お空が晴れてる!
「今日はいい天気だから、久しぶりにあれしなくっちゃね」
ゆいちゃんのママの言葉に、ぬいぐるみたちはみんなブルブルふるえあがってしまいました。
「わわわ、あれだよ、あれされるよ……」
まんまるふっくらした、くじらのぬいぐるみがいいました。
「いやだよぉ、もうあれだけは、いやだよぉ!」
にっこり笑っている、くまのぬいぐるみも頭をかかえています。
「どうしよう、どこかにかくれようか?」
小さなひよこのぬいぐるみが、やっぱり小さなうりぼうのぬいぐるみに聞きました。
「だめだよ、どこにかくれても、ママはすぐに見つけるもん! もう逃げられないよ……」
うりぼうのぬいぐるみにいわれて、ひよこのぬいぐるみは真っ青になってしまいました。
「こうなったら、みんなでママさんにあやまるしかないよ!」
ぬいぐるみたちのなかでも、一番古株の、アザラシのぬいぐるみがいいました。
「あやまるったって、ママにはおれたちの言葉は聞こえないんだよ」
アザラシの次に古株の、シャチのぬいぐるみが怒ったようにいいかえします。
「そんなのわからないじゃないか! ぼくたちがみんなで必死にあやまったら、もしかしたらママさん、許してくれるかもしれないじゃないか」
アザラシのぬいぐるみが、さらにシャチのぬいぐるみにいいかえします。今にもケンカがはじまりそうで、みんなあわてて止めに入ります。
「待って待って、ケンカしてもどうにもならないよ」
アザラシのぬいぐるみと、シャチのぬいぐるみのあいだに入って、なんとかケンカにならずにすみました。でも、本当にどうしたらいいのでしょう?
「そうだ! 雨ごいだよ!」
一番新しいかえるのぬいぐるみが、お友達のキノコのぬいぐるみを持っていいました。
「雨ごい? 雨ごいって、なあに?」
他のぬいぐるみたちは、雨ごいがなんなのか知らないようです。かえるのぬいぐるみが説明します。
「みんなでこうやって、輪になってね。それで、キノコくんを真ん中にして……」
かえるのぬいぐるみが、雨ごいについて説明します。そして……。
「さ、掃除機もかけたし、お皿もピッカピカに洗ったし、それじゃあ次はあなたたちね! ……あら?」
ゆいちゃんのお部屋に入ってきたママは、目をぱちくりさせてしまいました。きのこのぬいぐるみを真ん中にして、他のぬいぐるみたちが、お祈りするようにうつぶせになっていたのです。ママは思わず笑ってしまいました。
「もう、ゆいったら、いたずら好きなんだから」
こうしてぬいぐるみたちの必死の雨ごいもむなしく、一体ずつ洗濯かごに入れられてしまいました。そして……。
「かえるくんのバカーッ!」
ママにごしごしと洗われ、しぼられながら、くじらのぬいぐるみがさけびます。
「ごめんよぉ、みんなぁ……」
一足先に、洗濯バサミで足をはさまれお日さまに干されている、かえるくんがあやまります。他のぬいぐるみたちも、みんなゴシゴシ、ぎゅうぎゅう、しっかり洗われてしぼられて、そしてものほしざおに干されてしまうのです。
「うぅ……」
「ひどいよぉ……」
「うっぷ、うっぷ……水いっぱい飲んじゃった……」
ぬいぐるみたちは、みんなぐったり。ですが、ママはとってもいい笑顔です。
「ふうっ、これでよし! あんたたちもよかったわね、これでゆいが帰ってきたら、みんなぎゅうってしてもらえるわよ」
「よくないよぉ!」
ぬいぐるみたちは、みんなギャーギャーワイワイママに文句をいいますが、もちろんママには聞こえません。そのままうらめしそうに、お日さまを見あげるのでした。
「わぁっ、みんな今日はふっかふかだぁっ!」
学校からゆいが帰ってくると、ふわふわになったぬいぐるみたちが出迎えてくれました。みんなからは、ほんのりお日さまのにおいがします。ゆいにぎゅうっとされて、さっきまでギャーギャーいっていたぬいぐるみたちも、すぐにごきげんになるのでした。
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