表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/74

オカエリナサイ

 

「ユーリ様、こちらです! 揺れると思いますけど、なんとか馬車が通ると思います!」


 馬車を降りたサリーナの先導に従ってアリスが馬車を進める。

 森に入った所で、サリーナとリタがずいぶん元気になったようだ。

 ……ボクは逆に、この世界に来た当初を思い出して少し元気がない。

 うーん、一応エルフなのにこんなのでいいんだろうか?


 リタは身体が覚えているのだろうか?

 身軽な事に木の枝から枝へ飛び移りながら森を奥へと進んでいく。


「あうあー! うあー!」


 あ、あれは遊んでるだけっぽい。

 まぁ、元気になったのは良いことだけれど。


 森の中は木々の隙間から木漏れ日が差し込み、思ったよりも明るい。

 その風景は幻想的で、ずっと見ていても飽き無さそうな光景が続く。


 とはいえ、動物や魔物も生息する森なので余り油断はできない。

 ボクも生命探査(ライフサーチ)の魔法を展開して周囲の索敵を行いながら進んでいる。


「サリーナ、この森にはどんな魔物が生息してるの?」


「そうですね。 色々なものがいますが特に危険なのは熊の魔物であるレッドベアや

 毒を持つ巨大な蜘蛛、ポイズンタラントなどでしょうか。

 奥にいけばより危険な魔物も増えますし、最奥ともなると古竜種すら潜んでいると聞きます」


 あぁ、そういえばエタドラでは6大古竜のうちの1匹が封印されていたんだっけか。

 獄炎竜、極氷竜、地帝竜、暴風竜、聖霊竜、混沌竜……。

 たしか、大森林に封印されているのは地帝竜(アースドラゴン)だったはずだ。

 エタドラで実際に開放されたのは混沌竜(カオスドラゴン)だけだけれど、アレが開放されるとヤバい。

 この世界では封印が解かれない事を祈るのみである。


「あとは、オークやゴブリン、コボルトといった亜人種も集落を作っています。

 特にオークとエルフは敵対していますので、ユーリ様もお気をつけ下さい。

 コボルトは中立で、逆に友好的なのは樹精霊(ドリアード)や妖精族などでしょうか?」


 妖精か、あの子たち可愛いんだよな……。


「お姉ちゃん! 私も妖精さんに会いたい!」


「ふふ、エステル様。 エルフの里にも妖精族の方が住んでいましたから、きっともうすぐ会えますよ」


「サリーナ殿! 妖精は幼女ばかりというのは本当でござろうか!?」


「……ローリーさん。 妖精族は幼く見えても貴方より年上の方が多いですから。

 失礼な真似はしないで下さいね……?」


 しばらく森を進んだ所で、不思議な何かを感じる。

 何も無いのだけれど、何か膜のようなものがあって、でも触れようとしても触れなくて……。


「アリス、何か感じる?」


「否。 特に何も問題はございません。 何かありましたでしょうか?」


「ユーリ様は感じられたのですね。 森全体にかけられた惑わしの結界だと思います。

 といっても、私も結界の中に入ってからでないと感じられないのですけど。

 外側から結界の存在に気づけるのは、長老様とユーリ様くらいではないでしょうか」


 なるほど、これがエルフの里を隠蔽している結界か。

 見た目だけでなく、魔力自体の隠蔽もされているらしく、魔力探査(マジックサーチ)にも反応はない。

 これは、上手い事使ったらドラグーンのステルス機能に使えそうだ……。

 覚えておこう。


「アタイは何にも感じないけどなぁ。 でも、それがあるってことはそろそろ目的地に着くってことかねぇ?」


「はい。 結界の中に入った所で結界を無効化する術式を起動します。

 そうすれば、里まですぐですよ!」


 サリーナの言葉どおり、膜を抜けて少し進んだところに苔に埋もれた石碑らしきものがあった。

 サリーナ曰く、これが結界を無効化するための術式を刻んだ石版ということらしい。


「これには里に住むものの魔力紋(マジックパターン)を登録してあります。

 魔力紋(マジックパターン)は一人一人異なりますので、外部の者では起動できないんですよ」


 サリーナが石碑に手をかざすと、淡い光が石碑から漏れ始める。

 表面の文字に関係なく浮かんだそれは魔法陣の形を描き、やがて目の前の空間へと光を放つ。


「これは……すごいわね。 これがエルフの魔法なのかしら?」


「はい、長老にだけ伝わる古の魔法らしいです」


 ぶれるように歪んだ目の前の空間は、パキン! という甲高い音とともに元に戻る。

 ……いや、同じ森のように見えるけれど、目の前の空間だけ回りとことなった木々の生え方をしている。

 恐らくこれが本当の森の姿なんだろう。


「あぁ……エルフの森だ。 本当に私たち、帰ってこれた……。

 ……さぁ、ユーリ様行きましょう。 僭越ながら私がご案内させて頂きます」


 サリーナが馬車の前に立ち進んでいく。

 その歩調は、先ほどまでよりも軽く、そして早い。

 馬たちも追いつくのに多少駆け足気味になっている。


 ……まぁ、それも仕方が無いことだろう。

 サリーナとリタにとっては、半年ぶりに戻る故郷なのだから。



「そろそろ、里の入り口です。 ほらリタ、もうすぐ里に着くからねっ!」


「うあー!」


 その時、馬車の前に一本の矢が突き刺さる!


