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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

「夕焼けに捧げる」※初投稿&自殺表現注意

作者: 時雨~ろっとさん~

どうも、こんにちは。

ろっとさん、とでもお呼び下されば幸いです。初投稿ということで…なにを書こうか迷いましたが、思いついたものをそのままぶわあああっと文章にしてしまいました。中々に読みづらい、拙い文章だとは思いますが、最後までお読みいただければ嬉しいです。

風が、強く強く吹いていた。

僕の背中を押すように。


どこまでも透明な夕景が、

開けた視界に広がっていた。

僕の心情を嘲笑うかのように。


「………♪」

僕は普段歌わない、鼻歌を歌ってみた。

いつもなら、音痴だのなんだのと言われるから、人前では極力歌なんて歌わない。

でも今は別だ。

ここには僕の他に誰もいない。

最高の気分だ。

もっとも、ここがあの憎き我が学び舎でなければ、もっといい気分だっただろうが。


僕は今、何処にいるのか、って?


屋上さ。

どこまでも恨み、どこまでも憎んだ、有り難き我が学び舎のね。

僕はもう、柵を飛び越えた。

後は、体を重力に任せてあの世へ旅立つのみ。


「遺書も書いたし、学友に別れも告げた。うん、もうやり残したことは無いね」

最終確認を口に出し、僕はうんうんと満足気に頷く。唯一の心残りは、三学期の成績を貰い損ねたくらいか。が、そんなことはもうどうでも良い。

僕は不敵にニヤっと笑うと、ふっと一つ息をつき、「さあ出発だ」と足を踏み出そうとした、まさにその瞬間。


がちゃり、と背後で音がした。

何故か、あまりにも耳につく音だった。

僕は思わず振り返った。

そこには屋上へ上がる為の扉がある。

が、今は開け放されていて、ドアは開いている。僕はそこに人の影を探した。

「ドアを開ける」という行動は、この校舎にいる生物の中で人間しか出来ないからだ。

僕は一瞬人の姿が見えず、ぎょっとした。

暫くの間、ドアの近くを注意深く見てみたが、人の姿が見えない。

でも、そこに人は存在していた。

僕に見えなかっただけで。


突如、足元から声がした。

「ねぇねぇ、おにいちゃん」

無邪気な声だ。僕が大嫌いな人種の。

不審感を抱きつつも声の出どころに、目を向けた。出来るだけ嫌そうな顔で。

そこには__なるほど長身の僕には見えないわけだ__2、3歳ほどの女児が立っていた。

「おにいちゃんてば」

再び声をかけられた。

「僕は生憎きみのお兄さんじゃない上に、とても忙しい。分かったら早く先生のところにでも行くんだ」

僕は嫌悪感を露わにした顔で、淡々とそう告げた。こんな子供風情になにが___

「おにいちゃん、死のうとしてるんでしょ」

鬱陶しいソイツは、新しい遊びを考えついた子供のように__実際子供なのだが__きらきらと目を輝かせてそんなことを言った。

僕はいよいよ疑心を持った。

そもそもこんな小さい女児が、なぜ此処にいるのだ?ここは高校だぞ。決して幼稚園じゃない。僕は保護者でもない。

「きみにそんな事は関係ないだろう。

いいか、誰の妹か親戚か知らんが、ここはきみのようなお子様が来るような場所じゃない。今すぐ帰った方が良い」

苛立ちと不審感をそのままに、そう言った。

すると、目の前のヒトはあからさまにしゅんとした表情をつくった。

が、すぐに顔を変えて「優しい笑顔」をつくる。そしてそれを、僕に向けてくる。

僕は__本日二度目になるが__ぎょっとした。ソイツの目が、笑っていなかったからだ。

冷たいなにかをたたえたその目は、まるで人形の目のようだ。

「おにいちゃん、死ぬ気なんでしょ?」

先ほどと同じ問い。だが、その気迫は僕が真実を話さざるを得なくなるほどの威力が、確かにある。

「あ、あぁ…そうだ…」

僕はたじろぎながら、思わず答えてしまった。

しまった、と思った。

こんなどこの馬の骨とも分からぬやつに、僕がこの人生の幕を閉じることを、明かしてしまったのだから。

すると、間髪を入れずヤツは

「どうして?」と聞いてきた。

予測はしていた、と言いたいところだが不覚にも、そこまで思考が及んでいなかった。

少しだけ考え、簡潔にこう答える。

「生きることに価値を見いだせなくなったからさ。きみには分かるまい」

これでどうだ。大人しく去ってくれるか。

「死ぬことにもかちはないよ」

と、ヤツが一言。

「ははっ、そうかい。でもね、僕は死ぬことの方が価値がある、と気づいたんだよ」

僕は億さず答えた。

可愛げの無い女児だ。気に食わない。

が、しばらくの間僕はヤツと会話をしていた。


「じゃあ、おにいちゃんの人生にかちは無かったんだね」


「あぁ、そうさ」


「残念だね」


「残念じゃないさ。

僕には来世が約束されている」


「どうしてそう言えるの?」


「神と契約したからだ」


「じゃあ、そのカミサマは偽物だね」


「なんだとッ…

なぜそう言い切れる…!!」


「だって」

そう言い始めて、ヤツは確かに笑った。

僕を、嘲笑った。


「わたしが、カミサマなんだもん」

その言葉と背中からのトン、という軽い、あまりにも軽い衝撃と同時に、僕の身体は何も無い空間に放り出されていた。


「あ……」

全てがスローモーションに見える。

いつかに見た、映画のワンシーンの様に。

あの映画は、どういう話だったっけ。

そんなどうでもいい記憶と共に、僕の中である感情がふっ、と沸き起こった。


「 し に た く な い 」


僕は、必死に空を掻いた。

足掻け、という言葉が頭で鳴り響く。

僕の、人間としての本能という奴だろう。


するとヤツは

「結局、死にたくないんだね。

やっぱり人間ってよく分からないや」

と呑気に首を傾げている。


そして、捨て台詞の様に

「転生は、無いよ」

と、付け加えた。





「あーあ。死んじゃった。

人間のことを知ろう、なんて無謀なのかな」

創造主は、密かに涙を流す。


どうでしたか?

アドバイス、ダメだし、感想などお待ちしております。

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