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Yellow Lily

 

解呪(ディスペル)


 白い光の魔法陣が二人の首輪に飛び、触れるや否や灰となって消え去って行く。


「お、外れた。 これでアタイたちも自由ってことだねぇ。

 色々と迷惑かけたね、恩に着るよ」


 リリアナさんが首回りを撫でさすりながら礼を言う。


「否。 礼ならばマスターに」


「そうだね。 ユーリ、本当にありがとう」


「こちらこそ。 最後の戦い、あれわざと参戦しないでくれてましたよね?」


「ハッ! アンタのあの桃色のドラグーンとやりあうなんて、死にに行くようなモンだからね。

 アンタが脱走したって通信を聞いた瞬間、命令が飛ぶ前に即効で通信ぶっ壊してやったよ!」


「……最善の行動だった」


 今ボクたちはギルドでの聞き取りを終えて、休憩をしている所だ。

 ギルドは騎士団と対立していたという点もあり、基本的には味方をしてくれるようだ。

 当然、所属する冒険者達はそれぞれの考えがあるだろうけれど……

 それでも、森林竜(フォレストドラゴン)から町を救ったと言う恩を感じてくれている人が多いらしい。


 というわけで、どちらかというと今後の国からの調査に向けての意識合わせといった感じの聞き取りが終わり。

 ドランさんからのお願いで、リリアナさんとコルネリオさんの隷属の首輪を解呪したのである。


「ったく、だから俺ぁあんときさっさと国を出ろっていったんだぜ?

 馬鹿正直に騎士団の徴兵に応じたりするからよぉ……」


 等と言いながらも、ドランさんの顔は嬉しそうだ。

 二人が騎士団に入る前は、ドランさんと同じPTで冒険者兼傭兵をしていたと聞いている。

 やはりドランさんも二人の事は心配だったのだろう。


「あー、アタイたちもそのつもりだったんだけどねぇ。

 ダイアンの馬鹿が、国を守りたいなんて言い出すからさ……。

 そのくせ、一番に死んじまうなんて、本当に馬鹿なんだから……」


「……そうだったな、あんの馬鹿野郎が……。

 そうだ、ダイアンといえばだ。 リリー、お前に見せてぇもんがある」


「ん?」




 ------




「こっちだ」


「へぇ、騎士団の駐屯地に、こんな施設があったんだねぇ。

 アタイたちはこっちの方来た事がなかったよ」


「……地下か」


「しかし、いいのかい? まだ国の連中の現場確認終わってないんだろう?」


「だからだ。 むしろ今のタイミングしかない。

 ……ついたぞ。 今扉をあける」


 ドランが重そうな鉄の扉をあけると、そこは広い空間が広がっていた。

 真っ暗闇のそこにランタンをかざすと、そこにあったのは……


「っ! おい、ドラン! こいつは……」


「あぁ、ダイアンの野郎のドラグーン、アシュケロンだ」


 そこにあったのは、黒い鎧を纏った騎士のようなドラグーン。

 いつもアタイの前で盾となり、アタイの横で敵を切り倒していた、強くて頼もしいアイツのドラグーンだった。


「……なぜアシュケロンがここにある。

 ベルファウスの奴が領主に差し出したんじゃなかったのか?」


「さて、な。 自分で使う気だったのかもしれないし、領主より上の奴への貢物にするつもりだったのかもしれん。

 なにしろこいつぁ……特級(ユニーク)の中でも特に上物だからな」


 ダイアンの家に代々受け継がれてきたアシュケロンは、アタイのゲゼルやコリーのセイメイのような発掘品のドラグーンと比べても、頭一つ抜き出た性能を持っている。

 なにしろ、心臓部や魔導核(ブレイン・コア)魔導兵装(ソーサリーウェポン)は魔神戦争以前のものをそのまま搭載しているのだ。

 残念なことにダイアンは魔法がそんなに得意じゃなかったから驚異的な性能とまではいかなかったものの、もしユーリがコイツに乗ったらあの桃色のドラグーン並に動けるのかもしれない。


「……コイツは、国の持ちモンになってねぇ」


「ハァ?」


「法に従って処理をすれば、記録が残る。

 ベルファウスの奴は、非合法にコイツを扱うため国への届出なんぞしていなかった。

 ……つまり、こいつぁ今でもダイアンのモンだ」


「クソッ! じゃぁ、ダイアンのやつは何で死ぬ必要があったのさ!

