第23話
一日、100個のポーション。
私は午前のうちに作り終えたため、午後は自由時間となっていた。
私はのんびりと練金釜の手入れをしていた。
ニュナも私の部屋の掃除を行ってくれていて、お互い雑談を楽しんでいた。
「ルーネ様は薬師のお勉強をいつ頃から始めたのですか?」
そんなとき、不意にニュナのそんな質問が飛んできた。
そういえば、どうだったかな?
「私は……そうですね。物心つく前くらいからは薬師の訓練をはじめていた、と思いますね」
「え、そんなに前からなんですか?」
「はい」
私の言葉に驚くニュナ。私の最初の記憶では既にお母さんと一緒に薬師の勉強をしていた。
はっきりとは覚えていなかったけど、もうそのときにはポーションを飲んでいたと思う。
隣には姉の姿もあった。あんまり勉強は好きじゃなかったみたいだけどね。
「凄いですね。でも、薬師のポーションって基本的なレシピなどはありますけど、ちゃんとしたものはないんですよね? どのように学習ってしていくんですか?」
「ある程度薬師の技術を持った人に付き添って教えてもらうんですけど……」
……私が受けた指導を一から説明していくよりは、実際にやってみたほうが分かりやすいかもしれない。
私も誰かに教えるのは嫌いじゃないし、ちょうどニュナでそれを試してみるのもいいかもしれない。
私はじっとニュナを見ていると、ニュナはきょとんとこちらを見ていた。
「なんでしょうか?」
「ニュナって水魔法は使えますか?」
「は、はい……一応は」
「火魔法は?」
「あまり得意ではありませんが、最低限は」
「それでは、大丈夫ですね。一度作ってみますか?」
私がそういうと、ニュナは驚いたように目を見開く。それから彼女は不安げな声をあげる。
「え!? で、でも私作ったことないですよ!?」
「大丈夫ですよ。作るだけであればそう難しくはないんです。ただ、質の向上や一人で自分の魔力をポーションにするには長い時間がかかってしまうんです」
「それ、私大丈夫ですかね?」
「はい、それ含めて教えていきますね!」
人によって魔力の質というのが違う。
血液型というものがあるように、魔力も細かく分かれてしまっている。
それをすべて把握し、習得させるのは今からでは難しい。
ただ、その基礎だけなら問題ない。
私も教えるのは好きだったので、ニュナの背中を押して錬金釜の前に用意してあった椅子に腰かけてもらう。
「だ、大丈夫ですかね?」
「大丈夫です、私に任せてください」
着席したニュナはとても緊張しているようだった。
「こ、これ……その、私の魔力水が原因で練金釜に何か問題とかでないですよね?」
「大丈夫です! そんな柔ではありませんから!」
「そ、それでは……わかりました」
ニュナは魔力を込める。それからそこに魔力水が生まれた。
錬金釜の底のほうに少しだけ。
「あんまり出てないですね」
「私、その……そこまで水と火魔法は得意ではないので……」
「なるほど、分かりました。それでも、問題はありませんので……それじゃあやっていきましょうか」
私はニュナの魔力水を調べてみた。
魔力水 質 Eランク
「今、その魔力水について調べてみました。魔力水のランクはEランクになりますね」
「え?これに対して使うことができるんですか?」
「そうですね。でも、ニュナも鑑定魔法は使えますよね?」
「……そうですね。とはいえ、私が使えるのはあくまで毒などの異常がないかの確認程度ですね。鑑定魔法はあまり便利な魔法ではありませんので」
「そういえば、そうですね。私もポーションと土関係以外では使えないですしね」
「なるほど……。それでは分かりました。今回は、初めてポーションを作る人を対象としてやってみようと思います」
「は、はい……私も初めてですから、お願いします」
「まず、今のこの魔力水の質が現在Eランクですね。本当はこの質を上げるための作業を行っていきます」
「……し、質を、ですか?」
「はい」
「どのようにでしょうか?」
ニュナが首を傾げ、こちらを覗きこんできた。
「魔力水の状態を調べ、その魔力構成を把握します。例えば、本来であれば一本の線になっているべき魔力構成があったとして、その線が曲がってしまっていたり、直線なんだけど、途中はみ出てしまっているような部分があればそのはみでてしまっている部分の修正を行っておきます」
「……た、確かにそれは分かりましたけど、魔力構成への干渉は私にはできませんね」
「……そうなんですか?」
「はい……ていうか、多分ですけど、その一部の優秀な魔法使いからそのような話を聞いたことがあるくらいですね」
そうなのかな?
でも、母さんにはこれができるようにならないと薬師として一流になることはできないと言われていた。
「……なるほど。それでは今回はその調整はなしとしましょうか」
「は、はい。すみません……」
「大丈夫ですよ! このまま行きましょう! 薬草を入れていくんですけど、どれにしますか?」
「ど、どれがいいんでしょうか?」
「センスですね!」
「そんな!」
ニュナが少し困っている。
……この前、服を選ぶときは私も困らせられたからおあいこ、といったところだね。
「別に困らせるためではないんです。……何度か挑戦してみて、感覚を磨いていくしかないんですよ」
「わかり、ました……そ、それではこの草をお願いしますね」
「なるほど、分かりました」
アカサ草を選んだニュナにそれを渡しながら、私は続けて口を開いた。
「まず、どの程度薬草を入れるかによっても効果が変わってきます」
「い、いきなりからハードル高いですね……」
「大丈夫です! ニュナなら」
「……そ、それはまたプレッシャーになりますが」
ニュナはごくりと唾を一つのみ、それからアカサ草の葉を一枚切って魔力水に落とした。
「これでどうするのでしょうか?」
「魔力水を熱していただければ、薬草が溶けていきます。薬草は、適量の水と熱を与えると溶けるようになっていますので」
「分かりました」
ニュナが火魔法を使い、熱していく。
そして、沸騰し、出来上がった。
「これで、いいんですか?」
「あっ、これ毒ですね」
私は少しだけ舐めてみてから、そういうと、ニュナは驚いたようにそちらを見た。
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