第41話
私は今、アトリエにいた。
ルーちゃんが傍にいて、構ってほしそうにこちらへと近づいてくる。
「ちょっと待ってねルーちゃん。今から魔撃ポーションの製作を行うから」
「がう」
ルーちゃんはがっくり、といった様子で肩を落としたけど私の言葉を理解したルーちゃんは大人しくお座りをして待っていた。
特に膝の上に乗られるとかはなくてほっとする。
……ルーちゃんさらに少し大きくなったからもう膝に乗られるとちょっと重たいんだよね。
たぶん、全長でも1.5メートルくらいはあると思う。初めてであったときは1メートルもなかったはずなんだけどなぁ。
それはとりあえず置いておいて、私は携帯錬金釜をちらっと見る。
それを地面に置いて、私は魔力水を入れる。
いつもよりも確実に量は少ない。
その質はCランク。今回はちょっと実験的な意味もあるからそれほど質に拘るつもりはなかった。
それからまずは、いつものようにポーションを製作する。
畑に生えていた薬草を回収しておいた私は、それで体力回復ポーションを作りあげる。
……そして、問題はここからなんだよね。
私は近くに置かれている箱の中を見た。
そこにはごろごろと色のついた石が入っていた。
……Fランクの魔石を中心に、Eランクなどのあまり質の良くない魔石が多く入っている。
確か、魔石の色は魔法に対応しているんだったはずだ。
赤色は火属性の魔力を多く含んでいる、とかね。だから、火をつけるときなどの燃料にすると、魔石の魔力と反応していつも以上に燃え上がるとか。
私は緑色の魔石、風魔石を取り出す。
風魔法ならば、そんなに大きな被害は出ないと思う。
その魔石をぽとんとポーションに落とした。
初めは固形だったそれは、一瞬だけ光を上げると石はすっとポーションに溶けていった。
そして出来上がったポーションは緑色をした美しいものだった。
……でも、これは風魔石の力を含んだポーションなんだよね。
鑑定を発動すると、
魔撃ポーション(風) 質 Cランク
あんまり質が良くないのは魔石の影響があるのかな?
でもとりあえず効果はあるはず。
私はそれを容器へと移した。
瓶に入ったポーションを眺めていると、ニュナが部屋へと入ってきた。
「ルーネ様、出来上がりましたか?」
「うん、こっちは出来ましたよ。ニュナの準備は出来ましたか?」
「はいこちらも」
「分かりました。それじゃあ、早速試してみましょうか」
私はニュナとともにアトリエを出て、それから庭へと向かう。
庭の一角には、一つの的が用意されていた。
それが、ニュナの用意してくれた的だ。
「これなら、ぶつけてもいいんだよね?」
「はい。こちらの的は魔道具の一つです。ギルドなどで魔法の確認を行うときに用いるものです。ある程度のダメージであれば自動で再生するような造りとなっていますので、とても便利なんですよ」
そういって、ニュナは的へと魔法を放った。
彼女は魔法が苦手と話していたため、もちろん派手な魔法ではなかった。
水の矢が放たれ、それが魔道具に刺さり水魔法は消えた。
少し傷のついた的だったけど、それからすぐに直り、傷は跡形もなく消え去った。
その様子を示すようにニュナが的へと手を向けた。
「このような形ですね。それなりの威力までは問題なく復元されますので、大丈夫だとは思いますが」
「分かりました。それにしても、これは便利ですね」
「そうですね」
私はじっと的を見てから、いつも投擲している距離まで離れた。
傍らでニュナが見守る中、私は少し緊張しながら大きく振りかぶって……瓶を投げた。
手から離れる瞬間に合わせ、瓶に向けて魔力を込める。それで、魔撃ポーションが私の魔力に反応する。
あっ。
思わずつぶやいてしまった。ほぼ一メートルほどの先の地面に直撃した魔撃ポーション。中身の液体がばらまかれる。
瓶ということと、多少の緊張によって力んでしまったせいだ。
「る、ルーネ様!」
慌てた様子でニュナが声をあげる。
ニュナが私の体を抱えるようにして瓶から離れた次の瞬間。
周囲を風が吹き抜けた。
鋭い風の刃が地面を抉っていた。
「そ、想像よりも威力が出ますね!」
私は誤魔化すようにそういうと、ニュナがじっとこちらを見てくる。
「ルーネ様。もう少し余裕をもって投擲出来るようになるまでは魔撃ポーションの使用は禁止です」
……だ、だよねー。
私はがくりと肩を落とすしかなかった。
【重要なお知らせ!】
日間ランキング上位目指して更新頑張ります!
・ブックマーク
・評価の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」
をしていただきますととても嬉しいです!