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16話

 祝いの場にはシュトルツをはじめ、ブラスト工房の常連さんも訪れた。



 ヘルトの選んだ酒は好評で、荒くれ者も多い探検者は次々に瓶を空けていく。

「次は俺がファーナスちゃんに装備を作ってもらうからな!」

 一人の探検者が声を上げる。

「てめえ、抜け駆けすんな!俺が先だって!」


「まあまあ、誰であろうとちゃんと作りますので」

 ファーナスは言い争う探検者をなだめる。



「ファーナス」

 シュトルツがファーナスに話しかける。初めてのお酒ということもあり彼の顔は赤くなっていた。

「おめでとう、君と一緒の仕事が出来てうれしいよ」


「私もよシュトルツ。あなたの武器に負けないくらいの装備を作るわ」

 言うと、シュトルツは笑う。

「ああ、楽しみにしてるよ。昔した約束、覚えてるか?」

 シュトルツは声のボリュームを上げて言う。


「ええ、覚えているわよ。あなたの武器と私の装備でダンジョンを制覇する、でしょ?」

「覚えていてくれたか。良かった。それで、最初の装備は誰に作るんだ?」

 先ほどの小競り合いを踏まえシュトルツは尋ねた。


「実はもう作っているの」

 ファーナスはシュトルツにだけ聞こえるように小さい声で話した。

「えっ、誰にだ?」



 ファーナスはヘルトの方を向く。

「あいつに?」

 シュトルツはつい声を張ってしまい、ファーナスは人差し指を顔の前に立て静かに、といった。

「どうしてだよ。この店はうちと同じでベテランが多いんだろ?あいつは見るからに初心じゃないか?」

 シュトルツは理解できないと言った感じにファーナスに尋ねる。

「そうなんだけど、でもなぜか。ほっとけなくて」

 シュトルツは頭をかく。


「俺たちの約束を守るんだったら、相手を選ばなきゃダメだろう?必死になって技を覚えたんだ、俺達は使用者を選ぶ権利がある」

 シュトルツは訴えかける。

「それは違うわ」

 ファーナスはシュトルツを見て言う。

「私は確かに自分の作ったものを着けてダンジョンを制覇してほしい。でもそれはおまけよ。私は誰かの命を守るために作るの。それが一番大切」

 ファーナスは力強く言った。



「分かったよ。でもなんであいつなんだ。よりによってなんでウェスタリア家なんだよ」

 シュトルツは声を荒げて言う。

「なによ。酔ってるの?ヘルトがどうしたって言うのよ」


「お前、知らねえのか?」

 シュトルツは髪を搔きむしる。

「僕がどうかしましたか?」

2人の会話にヘルトが入ってくる。

 


「ウェスタリア家が大量生産の工場を経営する資本家に銀山を提供するって話、本当かよ?」

シュトルツは敵意を隠さずヘルトを睨みつけた。

「そんな話、一切存じ上げません。何かの噂では?」

ヘルトはシュトルツの悪意を気にせずに返す。


「白々しいな。俺達みたいな伝統的な職人を軽視しといて、ファーナスに取り入ろうってか、いい根性してるねえ」

シュトルツは蔑んだ視線を向ける。

「その傷も同情を得るためじゃないのか?ええ?」

シュトルツは言葉を浴びせ続ける。



「ちょっと、どうしたのシュトルツ。あなた酔ってるのね?ほら、お水」

ファーナスが差し出した水を受け取り、シュトルツは一気に飲み干した。

「お前らは何も奪えない。俺たちのお客さんたちも、大事な人も__。手を出したらただじゃおかないからな」

シュトルツはヘルトに言い放つ。そしてファーナスをちらと見る。

「ええ、肝に銘じておきましょう」

ここまで言われっぱなしだったヘルトはそれだけ言った。




「ごめんファーナス。今日はもう帰るよ。招待してくれてありがとう」

「う、うん。また来てね」

シュトルツは片手を上げて店を去っていった。


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