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何故白銀の竜がそこにいるのか?

銀色に輝く美しい竜が、今、私の目の前に座っている。

私が行こうとする道を余裕で塞ぐ胴体と、そこからスラリとのびた首。座っているにも関わらず、その竜の顔は私の頭上より高くにある。天を突き刺す様な硬き二本の角、口からは憎き物を全て切り裂くであろう鋭い牙を生やしている。宝石を散りばめた様な煌めく碧い瞳は、何を伝えようとしているのか、ただただ静かに、私を見つめているようだった。


私はこの竜を知っている。ほんの少し前に初めて出会い、僅かながらも会話した程度…だが。

そう…私はこの美しい竜を求めてこの険しい山にはいり、当然の答えをその身の受けて下山している途中なのだ。私の願いを拒絶した強き竜が何故ここにいるのか、正直見当がつかないでいる。

私に何か用があるというのか?古の契約を結べなかったこの役立たずの私に…?竜騎士一族の恥さらしに…。



私の一族は、竜とともに生きることを至上とする騎士の集まりである。竜とともに大空を舞い、竜とともに敵を苛烈に討ち滅ぼす。竜の傍らにいることが我らの祝福であり喜びであるのだと、幼き頃から教えられていた。

私の父はファナー王国の竜騎士隊隊長を仰せつかっている立派な人だ。母は王国内でも上位に入る宮廷魔術師である。偉大な両親から英才教育を受けた兄は当たり前の様に竜騎士になり、姉も数少ない女性竜騎士の資格を得ている才媛である。王国内でもその名を知らぬ者はいないと噂される、優秀な家族達だ。

竜騎士になるには最低でも、竜とともに戦える強靭な肉体と激しい戦闘に耐えうる屈強な精神が必要である。それ故竜騎士を志す者は、幼き時より厳しい鍛錬を繰り返すことになる。兄や姉もご多分に漏れず、父から厳しい教育を受けていた。

兄は身体能力に秀でていたらしく、呆れるくらい投げつけられる無茶な課題を、難なくこなしていたらしい。どれ程厳しい修練をうけても、家にいる時の兄は辛い顔を少しも見せず、快活に笑う優しい人であった。

姉は元々魔術師を目指していて、幼い頃から宮廷魔術師である母の指導を受けていた。だがある日を境に姉は魔術の杖を置き、無骨な槍を手に取るようになる。姉は父の指導を求め、父母はその意思を尊重した。

魔術に愛された姉は巧みに身体強化術を纏い、屈強な戦士にも劣らぬ身体能力を発揮する。厳しい修練の末、魔術と槍の五月雨の如き激しい攻撃を身につけた姉は、朱き鎧と朱き竜を必然の様にその手に収めていた。

そんな優秀な姉は、口調がきつく厳しい意見を言うこともあるが、平和を愛する穏やかで優しい人なのだと私は知っている。


そう…上の兄姉は見事に両親の期待に応えたのだ。それなのに私ときたら…。

私は生まれつき身体が弱かった。両親と違う銀色の髪に青白い肌、痩せ細った身体に不似合いな赤い眼を持って生まれた。幼い頃は何もないところで転んで骨を折り、服に肌が負けて赤くなる。食も細く、よく熱を出して寝込んでいたのを覚えている。


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