 馬達は驚き、前足を高く跳ね上げてその場に立ち止まる。

 アリスは馬車に影響がないよう、手綱をうまく制御しているようだ。


 そして、ボクは生命探査(ライフサーチ)で検知していた生命反応のうち、一番近いものの方へ視線を動かす。

 そこには、木の上で弓を構えた若いエルフの青年がこちらを睨みつけていた。


「……止まれ! 貴様達は何者だ!

 いつもの行商人の馬車ではない。 侵入者か!」


 流れるような動作で2本目の矢をつがえた青年は、改めてこちらを狙う。

 先ほどの威嚇とは異なり、ボクを狙っているようだ。


 と、そこへサリーナから声が飛ぶ。


「待って! 私よ、サリーナよ! イアン、止めて!」


「っ!? さ、サリーナ? 本当にサリーナなのか!?

 だが、サリーナは人間どもに捕まって奴隷になったと……

 貴様らか! 貴様ら人間がサリーナを!」


 サリーナの制止も空しく、イアンと呼ばれたエルフの青年はボクたちに向かい矢を放つ。

 ボクは即座にインベントリから魔法銃(アヴァロン)を取り出し、そのまま抜き撃つ。


 タァンッ!


 甲高い音が森に響き渡り、そして世界が静まり返った。


 こちらに放たれた矢は銃弾の返礼を受け、粉々になって散り、矢を粉砕した銃弾はイアンの頬を掠め空へと消えていった。

 ボクはそのままイアンの手に狙いをつけたまま制止の声をかける。


「……動いたら撃つよ。 気持ちは判らないでもないけど、せめてサリーナの話くらいは聞いてあげなよ」


「貴様……!」


「待って! 違うの、ユーリ様は私たちを助けてくれた方よ! イアン、弓を降ろしなさい!」


「……本当か? 命令でそのように言わされているとかではないのか……?」


「なら、命令してあげるよ。 サリーナ、その口を閉じろ」


「やはり貴様がっ!」


「いい加減にして! ほら、私喋れるでしょ? 隷属されてないって事を証明するために命令して下さっただけなの! これ以上ユーリ様に敵意を向けるなら、私が相手になるわよ!」


 サリーナが弓を構える。

 と同時に、リタも弓をイアンに向けた。

 ……これでイアンが暴走したら非常にマズい気がするので、ボクは魔法銃(アヴァロン)をインベントリに納めて両手を上げた。


「こっちは敵対する意思はないよ。 警戒するのはいいけど、いきなり攻撃するのは止めて欲しいな。

 ……ボクが怪我でもしたら、アリスの暴走を止めるのが面倒だし」


 と、視線をアリスに向ける。

 そこには、既に刀を抜き放ち今にも飛び掛りそうになっているアリスの姿がある。

 先ほど矢を放たれた時、矢を打ち落とすと同時にアリスが飛び掛らないようもう片手で抑えたのだ。

 でなければ、とっくにアリスはイアンの首に刀を突きつけていただろう。


「否。 暴走ではありません。

 ですので、この手をどけてあの不埒者を断罪する許可を」


 という感じだ。

 ボクを大事に思ってくれるのは嬉しいんだけど、一歩間違えるとヤンデレっぽくなるからなぁ……。


「だーめ、アリスは落ち着こうね。

 とりあえず、警戒したままでいいから誰か話のわかる人連れてきてくれると嬉しいんだけど」


「イアン。 長老様を呼んできて。 事情を説明するから」


 イアンは動かない。

 恐らく、ボクたちを放置してこの場を動いてよいかどうか、葛藤があるのだろう。

 といって、このまま睨み合いをしているのも困るんだけれど。


 そのとき、森の奥から穏やかな声が飛んできた。


「その必要はありませんよ。 サリーナ、リタ。 良く無事で戻りましたね」


 現れたのは、美しいロングヘアーの女性。

 どう見ても20台にしか見えないその人は、落ち着いた佇まいでこちらへと近づいてくる。

 こちらを見てふっと浮べた笑顔は、なぜか幼い頃に無くなったおばあちゃんの笑顔にそっくりだった。


「……そして、よくぞ。 よくぞこのエルフの里にお戻りになられました。

 ハイエルフ……我らエルフの王よ。 貴方様のお戻りを、ずっとお待ち申し上げておりました」


 そういって、顔を綻ばせた彼女はゆっくりとボクの前に膝を着いた。


「私がこのエルフの里にて留守をお預かりしておりました……

 長老のエルアリアと申します。 私の生あるうちにこの里をお返し出来る事、嬉しく思います」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