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第7話 ひとりぼっち

今回は我ながら酷い。疲れてるのかなぁ?

「....ださい」


細く優しい声が語りかけてくる。睡眠と覚醒の狭間にいる僕はその声に反応できず、誰の声かも分からない。


「起きて下さい、朝ですよ。朝から起きた方が良いですよ」


僕は体を揺さぶられ、意識が覚醒する。


「ん、ニカ?おはよう」

「おはようございます、タクミさん。早起きは規則正しい生活の第一歩ですよ?まぁ、好きな時間まで寝てていいんですが。どうします?」


ニカが僕の胸に乗っている、起こしてくれたようだ。全く重くない、流石妖精といった所か。


「じゃあ起きるわ。太陽も昇って眩しいし、やりたい事もいっぱいあるし」

「そうですね。生活基盤を整えていきましょう」

「それよりも、ニカ。着替えた?」


昨日はオレンジのドレスだったが、今日は胸元からヘソまでザックリ開いたセクシーなピンクのドレス。正直可愛い。


「はい。今日は際どい格好で、タクミさんを誘惑しようと思って。どうです?似合ってます?」

「その誘惑に乗ったらどうなる?」

「ロリコンって笑ってあげます」


冗談を毒づきで返される僕の心のダメージは計り知れない。ニカは確かに愛らしい容姿だが、幼い見た目では無い。至って普通の美少女だ。普通の美少女は矛盾してる気がするがこの際は大目に見よう。


「ニカ何歳なんだ?」

「どストレートですね。何歳に見えます?」

「あ、そういうのめんどくさいのでいいです」


何歳に見える?は誰も得しない悪しき文化だ。歳を当てにいくのは失礼になり、少なく見積もらざるを得ない。そうしてもその予想が本来の歳よりも少なかった場合は雰囲気が悪くなって気まずくなるだけだ。本当に誰も得しない。

そんな事は置いといて普通にニカの歳が気になる。僕は悪いと思いつつどストレートに歳を聞く。


「この世に生を享けて87年位ですかね?」

「は?まじで?ロリ通り過ぎてお姉さんですらも無かった!!」


この手の話では良くある設定だが、目の前にすると受け入れるのに時間が掛かる。


「僕も敬語使った方がいい?」

「ダメです」


僕は年上に敬語を使う事が常識なので、使用を問うが遠慮では無く、拒否された。


「主従の関係なのに対等なのは許せません」


前々から思っていたが、ニカはどうしてそこまで僕に尽くし従いたいのだろうか?


「私がタクミさんを幸せにするんです!!私はタクミさんの幸運を呼ぶ従者になるんです!!」


なんだか、1人で熱くなっている。いまいち意味が分からないがこれ以上聞いても余計に混乱するだけだろう。


「ところで、ニカは今まで何人に仕えてきたんだ?」


僕は一つ疑問に思った事を聞く。ニカは少しSっ気があるが良く気配りが出来て主人思いで尚且つ可愛い。尽くす事が好きなら90年近くも生きているので何人に仕えて来たのか不思議だった。


「お恥ずかしい話ですが、タクミさんが初めてのお相手です」

「マジで?」


こんなに仕える事を好いているのに80年強もずっと1人だったとは。


「理由を、聞いてもいいか?」

「あ、はい。大丈夫ですよ?別に深刻な理由じゃ無いので」


嫌な予感がするが、好奇心が勝った僕はニカに理由を聞くが、ニカの言葉に少し安心する。


「単純に私達従属妖精は主人が居ないと生まれた地を離れられないんですよ」

「え?生まれた時からずっとここに?1人で?」

「はい、そうですね。寂しかったんですよぉ?タクミさんがもっと早く来てくれれば」

「...ごめん」

「ふふふ、冗談です。まぁ、タクミさんが来てくれて嬉しいのは事実ですが」


90年近くもこの森に1人でいた事に驚きよりも悲しみを隠せない。ニカがこんなに尽くしてくれる理由も何となく分かった。それよりも変な人と契約しないで良かったと心からそう思う。


「僕が」

「はい?」

「僕が、僕がニカを!!外に連れ出すから!!絶対連れ出すから!!」

「ふふふ、はい。お願いします」


ニカは慈愛に溢れた笑顔で僕に向いた。


「そうと決まれば尚更生活基盤を整えなくちゃですね」

「ああ。すぐ終わらせて明日には街へ行けるようにする」

「無理ですよぉ」


僕の覚悟にニカはニッコリとツッコンでくれる。


「とりあえず光源と寝床の用意だな」

「ずっと外って訳にはいきませんからね」


僕は『具現化』を起動し、ランプを見積もる。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


『キャンドル草式ランプ』



必要材料



キャンドル草 ×5

ガラス (小) ×2

鉄 (小) ×1



所持材料



キャンドル草 ×0

ガラス (小) ×0

鉄 (小) ×0



素材が足りません



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「キャンドル草ってこの辺に生えてるのか?」

「はい、そこに」


聞いた事の無い草の名前が出てきて幸先が不安になりながらも、思ったより近くにあったようで、ニカが僕が昨日寝ていた場所を指さす。


「昨日もしかすると燃え移ったかもしれねぇの?」

「あはは」

「あははじゃねぇわ!!」


僕はニカの頬を思いっきり抓る。


「激しくしないで下さい。優しく!!優しくぅ!!」

「さっきからちょいちょい誘ってるだろ!!」

「気付いちゃいました?」

「気付くわ!!」


ニカが今日は意味深な言い方ばかりする。結構嬉しかったりするのだが。

僕はぶつくさ言いながらキャンドル草を手当たり次第採取した。


「鉄か。この当たりに鉄鉱石とか──」

「2キロ先に洞窟があります!!」

「流石ニカ。出来るなぁ!!」


今度は優しくニカの頬を摘む。


「じゃあ行くか」

「はい、一緒にイキましょう」

「もう、僕はツッコマナイ」

「そんな、焦らさないで!!タクミさん!!」


僕は贈り物(ギフト)から剣を取り出す。


「洞窟って危ないモンスターとか居ないといいけど」

「襲われたらひとたまりもありませんしね?食べられちゃいますよ?」


まずい。全部下ネタに聞こえてしまう。というよりニカがニヤニヤしながらこちらを見てくる。


「いいから出発だ」

「はい!!」


もうめんどくさい事にならない様に出発と言い換えて、僕達は洞窟へ向かった。


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