第49話
それから私たちは舞踏会が終わるまでの間、他愛もない話をした。
アイリーン様は学園に通っているそうで、彼女の話の中心はそこであることが多かった。
だいぶ夜も更けてきていて、舞踏会のほうも段々と静かになっていく。
「ふあああ、そろそろ眠くなってきたわね」
伸びをしたアイリーン様に、私はこくりと頷いた。
「そうですね……」
ポーションはリラックス効果もあるためか、いつも以上に眠気を感じていた。
たぶん、もう体が眠る準備を始めているんだと思う。
「それではアイリーン様。部屋の方に戻りましょうか。私が部屋までご案内いたしますので」
ニュナがすっとそういうと、アイリーン様はこくんと首を縦に振った。
「そうね……それにしても今日は楽しかったわ、これも全部ルーネのおかげだわ」
「私も楽しかったです」
「ほんと? それならルーネ、また今度遊びに来てもいいかしら?」
「え?」
突然の提案に私は驚いてしまう。
「どう? ダメ?」
「い、いえ別に構いませんが……ここにはポーション以外は何もありませんよ?」
「あんたがいるじゃない。あんたと話をしているのが楽しいのよ。あっ、そうだ。今度学校にも一緒に来ない? あんたがいれば、学校も少しは楽しくなりそうだわ!」
が、学校!? それも貴族の学校となれば、おいそれと足を運ぶわけにはいかない。
「アイリーン様。勝手に引き抜こうとしないでください。ほら、行きましょう」
「もう、分かったわよ。それじゃあルーネ、また今度遊びに来るわね!」
にこにこと笑って手を振り、アイリーン様は去っていった。
……ふう、良かった特に無礼なことはしてないよね?
私はアイリーン様とのやり取りを思いだす。
基本的にはアイリーン様が話をして、それに対して私が相槌を打つ程度だった。
……だ、大丈夫だよね?
しばらく反省会をしていると、やがて部屋へとニュナが戻ってきた。
「ルーネ様、どうされましたか?」
「え? あー、その。さっきのアイリーン様に無礼がなかったかと不安になっていまして……」
「なるほど……私から見ても特に問題はなかったと思いますが。それに、アイリーン様は貴族扱いをされるよりはぞんざいな扱いのほうが好きですからね。問題ないと思いますが」
「そ、それはそれで何だか問題があるような気がするけど……」
私がそういって苦笑すると、ニュナもまた微笑を浮かべた。
「とにかく、舞踏会の方は終わったようですね」
「あっ、それでしたら用意しておいたポーションを食堂の方に運んでおいてもらえますか?」
「え?」
驚いたような声をあげるニュナとともに、私は別室へと向かう。
そちらの部屋に用意しておいた錬金釜の蓋を開いた。
午前中に用意したため、すでに随分と冷えている。寝起きに飲むには悪くないものだと思う。
「え? こちらは何でしょうか?」
「朝、二日酔いとかで体調を崩してしまった人向けに作っておいたんです。多少はラクになると思いますので……あっ、こちら畑でとれた薬草を使っていますから、費用とかは気にしないでください」
以前、薬屋にやってきた冒険者が、「二日酔いの後にポーションを飲むと多少落ち着く」と話していた。
だから、必要であればと思って用意した。別に飲まないのであれば、いつものように食堂の人たちに渡すつもりだった。
「……え、えーといつの間に?」
驚いた様子でニュナが目をぱちくりとしていた。
「午前中とか暇な時間に作っていましたね」
「……もう、体壊さない程度にしてくださいね?」
ニュナはそういってから、私が用意した錬金釜の蓋を閉じる。
にこりと微笑んでから、その錬金釜を運び出していった。
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