お買い物に行こう!〜ラザイア視点
お久しぶりです。気がつけば日々が経過していました。時間の流れの速さに驚愕です……。
○月X日
ラザイアさんとお買い物。
「女の子の買い物」って言われた時は何かと思ったけど、確かに、下着買うのにアーシュさんつきあわせる勇気はない。
それに、人とプライベートな買い物って初めてしたけど、ラザイアさんのおかげですっごく楽しかった。
下着屋さんでは、色々勧めてもらってドキドキしたけど、普段の自分じゃ絶対選ばなきゃものも試せたし、それは、その後に回った服屋さんや小物屋さんでもおんなじ。
人と一緒に買い物に行くの、何が楽しいんだろうって、思ってたけど、すっご〜〜く楽しかった。
ラザイアさんがお話し上手だ、ってのもあったんだろうけど。
カフェのお昼ご飯も美味しかったし、今度はケーキの美味しいお店にも行こうって誘われちゃったよ。
イチゴのタルトがオススメなんだって。
図々しいけど、お姉ちゃんってこんな感じなのかなって思っちゃった。
また、一緒にお出かけ、できた良いなぁ。
「さくらちゃん、今日は女の子のお買い物に行きましょう!」
扉を開けると同時に告げれば、さくらちゃんがキョトンとした顔でこっちを見てる。
真っ黒のクリクリな目が大きく見開かれた様子は小動物を連想させて非常に可愛い。
「女の子のお買い物………ですか?」
コテンと首をかしげる様子にキュンとしながら、低い位置にある頭をヨシヨシと撫でてみる。
サラサラの黒髪が気持ちいい。
「そうよ。お洋服とかもだけど、小物とか化粧品とか。イロイロ必要でしょ?」
告げながらも、コッチを伺っているアーシュのやつにチラッと視線を流す。
さくらちゃんが落ちてきた日に洋服の準備は思いついても下着にまで気は回らなかった前科持ちだ。
どうせ、そこら辺も適当なはず。
及び、遠慮がちなさくらちゃんが自分から強請れるとも思えないし。
「下着だって、ちゃんとしたもの揃えたいでしょ?連れてってあげるから、一緒にえらびましょう?」
コソッと耳元で囁くと、さくらの頬がほんのりと染まりながらも嬉しそうにコクコクと頷かれた。
さくらの体格から、適当なショーツと肌着をプレゼントしてたけど、やっぱりブラは合わせてみないとね。
「って訳で、ついてこなくても良いから。むしろ、男は邪魔よ」
言い切って、さりげなく立ち上がろうとしたソウガにも冷たい目を投げかける。
「ソウガも今日は遠慮してね」
何を見込まれたのかは知らないけど、あの日の飲み会で人化できる事も正体らしいものも、教えてもらった。
どうやら、途方もなく長生きしてはいるみたいだけど、それでも男は男よ。
ランジェリーショップについてこようなんて図々しい。
「颯牙もダメですか?」
不思議そうなさくらちゃんに苦笑。
なんでソウガがさくらちゃんに人化できる事やその他諸々を教えないのかと思ってたら、こういう時に警戒させないためもあったよかしらね?
「そうね。動物が入れない場所もあるから。店の外でつないでおくのも可哀想でしょ?」
まぁ、そっちがそうくるなら、逆手に取らせてもらいますけどね。
少し困ったように眉を下げれば、納得顔のさくらちゃん。
「そうですね。颯牙、大きいから怖がる人もいるかもだし」
うん。思った通りの素直な反応。
「颯牙、良い子でお留守番しててね?」
頭を撫でながら言い聞かせるさくらちゃんに見えないようにジロリと睨まれるけど、し〜らない!
「じゃぁ、お昼も外で食べてくるから気にしないで良いわよ?」
「いってきます」
ペコリと頭を下げるさくらちゃんの手を引いて家を出る。
扉が閉まる寸前にチラリと背後を見れば苦虫を噛み潰したような顔をしたアーシュとソウガ。
やったわ!
さくらちゃんと今日は半日2人っきりよ!!
どこに行こうかしら!
冒険者ギルドでも高ランクのアシュレイは、役所からの指名依頼も多い。
仕事は、対応も早く丁寧と文句なしだったんだけど、
本人の意思とは関係ない事で、トラブルが絶えず問題物件扱いされていた。
顔良し収入高し性格まあまあな為他の若い女性職員じゃぁぽうっとなっちゃって仕事にならなかったのよね。もしくは、誰が対応するかで骨肉の争いになったり(女の蹴落とし合いは凄いわよ?)。
さらに、男性職員が対応に出ようにも、女性職員の目が怖くて出れない。
仕事は頼みたい。だけど、それにともなう人的被害が大きくて頼めない。
そんな、お馬鹿な板挟み状態を瓦解すべく、誰も文句を言えない、さらに言えば、優良物件に興味がなく事務対応できる人材って事で、私が一手に引き受ける事になった。
うん、いい迷惑。
だって、たとえ他の仕事してる最中でも、ヤツがやってくると問答無用で呼び出されるんだもの。
まぁ、本人にしてみたら間違いなく巻き込まれただけと分かってるし、話してみれば、さっぱりとした性格でコッチを色眼鏡で見る事もないしで、何度も対応しているうちに愛称で呼ぶ程度には仲良くなっちゃったのは誤算だった。
「信じてたの!ズルイ」
って呼び出されたって知らないっての!
