第54話
狩りが一段落ついたところで、一度休憩をとることになった。
この森は何度も狩りを行っていたため、休憩スペースと開かれた空間が存在していた。
そこに肉を運び込んでいく。
ゴブリンを主に狩ってはいたが、この森には他にも魔物はいる。
食用のマウチャメラビットを数体狩っていたため、今回の昼食はそれになる。
私も薬屋にいたころは料理当番だったので、料理に関しては少し詳しい。
騎士たちが料理を始めようとしたので、私はそちらへと向かった。
ちょうど、食料であったマウチャメラビットの体を洗おうとしていたところだった。
「あっ、死体を洗う場合はポーションで洗うとお肉に味がしみ込んでいいんですよ」
「そうなんですか?」
騎士がきょとんとした様子で首を傾げた。
「はい。ちょっと用意しますね」
私は森の中で採取していた薬草を使い、携帯錬金釜でポーションを作製する。
作製したのは普通のポーションだったけど、味は塩味が強い。
飲用で使う場合は失敗のポーションだけど、今回のように料理に使う場合は別だ。
騎士が血抜きを行ったマウチャメラビットの体を洗っていく。
ポーションがすっとウサギの体へとしみ込んでいく。
私はそれからマウチャメラビットの一体を洗い終える。
「料理なら、私も手伝いますね」
「あ、ありがとうございます」
騎士たちが嬉し気な声を上げていた。
「……やった! ルーネ様の手料理が食べられるぞ!」
「おいおい! あんまり喜ぶなって! バルーズ様に聞かれたら怒られるかもしれないぞ!?」
「そ、そうだよな。狙っているとか思われたらバルーズ様に何を言われるか……」
どういうことだろうか?
私は首を傾げながらマウチャメラビットの調理を行っていく。
必要ない部位を騎士に手伝ってもらいながら捌いていく。
皮は装備や衣服の素材となる。
骨などはスープのだしとなる。
肉はもちろん、一番の食料となる。
私が肉をさっと包丁で捌いていく。
今日の昼食は全員が食べられるようにスープとなっている。
私は切り分けた肉を騎士たちが用意してくれていた大きな鍋に入れていく。
すでに煮込まれはじめたスープを見ていた私は騎士に問いかける。
「少しポーションを追加してもいいですか?」
「え? あっ、美味しくなるなら大丈夫だと思いますけど……」
「大丈夫です。任せてください!」
許可を取ったので、私はポーションを作製して追加していく。
先ほど同様塩味だ。ただ、それだけではなく、ポーションとしての効能が得られるように疲労回復の要素も追加していく。
純粋な塩じゃないけど、これで味の調節は出来たはず。
試しに一口スープを舐めてみると、うん、ちょうど良い味加減だ。
後は、マウチャメラビットから出るエキス、煮込まれた野草たちが混ざり合えば森で作ったとは思えないくらいの料理になるはずだ。
私が鍋をかき混ぜていると、様子を見に来たバルーズ様がじっと覗きこんできた。
「料理も出来るんだな」
「家では私の担当でしたからね」
「そうなんだな。狩りを行った後は料理を行うが……いつもよりもスープの匂いがいいな」
「もしかしたらポーションと一緒に煮込んでいるのがいいのかもしれませんね」
それらを、森の中で採取した野草とともにスープで煮込んでいく。
そうしてしばらく待つと、出来上がった。
私が鍋からスープをすくって、騎士たちに配っていく。
全員の手にいきわたったところで、私たちは神に感謝を告げた後口元にスープを運んだ。
「おっ、おいしい!」
「普段オレたちが作っているのよりもずっと美味いな!」
騎士たちが目を輝かせながらそう叫んでいた。
短編たちです。良かったら読んでくれると嬉しいです。
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