第33話
ゲート、と呼ばれるものを破壊したことで魔物の発生が収まった。
……この領地をまとめるのは大変なんだなぁ、と思う。
北の大地では太陽の涙が発生して魔物が現れる。定期的に発生するし、おまけにどこに発生するかは不明。
下手をすれば、発生する場所が分かっているだけ、太陽の涙のほうが対応しやすいのかもしれない。
……あっちはあっちで、魔物の発生が大量すぎるという問題もあるみたいだけど。
常に様々なたくわえをしておく必要があるみたいで、公爵家って本当に大変なんだと思う。
ひとまず私は、今街を歩いていた。
とりあえず、今私は休みを頂いているので軽い観光気分だった。
……といっても、魔物の襲撃によって街の外壁やその周辺はまだ壊れてしまったままだったが。
戦いの傷跡を確認するように街を歩いていると、私の方に一人の女性と子どもがやってきた。
あれは、避難所で見かけた子だと思う。
「聖女様……。聖女様のおかげでうちの息子の怪我も治りました……! 本当にありがとうございます!」
「お姉ちゃん、ありがとね!」
「うん、良かったね。魔物が現れたからって慌てて怪我しちゃダメだよ?」
「うん!」
街まで魔物が襲ってきたのは最初の方だけだったそうだ。
その時に怪我をしてしまった子たちがいたが、
街の子たちへのポーションの支給は後回しにされてしまっていたそうだ。もちろん、前線で戦っている人が優先なのは仕方がないことなんだけどね。
私が来てたくさんポーションを作ったおかげで、避難所や戦いに参加していないが怪我をしてしまった人にもポーションの支給ができるようになったため、怪我が治ったそうだ。
子どもの頭を軽く撫でると、嬉しそうに笑ってくれた。
手を振り、私は隣を歩いているとニュナの方をちらと見る。
なんか街の人たちに聖女って呼ばれているのが気になったので聞こうと思ったんだけど……
「ああ、聖女様! 本当にありがとうございました! 旦那がこうして生きているのも、あなたのおかげです!」
今度は別の人に声をかけられた! 驚きながらも笑顔で対応する。
一応私は公爵家の薬師だからね。下手な対応をしてしまうとバルーズ様の評価にまでつながってしまう。
「ご主人は騎士ですか?」
「はい! 最初の戦いで怪我を負ってしまい……」
「そうでしたか。良かったです力になれたようで」
「……本当に、ありがとうございました!」
嬉しそうに彼女が頭を下げてきた。丁寧すぎる反応に私は困りながらも笑顔と手を振り返した。
……だ、だから何聖女様って?
私がもう一度ニュナの方を見ようとすると、そこでおばあちゃんがこちらにやってきた。
「聖女様……だよね?」
「え、えと……そうみたいです?」
聖女様と呼ばれることにまだ慣れていなかったけど、おばあちゃんが嬉しそうにこちらを見てきたものだから私もそれを受け入れるしかない。
「本当にありがとぉね、怪我をしちゃったんだけどね。聖女様のおかげで今はもう見ての通り元気なんだよ」
老婆がこちらに頭を下げてくる。
「気にしないでください。無理をなさらないでくださいね?」
「うん……ありがとね」
私はひらひらと手を振り返し、今度こそニュナを見た。
「あの、聖女様ってなんでしょうか?」
「その昔、回復魔法を使って人々を癒していた人ですね」
違う! そうじゃない!
「どうして私が聖女様と呼ばれているのですか? 私別に回復魔法は使っていませんよ?」
「それでも、あの場で確実に人々を癒していましたからね……。こういう状況で市民にまでポーションが配給されるのって結構後回しにされがちですので、その部分で皆さん気になって聞いてきて、広がったようですね」
「……そ、そうなんですね」
聖女様って……それはちょっと私にとっては荷が重いというか。
そんなことを思いながら歩いていた時だった。
「……くぅん」
足を引きずるようにして、脇から子犬のような動物が出てきた。
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