第55話
よ、良かった。とりあえずみんなの口には合ったようだ。
「バルーズ様どうですか?」
「……いや、驚いたな。野外でこれほどの質の料理を食べられるとはな」
「そうですか? 喜んでいただけて良かったです」
「……あ、ああ」
私が笑顔とともに言うと、バルーズ様は頬をかきながら顔をそむけた。
私も自分のスープへと口をつける。
……ああ、おいしい。けど、この美味しい理由はたぶんマウチャメラビットから良いダシが出ているからだと思う。
後は野草とかもかな。私は薬草に関しての知識はあっても、食べられる野草には詳しくないからね。
お肉と野菜から生まれたエキスが程よく混ざり合い、口の中で弾ける。
野菜を食べてみると、しっかりとした食感を残しながらも食べやすい柔らかさだった。
おかげでするすると喉を通っていく。
お肉は逆に、口の中でとろけるような柔らかさがあった。
騎士たちは次々にスープをおかわりしていく。
私も……太らないかちょっと心配だったけど、おかわりへと向かう。
……最近運動を始めたから、大丈夫だと思う。
それからスープを食べ終えた私たちは、午後の狩りも行っていく。
午前中に確認したことで、魔物の討伐に関して特に大きな問題が起きるということはなかった。
夕方になったところで、魔物狩りを終える。
「今日は助かった、ありがとな」
「いえ……私もルーちゃんに魔物狩りを体験させられて良かったです。こちらこそ、ありがとうございました」
「そうか。それは良かった」
ほっとした様子でバルーズ様は息を吐く。
それから私たちは街へと向かって歩いていく。
「そういえば、ここに来てからもうすぐ一ヵ月程度は経つだろう? 生活にはなれたか?」
「そうですね……ポーションをたくさん作製できてとても嬉しいですね」
「そうか……ああ、そうだった。スケジュールに関して、少し見直す予定だ。とりあえず、ポーションの備蓄も終わってな。しばらくは週に100個程度でも良いと思うんだが――」
え!? そ、そんな! それだと作製できる個数が減ってしまう。
私が驚いていると、バルーズ様もなぜか慌て始めた。
「な、なぜそんな泣きそうな顔をしているんだ……?」
「い、いえ……その。作れる個数が減ってしまいますので……」
「そ、それは……とりあえずは休んでおくといいさ。また忙しくなる時も来るはずだ。その時のために余力を貯めておいてくれ」
「……分かりました」
……そういわれてしまっては仕方ない。
バルーズ様に働きすぎは良くないです、といった手前。私も働きすぎてはいけないだろう。
……私にとって、ポーション作りは仕事じゃないんだけどね。
街を歩いていく。さすがに騎士の集団、そしてその中央にバルーズ様がいるという状況ともなると、街の人たちの注目が集まる。
街の人たちはこちらに気づくとすっと頭を下げてくる。バルーズ様はそれらに軽く片手をあげるように対応していた。
バルーズ様の悪評とか聞かないし、民にそう嫌われているということもないんだろう。
そうやって街の中を歩いていき、屋敷へとついたところで執事が慌てた様子で駆け寄ってきた。
「バルーズ様。それにルーネ様」
え、私も?
驚いて執事の方を見ると、彼は困ったような表情とともに口を開いた。
「……ルーネ様のお姉さま方が来ております。話したい事があるということでして……いかがしましょうか?」
短編たちです。良かったら読んでくれると嬉しいです。
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