第15話 ニュナ視点
私はニュナ。ルーネ様の専属メイドだ。
腕のたつ薬師がいれば、私がその人の専属メイドになることは、バルーズ様から聞かされていた。
私たち使用人にとって、仕える相手というのは非常に大事になってくる。
特に専属メイドともなれば、四六時中同じ空間にいることになる。
だからこそ、私は、わずかながらの不安を覚えていた。
……一体薬師はどのような人なのか。
薬屋を訪れるときに私も同行し、後ろから眺めていた。
……まず真っ先に思ったのは、二人の女性。確か、ララとリフェアだったか?
その二人だけは、やめてほしいと思った。
……バルーズ様も苦手としているタイプの女性だったからだ。
私としては、腕の立つ薬師としてルーネ様だったら良いのにと、初めて見たときから思った。
謙虚で、どこかマイペースな彼女ならば仕えやすいと思ったからだ。
結果的に、私の目は正しかった。彼女が腕の立つ薬師であり、私は彼女の専属メイドとなった。
……そして一日一緒に生活して――。
今私はその報告のため、バルーズ様のもとへと足を運んでいた。
バルーズ様の書斎の扉をノックする。
「誰だ」
「私です、ニュナです」
「……そうか。入れ」
扉を開けると、ちょうど安堵の吐息を漏らしていたバルーズ様がそこにはいた。
……以前雇ったメイドに寝込みを襲われかけたからだろう。
バルーズ様の子どもが欲しいという者はいくらでもいる。
私? 私は別に恋愛には興味がない。可愛いものを愛でるのが好きなだけ。今の私のお気に入りはルーネ様。
「ニュナ、彼女を一日見ていてどうだった?」
「……ルーネ様は……いじめられていたことを一切口にすることはありませんでした」
懸命に笑顔を浮かべていた。
……ルーネ様はとても強く、そして私は彼女を支えたいと思わされた。
「やはり、あの家であまり良い扱いはされていなかったか」
……誰だってあの薬屋での様子を見れば、分かるだろう。
姉二人はあれほど綺麗な服を持っているのに、ルーネ様は一切服を持っていないんだから。
「そうみたいですね。満足に外に出してもらえていなかったようです」
「……そうか。まあ、少しでも楽しみながら生活してくれればそれでいいんだがな。とりあえず、ラフィーナの薬屋には軽くではあるが処罰を与えるつもりだ」
「どのようなものか、お伺いしてもよろしいでしょうか?」
「これまで、公爵家お墨付きの薬屋ということだったようだが、それを剥奪する。それで、また一からやり直してくれればいいんだがな」
バルーズ様の言葉に私もすっと頷いた。
やりすぎない程度の制裁。……ちょうどいいのかな、と思う。
「そうですね」
「今後もルーネのことは任せる」
「はい、薬師として滞りなく仕事ができるよう、全力でサポートをしていこうと思います」
「それと、来週からで良いが、ポーションの納品に関してのスケジュールを組んである。それをルーネに伝えておいてほしい」
ぺら、とバルーズ様が一枚の紙をこちらに向けて来た。
私はそれを受け取り、目を通していく。
「かしこまりました。バルーズ様はまだお仕事をされるので?」
「ああ、まあな。色々と仕事がたまっていてな」
バルーズ様は眉間をもみほぐすようにしながら、再び机に向かった。
それ以上邪魔にならないよう、私は一礼だけを残し部屋を出る。
渡されたスケジュール表を丁寧に折りたたみ、屋敷内を歩いていく。
掃除を行っていたメイドたちと軽く情報共有を行う。話しているのは、○○執事と○○メイドが付き合っているみたいよー、とかそんな話。
わりと楽しい情報共有を済ませた私は、寝具をもちだす。
「さて、私はルーネ様のメイドですから、ルーネ様とおなじアトリエで寝るとしましょうか」
寝起きのルーネ様も見たいし。
私はウキウキ気分でアトリエへと向かった。
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