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女冒険者は絶対に引退したい〜Sランクパーティーから追放されたので、これはもう引退するしかないと思います。引き留めないでください!〜  作者: 清水薬子
【熱界渦雷グリーンドラゴンを討伐せよ(ただし手段は問わない)】

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第二十七話 目指すは竜討伐


 【深みの洞窟】から無事に脱出を果たし、手に入れた素材を片手に冒険者ギルドに戻る。

 そこには満面の笑みを浮かべた内藤支部長がいた。


「やあやあ、おかえり。待っていたよ」


 面頬(バイザー)の下で睨みつけると、その気配を察知したのか彼は肩を竦めた。

 フールや浅沼たちは素材の売却に向かっているので、一階の受付にいるのは私とエルドラだけだ。


「そう怒らないでくれ。未確定情報を確かめるためにこのギルドで一番の実力と経験を持つエルドラ卿と君たちを派遣したんだ。もっとも、僕たちが得ている情報もほとんどなかったんだけどね」


「どういう意味だ?」


 エルドラが(まなじり)を釣り上げる。

 上手いこと使われたと気づいた彼はみるみる機嫌が悪くなっていく。

 いいぞ、もっと怒ってやれ!


「あの迷宮があった土地を所有していた人が少し政治的主張の激しい人でね。その迷宮に出現する魔物が旧日本軍の部隊だと信じて保護するべきだと主張したんだ」

「それで変質して溢れる寸前まで放置していたと? 職務怠慢じゃないか」

「なにかと職権が強い外側(アウター)と比べて日本は法治国家、行政に対して色々と制限が課せられているのさ」

「ふん、そんなんだから対応が遅れるんだ」


 電車に乗ってここへ戻ってくる途中、ふと気になったのでエルドラの鑑定結果を元に調べてみた。


 『第4旅団349部隊』

 コアなミリオタのブログから公式記録までざっと目を通したが、それらしい部隊はなかった。

 そもそも死を連想させる4、惨を連想させる3、死苦と当てはめられる4と9。

 縁起が悪いと忌避される忌み数字ばかりを使った部隊について記述した資料はなかった。

 ……非公式部隊とか、歴史から抹消されたとかそういうものは知らん。


「いずれにせよ溢れ出して大暴走(スタンピート)するようなことにならなくて良かったよ。それに、君たちに報酬をたくさん出せる」


 さすが支部長、金で有耶無耶にしようとしているな。

 エルドラは腕を組んで内藤支部長を見下ろす。


「次からは事前に説明が欲しいところだな。お互いの信頼関係に亀裂を生じさせたいなら別だが、俺たちの不和はいずれ国際問題に発展する事になるぞ」

「法国がもっと柔軟になってくれれば、それも可能なんだけどね」


 内藤支部長はこちらを見て、深いため息を吐く。


「法国といえば、だ。あの『悪霊の主』を雇うなんて何を考えているんだい? そりゃ冒険者登録は禁じているがーー」

「(差別、よくない)」

「……それは僕もそう思うよ。思うんだけど、これは政治的判断というやつーー」


 内藤支部長はがっくりと肩を落とす。

 内藤の目にも涙、彼も罪悪感を抱いていたのだろう。


「君はいつもそうだったな。政治的な思惑も、他人の企みも、何もかもを無視して信念を貫き通す類の人間だ」


 それから彼は肩を竦めて笑う。

 というか、評価がおかしいことになってる。私はそんなに立派な人間じゃないぞ。


「あの国に対して僕も思うところはあった。この際だ、君たちが竜の討伐を成し遂げれば世論が味方になるかもしれない。好きなようにやっちゃって」


 そして、盛大に投げた。

 これが組織の頂点。責任と後始末は部下にやらせるつもりだ。

 私には分かる。彼はそういう人間だ。

 ぐぬぬぬ、文句を言いたいけどこういう時にパッと出てこない。


「ふん、地球の人権感覚というものはよく分からん」


 呆れたように首を振るエルドラ。

 彼の声をかき消すようにカローラがぱたぱたと駆け寄る。


「すみません、お待たせしました! それでは迷宮探索の報告をお伺いいたします!」

「それじゃあ、僕はこれで。竜討伐の成功を祈っているよ」


 ひらりと片手を振りながら内藤支部長はカウンターの奥へと消えていった。

 その背中を睨みつけている間に、エルドラとカローラは小さな喧嘩をしながら報告作業を進めている。


「このちんちくりん。さっさと記入を済ませろ」

「うるさいですね、タケノコ。無駄に寿命が長いんですからおおらかな心で待ちやがってください」


 なんだかんだこの二人も仲が良いな。

 お互いにいきいきとしながら口撃を繰り広げている。

 というか、身長のことしか槍玉にあげられないのはどうかと思うよ。


 報告を済ませた頃、素材の売却や武具の注文を終えた浅沼たちが戻ってきた。

 テーブルに座り、分け前を話し合う。

 だいたい人数分で割ってから、余りは何かと出費が多いフールに与える。


「これで資金は集まった。休日を二日ほど設けてからグリーンドラゴンの討伐に向けて行動する。各々、準備は欠かすなよ」


 頷き、解散していくメンバーたち。


 ついに明々後日、熱界渦雷竜グリーンドラゴンの討伐に向かうことになる。

 レッドドラゴン同様、嵐や竜巻を発生させることで各地に甚大な(主に一次産業)被害を与えてきた魔物の討伐は急務。

 これまで気候もあって近づくことすら不可能だった竜に、レッドドラゴンから授けられた策がどこまで通用するか分からない。

 ただ、このメンバーならきっと成し遂げてくれるだろう。


 この前のレッドドラゴンの討伐の反省を活かして、予備の防具を買っておかなくちゃ。

 他にやる事あったっけ。

 ……打ち上げ会場とか予約しておいた方がいいかな?

 未成年もいるし、食べ放題のお店をピックアップしておこうっと。


 いそいそとスマホを操作して付近のお店を検索する。

 やっぱり男が多いから焼肉の方がいいだろうか。

 でもお肉が好きとは限らないし、色んなメニューが選べる場所がいいかな。

 むむ、こういうのって判断に迷うなあ……

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