第8話
またポーションが作れるということに、まず私は喜んでいた。
普段そんな自由にポーションが作れない私にとって、この時間はとても嬉しいものだった。
二人が真剣な様子でポーションの制作に向かって行く。そうしながらも、二人は視線をぶつけあう。
「リフェア、言っておくけど恨みっこなしよ?」
「それはこっちのセリフよ、ララ」
リフェアとララはバチバチと睨み合っている。
二人ともやる気満々といった様子だ。そんな二人は、私のことは一切眼中にないようだった。
まあ、私も別に自分のポーションを作るだけだしね。
……それにしても、もしも専属の薬師になったらどうなるんだろうか? やっぱり、毎日ポーションとか作らせてもらえるのかな?
姉さんたちが選ばれたとしたら、私がこの家を継ぐことになるんだよね?
そうなったら、毎日自由にポーションが作れるよね? それは結構楽しみだった。
私はいつものようにまず、魔力水の投入を行う。
魔力水 Bランク
まあ、このくらいでも十分だよね。
私はそれから、すぐに薬草の投入を行っていく。
適当に薬草を投入していき、水を沸騰させていく。
魔力水が十分に温まったところで、薬草を投入していく。まずは一つ、アカサ草だ。
私はアカサ草を基本に作っていくのが一番慣れているんだよね。
……味見してみると僅かな甘みがあった。
魔力水とアカサ草の質によって、この味は大きく変化する。また、投入したときの魔力水の熱量とかでもね。
この場合は……うーん、どの薬草を投入しようかな?
ポーションを数滴取り出して、薬草との組み合わせを確かめていく。
自分で味見をしていく。
「あっ、これでは毒だ」
私はぺっと吐き出した。こういうこともあるからポーション作りは大変な部分もある。でも、生き物のようにころころ表情を変えてくれるのでとても楽しい。
私の体は少しだけ気分が悪くなったけど、それもすぐに治った。
私、毒耐性持ってるんだよね。小さい頃からこうやって毒になっちゃったポーションとか飲んでたら問題なくなったんだよね。
そうやって味見を繰り返していくと、完璧な配合を見つけた。
エケセ草とオコソ草を組み合わせてみると、良い味だった。
一番最適な薬草を見つけたところで、私はそれを錬金釜へと投入し、再びかき混ぜていく。
出来てきた!
私が作っているのをみていたララがくすりと笑った。
「相変わらず、まずそうなポーションね」
そう言うララのポーションはキラキラと輝いていた。
私のは確かに色は悪かった。濁った色だ。
色に関しては調整可能なんだけど、別に味には関係ないから私は無理に調整しなかった。
だって、無駄に薬草使っちゃうしね。
ララとリフェアは特に見た目へのこだわりが強い。
まあ、美しさというのもポーションの価値を高める。
世界で一番美しいポーションコンテスト、なんてのもあるくらいだしね。
二人はすでに出来上がったようで、私はそれから少し遅れてコップ一杯分のポーションを用意して、公爵様を待たせている店内へと戻った。
「やっときたのね」
「ほんと、遅いわね」
呆れた様子で二人がくすくすと笑う。
私たちはそれぞれ、持ってきたポーションを公爵様の前においた。
「……それじゃあ、味見させてもらおうか」
公爵様は私のポーションを見て少しだけ顔をしかめていた。
たぶん、見た目が悪いからだろう。
「公爵様ぁ、私のを飲んでください」
ララがすっと公爵様へとポーションを差し出した。
それを公爵様の近くにいたメイドが一瞥してから、公爵様を見て頷いた。
……毒とかの検査をしているんだと思う。
それから公爵様は、ララのポーションを口元にあて、
「ごほっ!?」
思い切りむせた。
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