 ふざけんな! ベルファウスの野郎、アタイが殺してやる!」


「……さらに言うと、だ。 お前たち3人は騎士になっていない。

 理由はコイツと一緒だ。 あの野郎、法を建前に全部非合法でモノを進めてやがった」


「……ふざけるな」


「短気は起こすな。 その辺も含めて王都から担当官が事情聴取にくる。

 真偽判定(トゥルース)の魔法を使える審議官も一緒らしいからな。 いずれにせよアイツはこれまでだ」


 ポタリ、と何かが落ちる音がする。

 見ると、ドランの握り締めた手から血が滴り落ちている。


「ドラン、アンタ……」


「……リリー。 アシュケロンはお前が持っていけ。 お前のゲゼル、大破してもう動かねぇんだろ?

 そんで、お前ら二人は国を出ろ。 ……アシュケロンは、ダイアンの魂は絶対に誰にも渡すな」


「……お前はどうする?」


「俺か? 俺ぁ、お前らとちがって騎士(キャバリエ)じゃねぇしな。

 それに、ギルドでふんぞり返ってるってのに慣れちまった。 今更命をかけて傭兵家業ってな気分でもねぇよ」


 嘘だ。

 お人好しなコイツの事だ。 アタイたちの後始末とか、絶対余計な事を考えている。


「そんでな。 できれば……あの、小っさい嬢ちゃんに着いていってやってくれ。

 多分、あの嬢ちゃんたちはこれからもっと面倒に巻き込まれる。

 そんとき、少しでも味方がいりゃぁ、助かるだろう? お前らだって恩もある事だしな」


「……アタイはそれでもいい」


「……俺もだ。 だが、ユーリは騎士団に徴兵されるのではないのか?」


 ベルファウスの野郎のやり口は別として、そもそも法で徴兵を義務付けられている。

 今回の事情聴取でユーリが騎士(キャバリエ)である事は隠し切れないだろう。


「小っさい嬢ちゃんはハイエルフ……エルフの王族だ。

 それに対しこの国はエルフに対する差別が残る国で、関係も今は最悪だ。

 上の方ではそんな関係を改善しようとしているのに、王族を強制的に徴兵してみろ。

 国を丸ごと巻き込んで大騒ぎになっちまう」


「そう考えると、ベルファウスの野郎、すでに導火線に火をつける寸前だったわけだね。

 あのユーリが自分の立場を理解してないから助かっただけで。

 なにしろ、関係改善しようとしてる国の王族を牢屋にぶち込んで好き放題しようとしてたんだからさ」


「あぁ、その上あれでもベルファウスは国の要職についてたわけだからな。

 上の連中も、今頃ユーリをどう扱うか大混乱だろうよ」




「さて、それじゃ戻るか。

 リリー、アシュケロンは国の連中が来るまでに動かしてどこかに隠しとけ。

 あぁ、小っさい嬢ちゃんが魔法っぽいのでドラグーンを隠してたから、それ教えてもらうといいかもな。

 ……リリー、どうした?」


「……アンタらは先に上がっててくれるかい?

 アタイは……もう少しだけここにいたい」


「……わかった」


 二人が格納庫の外へ出て行く。

 胸の辺りまで伸びる梯子に手をかけ登ると、アシュケロンのコクピットを開く。


「ダイアン……」


 かつてはダイアンが座っていた場所。

 そこには今は誰もいない。


 コクピットに座ると、ほんの少しフットレバーに足が届かない。

 思い返すと、ダイアンは背が高かった。

 そんな彼の事をこんな些細な事でも思い出してしまう。


 ふと、目の端に本来こんな所にあるべきではないものが見えた。

 花……いや、花を模した髪飾りだ。

 その花は百合。 黄色の百合の花がそこにあった。



『リリー、キミの名前は古い言葉で百合の花って意味だって知ってた?』


『やめなよ、アタイみたいなガサツな女に似合わないじゃないか』


『そんなことはないよ。 百合の花の花言葉って知ってる?

 純粋……キミみたいにまっすぐな女の子にピッタリだと思うよ?』



「あの馬鹿。 こんなモンをコクピットに飾って……。

 女々しい野郎ったら、ありゃしないよ……」


 百合の花にポタリと雫が生まれて……そして、流れて落ちた。


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