第32話
「バルーズ様! お疲れ様です!」
街についたところで、騎士たちが俺をそう出迎えてきた。
俺も急いで騎士たちをつれてこの街へとやってきたのだが、それでもかなり時間はかかってしまった。
ルーネたちが到着してからおおよそ2日程度が経っている。
とりあえず、街は最悪の状況には陥っていなかったため、ほっと胸を撫で下ろした。
「状況はどうなっている?」
「非常に、安定しております」
「安定? どういうことだ?」
……そもそも、大量の魔物発生によって騎士たちはかなり疲弊してしまっていたはずだ。
予想もしていなかった返答に驚いていると、
「今現在、最前線では魔物の軍勢を押し込んでいる状況です」
「な、なんだと? 俺が街を出発するときはギリギリの戦いを繰り広げていたという話ではなかったか?」
もちろん、移動の間に状況が変化した可能性は十分に考えられる。
「魔物の数が減った、とかか? あるいは、魔物が出現するゲートの破壊ができた、とかだろうか?」
この世界には、そもそもゲートと呼ばれる魔物が発生する空間が生まれてしまうことがある。
発見が遅れた場合、一つの地区が崩壊しかねないほどだった。
「いえ、今も魔物は発生しておりますが……その、ルーネ様の活躍のおかげでなんとかなっております」
「……ルーネ、だと? 一体なにをしたんだ?」
ルーネが規格外の存在であることは確かに俺も理解していた。
けれど、一体なにがどうなっているんだろうか?
騎士とともに前線へと移動しながら、俺は詳しい話を聞いていく。
「まず、傷の治療が可能な体力回復ポーションについては、ルーネ様がほぼ一人で前線を維持できるだけの量を確保してくれています」
「……そ、そうなのか?」
「はい」
すでにその時点で現実の出来事なのかと疑いたくなってしまう。
「それで? 確かに、治療はスムーズに行われるが、それで前線の状況が劇的に変わるわけでもないだろう?」
「……それが、ルーネ様に体力回復ポーションの製作を行ってもらったことで、他の薬師たちが能力強化系のポーションの製作を行ってくれました」
「……なるほど」
……ルーネが来たことで、他の薬師たちの手があいた。
それによって、様々な面で良い効果が出ているのか。
「あと、ルーネ様が前線近くでポーションの製作を行ってくれていますので、そのおかげもあって運ぶための時間が短縮されました」
「……る、ルーネが前線に? 大丈夫なのか?」
「はい、ニュナとレクリスを身辺警護につけておりますし、最前線から少し離れた場所にいますので」
「……そ、そうか、それなら良いのだが」
本当に、大丈夫だろうな? 俺としては、この街に来るといった時点でもわりとヒヤヒヤしていたんだがな。
「……それに、ルーネ様はとても可愛らしく。純粋といいますか、ポーションをこう手渡してくれるときに心が癒されるといいますか。みな、聖女様、聖女様と喜んでいましたよ」
「おい。変なことをした騎士はいないな?」
「は、はい! だ、大丈夫です! というか、ニュナが隣で見張っているのでとてもではないですがそのようなことをする者はおりませんでした」
それならいいのだがな。
確かにルーネほどの容姿の子に笑顔でポーションを手渡されれば、騎士の中には惚れる者もいるだろう。
やる気を出す程度で留めてくれればいいんだけどな。
とにかく、ルーネはどうやら、俺の想定以上の仕事をしてくれているようだ。
あとで、ルーネには感謝とお礼を渡したほうがいいだろう。
今は、とにかく魔物の押さえ込みを行わないといけないな。
「ゲートの確認はできているのか?」
「はい。場所の特定はできております」
「そうか。よし、分かった」
俺は小さく息を吐いてから、騎士とともに移動していった。
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