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薬屋の聖女 ~家族に虐げられていた薬屋の女の子、実は世界一のポーションを作れるそうですよ~  作者: 木嶋隆太


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第29話

 私は騎士と視線をかわす。


「ポーションの数に指定はしませんが、とにかく作れるだけ作っておいてほしいとのことです」

「分かりました。……でも、これって……製作して運び込む必要がありますよね?」


 気になるところはそこだった。私の言葉に、騎士は当然といった様子で頷いた。


「そうですね」

「それですと、製作して運ぶという分の手間が増えてしまうと思います。……運ぶというのも大変な作業だと思うのですが、私がその現場に行って直接作ってしまったほうが早いのではないでしょうか?」


 私の言葉に、驚いたように騎士がこちらを見て来た。


「そ、それは確かにそうかもしれませんが……危険もあります」


 わかっているし、もしかしたらバルーズ様はそれを懸念してそういったのかもしれない。

 でも、ポーションを製作して運ぶということは、何度もその危険を繰り返す必要が出てくるというわけだ。


「……かもしれませんが、困っている人がいるのなら出来る限り安定してポーションを供給していきたいのです。それも、一度、二度で済む話ではないでしょう?」

「そ、そうですね」


 私がそういうと、騎士はすっと一礼をした。


「バルーズ様に確認をしてきます」

「分かりました、お願いします」


 騎士が立ち去るとゆっくりと扉がしまっていく。静かになった部屋で、私はニュナへと視線を向けた。


「ニュナ、どうなると思いますか?」

「ルーネ様が自ら向かうと言った場合、バルーズ様もそれを許可すると思われます。ルーネ様が言った通り、何度もポーションを運ぶほうが労力と危険がつきまといますからね」

「分かりました。それでは出発の準備を整えておきましょうか」

「分かりました」


 ニュナはすぐにリュックを持ってきてくれたけど、別に特別何か必要な荷物があるわけでもないんだよね。

 そもそも、旅をしたことがないので荷物として何をもっていけば良いのかも分からない。

 なので、ニュナに任せ、私はひとまずポーション製作の準備に取り掛かっていると、騎士がやってきた。


「バルーズ様がお呼びです」

「分かりました」

  

 騎士の言葉にうなずき、私はニュナを連れて外へと出た。

 夕暮れ時となった外を歩き、本邸へと移動する。

 それから赤いカーペットが敷かれた豪華な廊下を抜け、バルーズ様の自室の扉をノックした。


「入って大丈夫だ」


 扉を開けると、バルーズ様がこちらを見てくる。

 殺風景とも思えるほどに、バルーズ様の部屋は相変わらず荷物等はほとんど置かれていない。


 仕事に使っているのだろう。最低限のテーブルや本棚だけがそこにはあった。

 私が一礼をすると、すぐにバルーズ様が口を開いた。


「……騎士から話を聞いた。まさか直接現地に向かうという提案が出されるとは思わず、驚いていたところだ」

「はい。こちらで製作して届けるよりもそのほうが早いし、長く安定して供給できると思いまして……」


 ……私は一市民としてそう思ったんだけど、実はそうでもないんだろうか?

 バルーズ様には何かしらの考えがあり、私に先ほどのような提案をしたのかもしれない。


「それはもちろんそうだ。直接現地に行ってくれるというのであればこちらとしても助かるが、良いのか?」

「私は大丈夫ですよ」


 バルーズ様は考えるように腕を組み、それから頷いた。


「分かった。それでは、護衛をつける。騎士たちをつけよう」

「分かりました、頑張りますね!」


 私がぐっと拳を固めると、バルーズ様は不安げに頷いた。

 

「……それじゃあすぐにでも出発をしてほしい。俺も魔物たちを殲滅するための戦力が整い次第、向かう予定だ。それと、ニュナ。レクリスと連携してルーネの護衛を頼む」

「かしこまりました。この命に代えてもお守りいたします」


 ニュナがすっと膝をつき、バルーズ様へと頭を下げる。


「あ、あんまり無茶しないでくださいね?」

「安心してください。何があっても魔物どもからルーネ様をお守りいたしますから」


 ……そ、そこまでしてくれなくても。

 私は少々過剰なニュナの反応にうろたえながらも、バルーズ様に一礼をして部屋を出た。

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