第10話
バルーズ公爵とともに、私は屋敷へと向かっていた。
……バルーズ公爵様と同じ馬車に乗せられるとは思っていなかった。
バルーズ様は非常に整った顔をしている。金色の髪は逆立つように伸びている。後髪を三つ編みに縛り、さっと伸ばしている。
それでいて身長は高く、今も背筋をぴしっと伸ばしていた。
……これはさぞモテるのではないだろうか?
人並みに色恋話が好きな私としては、バルーズ様の将来のお嫁さんについて少し気になりながら、彼を観察していると、不意に目があった。
「荷物などは良かったのか?」
「はい……それに、万が一必要があれば取りに戻ればいいだけですからね」
私は、少し緊張しながらもそう答えた。
ちなみに、別の馬車では私が普段使用していた錬金釜を運んでもらっている。
私に必要なのはそれくらい。
一応、最低限の着替えだけは持ってきたけど、私自由に使えるお金とかほとんどなかったから、姉さんたちみたいにおしゃれな服とか持ってないので、本当に荷物はかなり少ない。
髪などを整える暇もなかったので、だらしなくぼさぼさと伸びきったままだしね。
「それにしても……街の薬屋がそれなりに有名なのは知っていたが、確かにあれほどのポーションが作れるのならばその理由も頷けるな」
バルーズ様の言葉に、私は頬をかいた。
「そんな褒められるような腕ではありません。まだまだ、未熟ですし」
私はもっともっと良いポーションを作りたいと思っている。
今日来てくれた人たちはバルーズ様だけではなくすれ違った騎士までも褒めてくれたけど、まだまだ私は上のポーションも作れると思っている。
「そうか。ひとまず屋敷にアトリエを用意させている。……一応、知識のある者に道具などの用意はさせたが足りない物があれば自由に言ってくれ」
「あ、アトリエ!?」
「ああ、そうだが……何かおかしなことでもあったか?」
そ、そんなものが用意されているとは思っていなかったのでつい声をあげてしまった。
「アトリエって……別にそんなものを用意していただかなくても」
部屋一つと錬金釜さえあればポーションは作れるし……。も、もちろん嬉しいけどそこまでしてもらうのは――。
「いや、こちらとしては最高のポーションを納品してもらいたいんだ。……知っているだろう? 我が領内では太陽の涙による魔物の襲来がある。……それに対抗するために、安定して良いポーションを納品できる人間が欲しいんだ。こちらに出来ることがあればいくらでも言ってほしい」
「あ、ありがとうございます!」
……まさかそこまでの好待遇を用意されているとは思っていなかった。
それだけ期待されていて、同時に必要とされているんだ。
……頑張らないと。
「まあ、とりあえずアトリエについてから必要なものがあれば教えてほしい」
ちょうどバルーズ様がそう言ったときに、馬車は止まり屋敷に到着した。
で、でかい……。
私はバルーズ公爵家を見て、頬が引きつる。
これまで私が寝泊まりしていた部屋が100個以上は収まりそうな屋敷だった。
馬車から降りると、とても綺麗な庭だった。それを私が踏みつけて汚してしまっている気がする。
た、たぶん私よりもこの庭のほうがよっぽど清潔度みたいなのは高いと思う。
そんな場所を私が歩いていいのかと不安になってしまう。
「あそこが、キミのアトリエだ」
バルーズ様が指さした先――大きな屋敷に隣接して作られていた建物がそこにはあった。
二階建ての大きな建物は……く、薬屋よりも大きいよ!
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