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18話

 パーティー以降、ファーナスは多忙な日々を送るようになった。


「ファーナスちゃん、新しい装備を作ってほしいんだけど」

「かしこまりました、どのような装備がよろしいですか?」


「最近、弓に転向したから軽いやつがいいな」

「分かりました、では鉄は最小限にとどめます。素材は何かお持ちですか?」


「アラウンドの地中蝸牛(マイナー・マイナー)の甲殻があるよ」

「分かりました。いい素材をお持ちですね。鉄と強度は変わらないですが、軽さは半分くらいになりますよ」

「おっ、それは良いね。一か月くらいで大丈夫?」


「こちらでしたら二週間で作れますよ。弓に転向したのなら早く慣れておきたいでしょう?」

「いやあ、ファーナスちゃんには敵わないなあ。じゃあ、お願いしちゃおうかな」

「お任せください」



 鍛冶屋の看板娘の作る装備ということで、お店には多くの新規の客が押し寄せた。ファーナスはハイペースで装備を作る。父は従来のお客さんの装備を作るに留めていた。



「あまり無理はするなよ。いいものを作ることが一番大切だ」

「うん、でも大丈夫。妥協はしてないから」

 昼休憩、ファーナスは伸びをして言った。



「ランニングをしてきます」

 甘いコーヒーを飲むファーナスにヘルトが告げる。

「あんま無理しちゃだめよ、病み上がりなんだから」


「大丈夫です。もう十分元気ですから」

 そう言ってヘルトは外に駆けだした。


「かなり良くなったな」

 父はヘルトの背中を見て言う。

「うん、まだ細いけど元気そう」


「精神面の話だ」

 父は訂正する。

「どうかしら。ダンジョンに行きたい行きたいって、子供みたい」

 ファーナスは変わらず嫌味を言う。

「お母さんそっくりだぞ」

 父は言った。


「ふっ。そうね」

 ファーナスの口角が緩んだ。


「さ!まだまだ午後もがんばろっと」

 ファーナスは立ち上がり、無心になって装備を作った。




「ただいま帰りました」

 店の扉が開く。

「おかえり。今日は早いじゃない」

 ファーナスは言う。

「だいぶ走れるようになってきました」

「よかったわね」


「今日はもう終わりですか」

 片づけをするファーナスを見てヘルトが言った。

「そうよ。手伝って」


「はい」

 2人は店じまいをする。






「じゃあまず、装備の手入れからね」

「はい」


 閉店後、ファーナスはヘルトに自身が持つダンジョンの知識や、道具の扱いを教えるようになった。


「アラウンドでは弱いモンスターが群れをなしていることが多いんだけど、ディープになると単独で行動するモンスターが多くなってくる。攻撃力が高いからパーティーの役割をはっきりさせないといけない。あなたは戦士職だったわね?」


「はい、そうです」

「なら、出来るだけ的確に攻撃し、戦闘を終わらせないといけない。そしてあなたは敵からのヘイトを集めるという役割もある。花形というだけあってやることは多いのよ」



「骨が折れますね」

「ドリームに行ったら即死級のモンスターしかいないんだから、これくらいで弱音吐いてちゃだめよ。先頭のあなたがパーティーのみんなを守るのよ?責任は大きいのよ」


「パーティーメンバーか」

 ヘルトは遠くを見る。

「何あんた、友達いないの?」

 ファーナスは毒づく。


「はい。実は」

 恥ずかしそうに告白するヘルトを見て、ファーナスは吹き出す。

「貴族様も大変ね。まあ私もだけど」


「シュトルツさんですか」

「あなたもね」

 ファーナスはヘルトにデコピンをする。



「そういえば、ツァーリさんってどれくらいの実力者なのですか」

 ヘルトは、ブラスト工房の人気上昇に伴って製造量を増やした初心者用防具のショーケースを見て言った。


「言ってなかったっけ。あの人とその旦那さんは私の母と同じパーティーだったのよ」

「えっ、それってつまりドリーマーってことですか?」

 ヘルトは目を見開いて尋ねる。


「そういうこと。ツァーリさんの旦那さんとお母さんは同じ時に亡くなった。その時の生き残りは2人よ」

「熟練の探検者が一気に2人も___」

 ドリームの過酷さをヘルトは改めて実感した。


「そっ。だからあなたは弱音なんて吐く余裕はないわよ?」

 ファーナスはもう一度ヘルトにデコピンを加える。

「痛っ__。ええ、わかっています。僕はまだまだです。よし、もう一回走ってきます」

 ヘルトは外に出ようとする。


「だめよ、体を休めることも大切」

 ファーナスはヘルトの服を引っ張って止める。



「えぇ、まだ元気なのに。じゃあ筋トレします。それならいいでしょ?」

 ヘルトは腕立てを始めた。

「もう、休めって言ってんのに__まあいいわ。私筋肉好きだし、頑張って」


「はい!頑張ります」

 それを聞いたヘルトはペースを上げた。








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