なんで友人関係気づくのに職場の知り合い程度の女に文句言われなきゃなんないのか。
もちろん、泣く事もできないくらいに論破してやりましたが、何か?
半ば意地もあって友人関係は続けていたけれど、正直、面倒だから深く関わり合いにはなりたくない。
それが私のアーシュに対するスタンスだった。
の、だけど。
あの日、私はアーシュと友好関係を結んだままにしていた過去の判断を大絶賛する事となる。
突然やってきたアーシュの陰から、ちょこんと顔を出した女の子。
クリクリの目は真っ黒で少し潤んだ上目遣い。
長く黒い髪は、結ばれていてすらその手触りの良さを想像できるほど艶々。
小さく華奢で、でもそのすらりと伸びた手足はバランスよく健康的。
なに、この可愛い生き物。
一目で目を奪われた。
同期が半端ないんですが。
あ、こっち見た。
ヤバい。顔がニヤける。
職場では秘密にしているけど、私は大の可愛いもの好きだったのだ。
ピンクにリボン。フリルにレース。ぬいぐるみや人形だって好きだし、ミニチュアハウス作りの腕は素人ながらなかなかのものだと自負している。
なんで職場では秘密かって?
悲しいくらい、メルヘンな世界が似合わないからよ。
言わせないでよ!
ヒールなんて履いちゃえば男性の半数は見下ろす事になる高身長。
整ってはいるけれど細い眉につり上り気味のアイスブルーの瞳に細い眉、細く高い鼻梁に薄めの唇。
カールさせようと半日巻いてても30分で元に戻ってしまう形状記憶のストレートは冷たい月のようなプラチナブロンド。
………微笑もうものなら、完全に悪役な見た目なのよ。
私だってふわふわの天然巻き毛や子犬のような黒目がちのタレ目なら、隠したりしなかったし、もうちょっと穏やかな性格になってた筈なのに!
って愚痴ったら、「無い物ねだりだ、贅沢もの!」と数少ない女友達からは罵られたけど。
話逸れたわね。
そんな隠れ可愛いものフェチの私の心をビンビンに刺激する美少女の正体は異世界からの旅人で、貴重なギフト持ちだった。
さらに、高位の精霊獣(?)が魂魄契約を受け入れちゃうくらいの規格外。
だけど、その中身はどこまでも自分に自信がなくて、それでも、諦めたくないとがんばっちゃうような健気な可愛い女の子。
しかも、磨けば磨くほど光り輝くであろう逸品。
もう。
抱きしめて、甘やかして、飾り立てて、一緒に遊びたい!!
って、欲望が、ようやく今!
叶えるチャンスを手に入れたのよ!
これが興奮せずにいられましょうか!!
「さくらちゃん、こんなのは?」
「ええ〜、こんな可愛いのにあいませんよぅ。だいたい、着る機会ない……」
ヒラヒラピンクのまるで妖精の薄衣のようなベビードールに真っ赤になるさくらちゃん。
「さくらちゃんなら絶対似合うわよ。じゃぁ、私のお家で今度パジャマパーティしましょ?ね、決まり!」
数十年前に落ちてきた渡り人のおかげで、ランジェリーはかかなり進化したらしい。
私はその恩恵が広まった後の世代だからありがたみがよくわからないけど、可愛いのは正義よね。
「見えないオシャレ」って文化は素敵だと思うの。
「こっちのセットもいいわねぇ。思い切って黒いレースとかも、さくらの髪とあって素敵かしら」
「そんなセクシーなのはラザイアさんにお任せです。私には無理です〜〜」
「じゃぁ、私が黒にするから色違いでお揃い!ね?」
にっこり笑顔で言い切れば、赤い顔でコクコク頷くさくらちゃん。
やったわ!お揃いゲットよ!
その後も、お洋服や小物を見て回って、可愛いカフェでランチして。
アァ、可愛い女の子と過ごすとなにしても楽しい。
しかも、さくらちゃんがいると私が可愛いもの選んでても違和感ないし!
私1人だと店員さんに「コッチにお似合いの服が〜〜」って誘導されたりするのよ(泣)。
自分じゃ着れないけど(似合わないからね!)自分の選んだものをさくらちゃんが着てくれるだけで、すっごい幸せ。
また、一緒に遊びましょうね!
読んでくださり、ありがとうございました。
さくらは面倒見の良いお姉さんとして慕っている模様。
ラザイアさんは無類のかわいい物好きで、さくらを眺めてはモエモエしております(笑
ギフト、あんまり関係ない気もします。
ラザイアさんは7人兄妹の上から3番目の次女という若干不遇な立ち位置。ちなみに姉以外は全部男兄弟の上、姉は少し年が離れて早めに嫁に行ったため、女の子トークに上気味です。
さくらは容姿行動性格と全てツボ。
今後も「できる姉」ポディションをキープしつつこっそりハアハアしてることでしょう(笑




