第43話
午前中には納品予定のポーション製作を終わらせ、それから私はルーちゃんとともに遊んでいた。
だいぶ私もボールを投げられるようになった。
私が貧弱なんじゃなくて、ニュナの肩が強いだけなんだよね。
だからルーちゃん。もっと遠くに投げていいよ? とばかりに見てこないでね。……もう私無理だから。
私だってこれでも7メートルくらいまでは問題なく投げられるようになった。
頼りない放物線を描き、ボールが向かう途中……
「がう!」
私がボールを投げた瞬間から走り出したルーちゃんが素晴らしい跳躍を見せた。
ルーちゃんがその口でボールをくわえながら着地する。
ルーちゃんはとうとう、私のボールが地面に到達する前に取ってしまった。
……さ、さっきからルーちゃんがやけに素早い駆け出しをしていると思っていたら、これを狙っていたんだ!
ルーちゃんはどこか満足げな様子で戻ってきた。
くわえていたボールを返してもらいながら、私は全力でボールを放り投げる。
次はくわえられないように!
そんな感じでルーちゃんと遊んでいると、ニュナが戻ってきた。
バルーズ様に呼ばれていた彼女はこちらへとやってきて、一礼をする。
「ルーネ様、今お時間よろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫ですよ」
ルーちゃんをちらと見ると、ルーちゃんはすぐに私たちの空気を察してその場にぺたりと伏せた。
本当に賢い子だよね。そのお腹を軽く撫でながら、私はニュナを見る。
「ルーネ様。近々開かれる予定の舞踏会についての詳しい内容についてのお話なんですが……」
「舞踏会? そろそろあるの?」
「はい。ルーネ様にまず参加の意思があるかどうかの確認をしてほしいとバルーズ様に頼まれまして、どういたしますか?」
「参加した方が良いのですか?」
「どちらでも、と話されていました。もしも、ルーネ様が他の貴族の方と関わる機会が欲しいというのであれば、もちろん参加してくれて構わないと話されていましたね」
……なるほどねぇ。
でも、私はあんまりそういうのはいいかな?
そもそも、礼儀作法も何も知らないから、下手をすればバルーズ様の顔に泥を塗ってしまう可能性もある。
「それでは、私は不参加でお願いします」
「かしこまりました。バルーズ様にもそのようにお伝えしておきますね」
すっとルーネが頷いた。
「その舞踏会の日は朝から一日人の出入りがある感じですか?」
「そうですね。人によっては屋敷に前日から泊まられる方もいますね」
「……なるほどぉ」
私は外に出ない方がいいかもしれない。
だって、下手に貴族に見つかってバルーズ様の迷惑になってしまっても嫌だしね。
一日室内でルーちゃんとのんびりしているのも悪くないかな。
でも、舞踏会かぁ……
「一度どのようなものなのかは見てみたいですね」
「見たい、ですか?」
それはほとんど独り言のようなものだったけど、ニュナが反応してこちらを見て来た。
どうしよう……と思いながらも私は彼女に自分の気持ちを伝える。
「はい。舞踏会などは本でしか見たことがありませんので……どの程度のものなのかなと興味はありますね」
「……なるほど」
ニュナはそれから顎に手をやり、何やらぶつぶつと呟き始めた。
ちらちらと時々こちらを見て、どこか嬉しそうな表情を浮かべるニュナ。
そして、ばっと顔を上げる。
その両目は輝いていて、次の瞬間にはがしっと私は両手を握られた。
「にゅ、ニュナ?」
「それでしたら……使用人の手伝いをするというのはいかがでしょうか?」
「あれ、ニュナなんだか鼻息荒くないですか?」
「そんなことございませんよ。どうでしょうか。こちらでメイド服を用意しますので」
「で、でも……その私が原因で何か大きな問題が起きてしまったら……ほら、その礼儀作法とか知りませんし」
「安心してください。裏側で荷物の運び込みを行うだけの作業を主にしてもらえれば大丈夫です。ですから、どうぞ。是非ともやってみましょう」
「……め、迷惑にならなそうなら……その、少しだけ手伝いますね」
「はい!」
……な、なんでそんなに楽しそうにしているんだろうか?
私は困惑しながらも彼女にこくこくと頷いた。
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