第48話
私は二人を見比べた後、ニュナに問いかけた。
「結構親しいのですか?」
ニュナは一瞬苦笑を浮かべた後、こくりと頷いた。
「えーと、まあ。この屋敷に来られる時はたびたび世話役として仕事をしていましたから」
「一日限定のルーネ様との関係みたいなものですね」と付け足す。
なるほど、それは分かりやすい。
しかし、それを聞いていたアイリーン様が小首を傾げた。
「ルーネ様との関係って……もしかして、ルーネの専属メイドとか?」
「はい、今はそうなっていますね」
ニュナがそういうと、アイリーン様が羨ましそうにニュナを見た。
「いいわね。ルーネと一緒とか楽しそうでずるい!」
「ええ、毎日楽しく仕事をさせていただいていますよ」
「うわ、自慢するんじゃないわよ!」
べーっとアイリーン様が舌を出す。
ふ、二人に褒められているんだろう。少し照れ臭くて頬をかくしかなかった。
「それで、アイリーン様。まったく舞踏会の方には参加しないおつもりでしょうか?」
「当たり前じゃない。面倒くさいんだもん」
「なら、どうして屋敷まで足を運ばれたのですか?」
それは私もずっと疑問に思っていた。アイリーン様はぶすっと頬を膨らまし、顔をそっぽに向ける。
「だって、参加しろってうるさいのよ。それで、バルーズ様にアピールしてこいって。バルーズ様女性嫌いなんでしょ?」
「特にそういうことはございませんよ。ただ、女性が苦手なだけです」
「嫌いと同じじゃない」
「苦手と嫌いは別物です。アイリーン様がピーマンを苦手みたいなものです」
ピーマン、駄目なんだ。
でも、あれ?
「さっき苦手な物は何もないって言っていましたよね?」
私が問いかけると、アイリーン様は耳まで真っ赤にする。
「ちょ、ちょっとニュナ! 余計なこと言わないの! ルーネに聞かれちゃうじゃない!」
くすくすとニュナが笑い、私もつられて笑う。
アイリーン様は頬を膨らました後、腕を組んで腰かけた。
「ま、まったく……。まあいいわ。そういえば、ルーネに探すように命じたのってニュナなの?」
「バルーズ様が直接話をされたそうですね」
「なるほどね。でも、よくわかったわねルーネ」
「一応、この似顔絵を渡されたんですよ」
私はポケットから取り出した似顔絵をテーブルに出す。アイリーン様が覗きこみ、眉間を寄せる。
反対に、ニュナはどこか誇らしげに胸を張っている。
「私の似顔絵が完璧だったのでしょう」
「は? あんたが描いたの?」
「そうですよ。その昔、画家の道を歩もうと思っていた時期がありましたからね」
「踏み外して良かったわね」
「どういうことでしょうか!」
「あんたの絵が下手すぎなのよ! こんなの子どもだってかけるわよ!」
「な、ななな! そんなことありませんよ。現にルーネ様は見つけたじゃないですか!」
「この補足説明を頼りにしたんでしょ!? ね、ルーネ!?」
「ち、違いますよねルーネ様!?」
え、えーと……。
「つ、ツインテールは……絵を参考にしましたよ」
「そ、そこだけですか?」
も、黙秘させて……。
泣きそうなニュナからさっと視線をそらしたんだけど、それこそが一番の返答になってしまった。
「……ん? この狂暴ってどういうことよ?」
「特に深い意味はありません」
ニュナはすっかりいじけた様子でぽつりと漏らした。
「ないわけないでしょ! 文字そのままの意味ってことでしょ!?」
「もう、そう怒らないでください。そういうところですよ?」
ニュナは冗談めかして微笑む。
「あたしは狂暴じゃないわ! 横暴なの!」
え、それはいいの?
いまいちアイリーン様の感覚が良く分からなかった。
「……と、とりあえずほら。ポーションでも飲んで落ち着きませんか?」
場を取り持つため、私がそう提案するとアイリーン様が両手を叩いた。
「それじゃあ、今はお互い立場も忘れてみんなで飲むわよ」
「……いえ、私は本当にただのメイドですから」
「じゃあ、ただのメイドに伯爵家のあたしが命令よ。一緒に飲みなさい?」
……勝ち誇ったようにアイリーン様が微笑み、それからニュナは小さく息を吐いた。
「……分かりましたよ」
「そう、それでいいのよ。ルーネ、用意できる?」
「大丈夫です!」
……なるほど。
こうやって一緒の席につかせることも出来るんだ。
今度一緒に食事するときにやってみようかな?
そんなことを思いながら、三人分のポーションを用意する。
それから私たちはお互いの顔を一瞥してから、ティーカップを手に取った。
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