、白い長袖に花柄が入っている吊りスカートで、一見普通の人間の少女に見える。

だが少女の肌は薄紫色で人間とは言い難い色だった。それを見て大男は魔物と言ったのだろう。


「やめてだぁ?俺らは魔物にやられてきたんだ。やめろっていってもよぉ。でもお前らは容赦なく殺してきただろうが。殺されても文句はないよなぁ?」


男の言動と暴力はより過激になっていく。周りも殺せやら俺らの辛さを味合わせろやら集団には熱が帯びていくのがわかる。180センチはあるであろう大男に10歳くらいの小さな少女を痛めつけている様子は流石に俺でも良心が痛んでくる。


「まさか面白いことってこれか?」


「そうに決まってるじゃないか。人間を陥れてきた魔物を人間が逆にいじめてるなんて最高のエンターテイメントじゃないか!」


男は興奮していて、鼻息がより荒くなっている。生物を痛めつけている光景を見てエンターテイメントと言える精神が俺には理解ができない。

だが、魔物が人間を陥れたという事実は実際には存在している。人間はその事実から怒りという感情が生まれるのだろうか。俺にはわからない。


「なぁ、あの子は何か痛めつけられるようなことをお前らにしたのか?」


「さあ?俺も途中からしか見てないからよくわかんねぇけど‥‥‥」


「ーーーーー魔物だし、殺されるのは当然でしょ。」


俺は 今2つ新たな事実を知った。

1つはあの子は魔物だから痛めつけられている。

2つ目はこいつらが救いようもないようなクズであること。だが俺には怒りの感情は出てこない。ただ不快な感覚が足のつま先から髪の毛一本一本まで広がっているだけ。

その感覚は俺にとっては我慢が難しい感覚だ。

この感覚を

ーーーーー取りのぞきたい!!


気づいたら俺は大男と魔物の少女の間に仁王立ちしていた。


「あぁ?なんだお前。さっさとどきやがれよ。続きができねぇだろうが。」


「さすがにもうやめたらどうだ。このまま続けたら死んでしまうぞ。」


後ろをチラッと見ると少女がルビーのような目を丸くさせてこっちを見ている。この目を見るとこの少女が何かするようには思えなくなる。


「おいセルージ!何してるんだよ。どいてくれ!」


「そうだ!続きを見させろ。」


「バル、セルージをどかして続きをさっさと始めろ!」


俺が突然参戦したことで集団はざわめき始める。どうやら中には俺ごと殺せとかいうやつもでてきた。


「バル‥‥‥とか言ったか?この子は何を理由にして痛めつけられているのだろうか?」


「あぁ?魔物だからに決まってるだろ。そいつがどんないいことをしてようと魔物は魔物だろ。だからこうやって痛めつけて殺そうとしてるのさ。」


男は鼻で笑うと、リードを持ちながら手をボキッと鳴らす。俺はバルの言葉が信じられなかった。これが本当に人間なのだろうか。


「お前ら人間じゃねえよ‥‥」


俺はその言葉と共にバルの溝落ちに右手を捻り込ませる。

バルは白目を剥き、血の混じった唾液をはきだしながらその場に倒れる。気絶したようだ。

血の気が盛んな集団の連中もこの光景には驚いたのか一瞬時が止まったように静かになった。


「お前らもこんなになりたくなかったら消えてくれないか。」


俺は少し睨みを聞かせ、拳を前に突き出す。それにビビったのか連中は一目散に逃げ出した。

だがそんな中1人近づいてくる者がいる。どうやらさっきのエンターテイメント男のようだ。


「バル、バル!目を覚ましてくれよ!」


「気絶してるだけだ。ここ、俺の家の前だからどこかに連れて行ってあげてくれ。」


するとエンターテイメント男は俺を鋭い目つきで俺を睨む。さっきのチャラい雰囲気からは想像できないほどの怒りの感情を滲み出している。


「見損なったぜセルージ。魔物を守るなんてよ。お前は前の便利屋と違ってスーパーヒーローでもなんでもなかった。ただのクソ野郎だよ。」


そう言い残してバルを連れて駆け足でこの場を後にした。


第一話、FIN.
























次は 2週間〜3週間後くらいに投稿します。

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