第39話
えぇ!?
「わ、私それなりに動けるようになりましたよ?」
「あくまで子どもと比較するとですよ!」
「わ、私の運動能力を舐めないで……っ」
「舐めていません! ルーネ様以上に私はルーネ様の出来なさを理解しているつもりです!」
ひ、酷い……!
確かに初めの頃は運動出来ていなかったけど、今ではきちんと体を動かせるようになっているのに……!
「そ、それではニュナ!」
私がびしっと指を突きつけると、ニュナは首を傾げた。
「な、なんでしょうか?」
「私に今日も剣の指導をしてくれませんか? そこで私が成長しているということを証明しましょう……!」
「……はぁ、いいですけど」
ボール遊びもずっとしていたので、次は剣の訓練を開始する。
アトリエの壁に立てかけられるように置かれていた木剣を掴み、軽く振る。
……うん、この重みにも慣れてきたね。
ニュナも木剣を掴み、立っていた。
私は木剣を両手で持ち彼女をじっと見据える。
……相手の動きを観察しながら、私は走り出した。
「た……あ!?」
気合を入れての一撃。それは途中で上ずった声に変わってしまう。
眼前からニュナが消えたからだ。
そして気づけばニュナが私の側面に回っていた。
もちろん、私の一撃はあっさりとかわされてしまう。
ニュナの振りぬいた木剣に私は握っていた木剣を手からこぼしてしまう。
「……くぅぅ!? 惜しかった……ですかね」
「いえ、まったく惜しくないですね」
「……そ、そんなことはないですよね? 実はわりと結構惜しいとか……」
「いえ、まったくそんなことはないですね」
で、ですよね。
もちろん分かっていた。ニュナがじっとこちらを見てきた。
「まだまだ、とてもではありませんが魔物と戦うなんて無理ですよ」
「……そ、そんなことは。ニュナが強すぎるだけなのでは?」
私のずばり名推理。しかし、それにニュナは首を振る。
「確かに私もそれなりに戦えるほうですが、それを差し引いたとしても……今のルーネ様ではとてもではありませんが難しいですよ。……そうですね。戦うとしたら補助や回復といった部分での活躍をする方が無難かと思いますよ」
「……補助、回復」
……それなら、ポーションの製造、かなぁ。
私は顎に手をやり、それから考える。
「……ポーションに攻撃的な要素を組み合わせれば……確か、そんな話を聞いたことありますね」
私はぶつぶつと呟きながら考える。
「……え、そ、そんな物騒なものが作れるのですか?」
ニュナが頬を引きつらせていた。
「はい。一応作れるはずです。えーと、確か魔石を組み合わせることで、魔石に含まれている魔法的要素をポーションに移すんです。もちろん飲んだら大変ですし、魔力に反応して発動してしまうので、取り扱いには注意が必要ですけどね。確か、名前は魔撃ポーションとかなんとか言っていましたね」
「ぶ、物騒なポーションですね」
「でも、確かにこれなら私も補助として使うことができますね。魔石によって威力や属性などがまるで違いますので……あまり使い勝手は良くありませんが。魔石ってどこかで入手できませんかね?」
「魔石ならばFランクのような下級のものはたくさんありますね。一応燃料として使えなくもない……程度ですが、管理はしていますね。あまり効率は良くありませんが」
「……なるほど。今度いくらか分けてもらって攻撃ポーションを作りましょうか」
「それって、魔物に飲ませるのですか?」
「違いますよ。ポーションに一定以上の魔力を与えると、数秒後に魔法が発動するような形です。ですから、魔力を込め、投擲するような形になりますね」
「……それってどちらにせよルーネ様では使いこなせないのでは?」
「だ、誰がノーコンですか!」
「い、いえそこまでは申していませんが……」
ニュナが慌てた様子で首を振る。
……くぅぅ。もっと上手くならないと。
どんなに優秀な魔撃ポーションを作ったとしても、結局私のコントロールが悪かったら意味がない。
「……にゅ、ニュナ。何かこう、コントロールが良くなるような的を用意してください。私、今日から毎日投擲の練習します」
「わ、分かりました。すぐに手配を行います」
ニュナの言う通り、今の私では結局まともに魔物に当てるのは難しい。
ならば、少しでもコントロールを良くする必要がある。
これもすべてルーちゃんのためである。
その日から始まったルーネの投擲練習を見て、困惑している人物が一名いた。
「……い、一体何をしているんだ?」
それはバルーズ様だった。
自分が雇った薬師が、毎日のように石や木片を投げ込んでいるのだから、その困惑は当然だろう。
とはいえ、別に何か問題を起こしているわけでもなかったため、バルーズ様はただ首を傾げるばかりだった。
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